空室対策としてペット可物件にする場合の必要な準備と設備とは?
アパートやマンションは老朽化すると賃貸需要が低下し、空室になる可能性が高まります。その際に空室対策のひとつとしてあげられるのが「ペット可物件」にすることです。
ペット可物件にするためには通常のお部屋とは異なる設備を導入しなければなりませんが、ほかの物件と差別化でき、入居者の確保につながる可能性があります。
しかし、そもそもペット可物件に需要があるのか、疑問に思う方もいらっしゃることでしょう。
そこで、本記事では空室対策としてペット可物件への切り替えを検討している方に向けて、ペット可物件の需要と、必要な準備や設備をお伝えします。
目次[非表示]
- 1.ペット可物件の供給動向について
- 2.新規飼育頭数は年間約60万世帯
- 3.賃貸物件をペット可にする際の4つの準備事項
- 3.1.既存建物はアンケート調査を行う
- 3.2.ペットの種類・頭数を決める
- 3.3.敷金や家賃の上乗せを検討する
- 3.4.申請書・証明書の提出を求める
- 4.空室対策としてペット可物件に必要な設備とは
- 4.1.ペット用の床材に換える
- 4.2.脱臭機能設備を取り付ける
- 4.3.玄関ドアの内側にフェンスを設置
- 5.ペット可物件のトラブル防止策とは
- 6.正しい準備でペット可物件にしよう
ペット可物件の供給動向について
LIFULL HOME'Sに掲載されている一都三県の「ペット相談可物件」割合の月別推移を確認すると、以下のとおり、年々ペット可物件の割合が高まっていることがわかります。
2020年1月時点では、全体の14%程度であったのに対し、2022年12月時点では18.4%まで増加しています。
新型コロナウイルス感染症流行以降、自宅で過ごす時間が増えたためにペットを飼い始めた人も多く、ペット可物件は今後も需要が高まる傾向にあると考えられます。
参考:2月22日は「猫の日」、ペット相談可物件は年々増加傾向に! 「ペット相談可物件が多く、家賃が安い駅ランキング(東京都23区)」をLIFULL HOME'Sが発表!
新規飼育頭数は年間約60万世帯
一般社団法人ペットフード協会が発表した「令和5年 全国犬猫飼育実態調査主要指標サマリー(※1)」によると、ペットの新規飼育世帯数は、2023年度で年間64万世帯です。
犬の新規飼育世帯数 |
35万7千世帯 |
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猫の新規飼育世帯数 |
28万9千世帯 |
合計 |
64万6千世 |
新規飼育世帯数は過去10年前と比較しても横ばいですが、飼育している世帯数は犬と猫を合計して約1,041万世帯にもなり、多くの家庭でペットを飼育していることがわかります。
厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況(※2)」を確認すると、2022年度の日本の総世帯数は約5,431万世帯であることが公表されており、ペットの世帯飼育率は約20%近い数値であることがわかります。
(※1)令和5年全国犬猫飼育実態調査主要指標サマリー:https://petfood.or.jp/data/chart2023/3.pdf
(※2)2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/02.pdf
非飼育理由の25%はペット不可で飼育できない
一般社団法人ペットフード協会が発表した「令和5年 全国犬猫飼育実態調査ペット飼育阻害要因(※3)」によると、ペットを飼育できない理由の25%が「集合住宅で禁止されているから」であることがわかります。
これは、飼育したいけれどできない理由の中で最も割合が高い理由であり、ペット可物件であればペットを飼いたいという人が一定数いることが読み取れます。
(※3)令和5年全国犬猫飼育実態調査ペット飼育阻害要因:https://petfood.or.jp/data/chart2023/12.pdf
賃貸物件をペット可にする際の4つの準備事項
賃貸物件をペット可にする際は、以下の4つの準備を行います。
既存建物はアンケート調査を行う
既存の賃貸物件の場合は、後でトラブルに発展しないためにも、入居者へのアンケートを行います。入居者からの反対を押し切ってペット可物件にした結果、その入居者が退去してしまう事態になれば本末転倒です。
