障害者差別解消法とは? 賃貸物件の契約に際して不動産会社が知っておくべき内容を解説
2024年4月に、改正された障害者差別解消法が施行されました。この法律は障害者に対する不合理な差別を禁止するものであり、不動産会社にも関連があります。
たとえば、障害があることを理由に物件紹介や斡旋を拒否することは禁止されています。障害者差別解消法を遵守するうえでは、不動産会社として注意すべき点を把握しておくことが大切です。
こちらの記事では、障害者差別解消法の内容や、国土交通省で定められている具体的な指針について解説します。
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不動産会社が知っておくべき障害者差別解消法の内容
障害者差別解消法は、障害者に対する差別的な取り扱いを禁止し、合理的な配慮を行うことを求める法律です。
以下で、不動産会社として知っておくべき内容を解説します。
障害者に対する差別的な取り扱いが禁止される
障害者差別解消法では、行政機関や事業者を対象に、障害者に対する障害を理由とした不当な差別的取り扱いを禁止しています。
賃貸借契約に関しても、障害者が賃貸借契約を希望する場合、「障害がある」という理由だけで契約を拒むことはできません。
たとえば、視覚障害者の方が窓口に来た際に、目が不自由であることを理由に希望する物件の紹介を拒む行為は違法となります。
障害者に対して合理的な配慮を行う義務がある
障害者差別解消法の施行に伴って、不動産会社は障害のある顧客の対応をする際に合理的な配慮を行う必要があります。
LIFULL HOME'Sが行った、改正障害者差別解消法の施行に伴う「不動産会社の対応実態調査」によると、約4割の不動産業務従事者が、障害者への合理的配慮の提供が「法的義務」になることを知らないという結果が出ています。
さらに、法的義務になることを「知っている」「聞いたことがある」と回答した人でも、4割以上が内容を「ほとんど理解できていない」「全く理解できていない」と回答しています。
合理的な配慮とは、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の申出があった際、実施に伴う負担が過重でない場合に必要かつ合理的な配慮を講ずることを指します。
つまり、負担が過重ではない場合は、必要に応じて障害者の方をサポートすることが求められるのです。
行うべき合理的な配慮は、相手が抱えている障害の種類や度合いによって異なります。そのため、不動産会社と障害のある顧客が丁寧にコミュニケーションを取りながら実現可能な対応を検討することが大切です。
参考:“改正障害者差別解消法”施行に伴う「不動産会社の対応実態調査」をLIFULL HOME'Sが実施
障害者差別解消法に違反する可能性がある具体例
国土交通省は、障害者差別解消法に違反する可能性がある具体的なケースを例示しています。以下に該当する行為は障害者差別解消法に抵触します。
【正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると考えられる事例】
- 物件一覧表に「障害者不可」と記載する。
- 物件広告に「障害者お断り」として入居者募集を行う。
宅建業者が、障害者に対して、「当社は障害者向け物件は取り扱っていない」として話も聞かずに門前払いする。
宅建業者が、賃貸物件への入居を希望する障害者に対して、障害[身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む)その他の心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む)]があることを理由に、賃貸人や家賃債務保証会社への交渉等、必要な調整を行うことなく仲介を断る。 - 宅建業者が、障害者に対して、「火災を起こす恐れがある」等の懸念を理由に、仲介を断る。
- 宅建業者が、車いすで物件の内覧を希望する障害者に対して、車いすでの入室が可能かどうか等、賃貸人との調整を行わずに内覧を断る。
- 宅建業者が、障害者に対し、障害を理由とした誓約書の提出を求める。
障害者が来店した際は、その方が抱えている障害の特性や度合いに応じて物件を提案・紹介する必要があります。
また、対応の質を下げたり、必要以上に立会者の同席を求めたりする行為も障害者差別解消法に違反する可能性がある点に留意しましょう。
【合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例】
- 内見等に際して、移動の支援として、車いすを押して案内を行う、事務所と物件の間を車で送迎する等の対応を求める申出があった場合に、「何かあったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断る。
- 電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話又は保護者や支援者・介助者の介助等)により各種手続きが行えるよう対応を求められた場合に、自社マニュアル上、当該手続きは利用者本人による電話のみで手続可能とすることとされていることを理由として、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。
引用:一般社団法人全国住宅産業協会「改正障害者差別解消法「国土交通省対応指針」の改正について」
内見の案内をする際、漠然としたリスクだけでは、車いすを押しての案内や車での送迎を断る理由になりません。一律で案内を拒否するのではなく、個別の状況に応じて柔軟に検討することが不動産会社に求められるのです。
障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト
不動産会社が行うべき合理的配慮の具体例
国土交通省の指針を参考に、障害のある顧客の対応をする際に「合理的な配慮」として不動産会社に求められる具体例を解説します。
- 障害者が物件を探す際に、最寄り駅から物件までの道のりを一緒に歩いて確認したり、1軒ずつ中の様子を手を添えて丁寧に案内する。
- 車いすを使用する障害者が住宅を購入する際、住宅購入者の費用負担で間取りや引き戸の工夫、手すりの設置、バス・トイレの間口や広さ変更、車いす用洗面台への交換等を行う場合、必要な調整を行う。
- 障害者の求めに応じて、バリアフリー物件等、障害者が不便と感じている部分に対応している物件があるかどうかを確認する。
- 障害者の状態に応じて、ゆっくり話す、手書き文字(手のひらに指で文字を書いて伝える方法)、筆談を行う、分かりやすい表現に置き換える等、相手に合わせた方法での会話を行う。
- 種々の手続きにおいて、障害者の求めに応じて、文章を読み上げたり、書類の作成時に書きやすいように手を添える。
基本的な考え方としては、自分の判断と意思で不動産取引を行える障害者に対して、健常者と分け隔てなく接することが求められます。そのうえで、相手のニーズを聞きながら必要な支援を行いましょう。
内閣府が提供する合理的配慮等具体例データ集
障害者差別解消法に違反したときの罰則
障害者差別解消法に違反すると罰則を受けます。指針に定める事項について、行政から報告を求められたにもかかわらず報告を怠った場合や、虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料に処せられます。
また、障害者差別解消支援地域協議会の事務に従事しており(していた人も含む)、正当な理由なく協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らした場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
社会的制裁を受けると、事業の信頼を損ねる事態になりかねません。そのため、不動産会社は障害者差別解消法を遵守することが今後強く求められるでしょう。
まとめ
障害者差別解消法の改正に伴って、障害者に対する差別的な取り扱いが禁止され、必要に応じて合理的な配慮を行うことが求められるようになりました。
企業として社会的責任を果たすためにも、障害者差別解消法を遵守することは重要です。
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