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住宅価格は引き続き上昇? 住宅市況の変化と注目が集まる住宅性能表示

住宅価格は引き続き上昇? 住宅市況の変化と注目が集まる住宅性能表示

LIFULL HOME’S総研の中山です。

今回は、本格的に始まったコロナ後の住宅市況の変化について、そして何より重要なキーワードとして浮上してきた“住宅性能”に関連する制度開始について、解説します。

目次[非表示]

  1. 1.解説動画
  2. 2.コロナ5類移行後の住宅市況の変化は?
  3. 3.新築住宅の価格上昇傾向の要因
      1. 3.0.1.①建設業および運輸業の2024年問題
      2. 3.0.2.②円安の継続
      3. 3.0.3.③地価の上昇
  4. 4.2024年以降、注目が集まる住宅性能表示
  5. 5.省エネ性能表示制度の概要

解説動画

コロナ5類移行後の住宅市況の変化は?

2023年は、コロナが2類から5類に移行したこと、移動制限がすべて解除されたことなどに伴って、コロナ後を見据えた動きが活発になりました。再び東京都心や、その周辺エリアでの人の流入が活性化し、住宅需要も、賃貸物件を中心に活況となりました。一方、円安の進行や資材価格の高騰、人件費の上昇によって、新たに分譲される住宅の価格はさらに上昇し、東京都心部では、新築マンションの価格が平均で1億円を突破するという“異常事態”となりました。

この住宅価格の上昇傾向は一旦落ち着き始めていますが、2024年も、特に利便性の高い各都市圏の中心部に供給される新築住宅は引き続き価格が上昇することが、確実視されています。

新築住宅の価格上昇傾向の要因

①建設業および運輸業の2024年問題

その要因としては、1つ目に、“建設業および運輸業の2024年問題”が顕在化し、住宅供給に関連する建設業でも、資材を運搬する運輸業でも、この4月から残業の総量規制が始まることが挙げられます。これは、2019年から5年間猶予されていた毎月45時間、年360時間を上限とする残業時間の規制が、建設業と運輸業にも適用されることによって、工期の遅れや人件費の更なる上昇が発生し、結果的に、住宅価格の上昇に繋がる可能性が高いと懸念されているのです。
労働力不足は、簡単に解決することができませんから、4月以降の建設現場でのシフトが確立するまでは、人件費の上昇要因と考えたほうが良さそうです。


②円安の継続

2つ目は、主に日米の政策金利差による円安の継続です。アメリカの長期金利は、インフレ抑制を目的として、2022年以降段階的に引き上げられ、現状の政策金利は5.5%程度に設定されていますが、市場では4.5%前後で推移しています。一方、日本の長期金利は2023年7月に1%までの上昇を容認するとの日銀の発表によって一時上昇しましたが、現状では0.6%前後で推移していますから、この日米の金利差によってドルを買って円を売る動きが止まらず、円安が続いているのです。
現状は1ドル=150円前後ですが2020年は103円前後でしたから、3年間で40%以上円安になったことで、その多くを輸入に頼る住宅建設のための資材価格も値上がりしています。


③地価の上昇

3つ目は、それでも旺盛な需要がある住宅へのニーズを背景に、地価が上昇していることです。依然として続く住宅ローンの超低金利を利用して、住宅を購入したいという意向は強く、需要は価格上昇によって、市街地中心部から、郊外方面へと拡散しているものの、ニーズ自体は縮小していませんから、これも住宅価格の上昇要因となります。郊外エリアでの地価および中古住宅の価格が、昨年以降、緩やかに上昇し始めていることは、皆さんご存知の通りです。このように、昨年以降さらに顕著になった、住宅価格の全般的な上昇によって、居住ニーズの郊外化が明確なトレンドになっています。