管理会社と打ち合わせを行い、ペット可物件への切り替えを他の入居者から許可をもらっておく必要があります。
ペットの種類・頭数を決める
ペット可物件にする場合は、飼育できるペットの種類や頭数を決めておきます。ペットの種類や性格次第では、大きな鳴き声が原因で近隣住民とのトラブルになる可能性もあるためです。
一般的には、猫か小型犬を1頭もしくは2頭までと定めているケースが多いようです。
敷金や家賃の上乗せを検討する
ペット可物件は付加価値があるため、同等の賃貸物件と比較して家賃を高めに設定しても入居者を確保できる可能性が高いです。
さらに、退去時にはクロスや床材の交換など、修繕費用がかさむため、敷金を通常の敷金にプラスして家賃1ヶ月~2ヶ月分多く設定するのが一般的です。
申請書・証明書の提出を求める
どのようなペットを飼育するのかを確認するためにも、「ペット飼育申請書」と「第三者機関による証明書」を提出してもらいましょう。
ペット飼育申請書 |
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第三者機関による証明書 |
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賃貸借契約書に定めたペットの種類と異なるペットを飼育すると、ほかの入居者とのトラブルになる可能性が高まります。
さらに、ペットは狂犬病やその他のウイルスなど、人間にも影響を及ぼす可能性があるため、第三者機関による証明書でワクチン接種済みであることを確認することが大切です。
空室対策としてペット可物件に必要な設備とは
賃貸物件をペット可にする際は、通常のお部屋のままでは傷が増えてしまうことがあるため、ペット仕様に変更しなければなりません。
ここでは、ペット仕様にすべき設備の一例を紹介を紹介します。
ペット用の床材に換える
ペット仕様にするためには、ペット用の床材に換えなければなりません。通常のフローリング材のままでは滑りやすく、ペットが股関節を傷めてしまう可能性が高いためです。
ペット用の床材は滑りにくく、傷に強いです。さらに、汚れが染みにくく変色しにくいため、ペットが床を汚してしまっても容易にふき取ることができ、臭いが付きにくいというメリットもあります。
脱臭機能設備を取り付ける
ペットの臭いが残らないように、脱臭機能がある設備を取り付けましょう。
もちろん入居者負担で空気清浄機を用意してもらってもよいですが、用意されない可能性もあるため、あらかじめ設置しておくことをおすすめします。
玄関ドアの内側にフェンスを設置
ペットが脱走しないように、玄関前にフェンスの設置を行いましょう。ドッグフェンスを設置しておけば、外出時や帰宅時の脱走、来客時の飛び掛かりを防ぐことができます。
ペットと暮らしやすい設備を備えたペット共生物件も差別化の方法として考えられます
ペット可物件のトラブル防止策とは
ペット可物件では、入居者同士や近隣住民との間でペットに関するトラブルが起こることがあります。トラブルを未然に防止するためには、ペット飼育のルールを明確に決め、入居者に遵守してもらうことが重要です。
よくあるトラブルはペットの鳴き声による騒音です。普段は大人しいペットでも、飼い主の外出中は鳴きやまないなどの事例があります。
ペット可物件であっても、ペットが鳴き続けるとほかの入居者に迷惑を掛けることになるため、無駄吠えさせないためにも徹底したしつけを行うなどのルールが必要です。事前に防音対策を施すことを検討してもいいでしょう。
また、すべての入居者がペットを飼育しているとは限らないため、上下左右の入居者に挨拶し、ペットを飼育する旨を伝えておくようにしましょう。
正しい準備でペット可物件にしよう
ペット相談可物件の件数は、2020年から3年間で4.4%ほど上昇しています。ほかの物件との差別化を図ることができるため空室対策として有効であるといえるでしょう。
ペット可物件にするためには、あらかじめペットの種類や頭数を決め、必要な設備を導入しておきましょう。
ただし、ペット可物件では入居者同士や近隣住民とトラブルが発生する恐れもあります。あらかじめペット飼育のルールを決め、入居者に共有しておきましょう。
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