つまり、住宅価格の高い市街地中心部から、比較的価格の安い準近郊、郊外、そして準郊外へと、主に子育て世代であるファミリー層が転出し続けているのです。一例を挙げると、2023年に東京都の移動人口:転入と転出の差分、は約6.8万人の大幅な転入超過となったのですが、20歳から30代前半の若年層単身者は約8.9万人の転入超過だったのに対して、35歳以上のファミリー層は、反対に約2.8万人の転出超過、つまり東京から出ていく人のほうが多かったのです。東京から転出したファミリー層は主に神奈川、千葉、埼玉に転居しており、周辺3県では同世代の人口が合計で約1.4万人の転入超過となりました。

2024年も、住宅価格の上昇が先にご説明した3つの要因によって、ほぼ確実視されていますから、ファミリー層の市街地中心部からの転出傾向は、これからも続くものと考えられます。
したがって、東京都心や大阪、名古屋、福岡などの各中心部の事業集積地に、ダイレクトアクセスが可能な郊外のベッドタウンが、これからファミリー層の居住ニーズが顕在化するエリアとして注目されることになります。

2024年以降、注目が集まる住宅性能表示

2024年以降、最も重要なキーワードとなる“住宅性能”に関連する制度などについて解説します。住宅性能とは、夏涼しく冬暖かいという“断熱性能”、そして光熱費の効率化や太陽光パネルの設置などによってエネルギー消費を抑える“省エネ性能”が、いずれも高い水準にあるということですが、時系列でお話しすると、まず、2024年以降に建築確認を得た新築住宅で、この住宅性能の基準となる断熱性能等級4、および一次エネルギー消費量等級4を満たしていない住宅は、住宅ローン減税の対象から除外されました。

経過措置として、2024年6月までに竣工する物件については、10年間で元本上限2,000万円まで、最大140万円の住宅ローン控除が適用されますが、それ以降は住宅性能の低い新築住宅は、購入しても住宅ローンの控除はありませんから、これから特に新築住宅を購入する予定がある方は、住宅性能について、ある程度の知識を得ておくことをお勧めします。ただし、この住宅性能を満たしていなくても、中古住宅は10年間で元本上限2,000万円まで、最大140万円の住宅ローン控除が適用になることにご留意ください。新築住宅は建設時に多くの温室効果ガスを排出するので、断熱性能や省エネ性能の基準を満たしていない新築住宅を、控除の対象にして、普及を促進するようなことはできませんから、控除の対象から除外することにしたとご理解ください。

省エネ性能表示制度の概要

次に、目に見える制度変更として話題になっているのが、2024年4月からスタートする建築物省エネ法に基づく「省エネ性能表示制度」です。これは2024年4月以降に建築確認申請を行う新築建築物、およびその物件が、同じく4月以降に再販売・再賃貸される場合に、表示するべき“努力義務”とされていますので、新規に販売される住宅だけでなく、賃貸住宅も対象です。

なお、努力義務とされてはいますが、表示を怠った場合は、その建築主である分譲事業会社名を公表するなどの勧告を行うとのことですから、これは新築住宅に課せられた事実上の“義務”と捉えるべきでしょう。また、中古住宅については売買・賃貸物件を問わず“推奨”に留まっていますので、従わなくても勧告されることはありません。

この「省エネ性能表示制度」で、何が表示されるのかというと、エネルギー消費性能、つまり省エネ性能を6段階で、そして断熱性能を7段階でそれぞれ表示します。これによって、現在自分が買おう、もしくは借りようとしている住宅の省エネ性能と断熱性能がどれくらいのレベルなのかが可視化されますから、住宅性能が高いのか、それほどでもないのかが一目でわかるようになります。併せて、年間の光熱費の目安がいくらくらいになるのかも金額で表示されます。こちらはあくまで目安で、使い方によって違いますが、それでもこの住宅を購入および賃貸した場合に、年間でどれくらいのランニングコストが発生するのかをイメージすることができるので、この住宅の“コスパ”が高いのか低いのかを、比較検討する際の重要な指標にすることができるのです。

国土交通省:建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表⽰制度


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中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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