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住宅購入&リフォームで子育て世帯の優遇&支援策の少子化対策への効果は?

住宅購入&リフォームで子育て世帯の優遇&支援策の少子化対策への効果は?

LIFULL HOME’S総研の中山です。
毎年6月上旬になると合計特殊出生率が発表されます。先日公表された2023年の合計特殊出生率は過去最低の1.20、東京都に至っては1人の女性が一生のうちに産む子どもの数が1人以下の0.99となり、衝撃的な数値として報道されています。

つまり、これまで政府が様々実施してきた少子化対策はほぼ成果を上げておらず、日本の少子化(および高齢化)には一向に歯止めが掛からないという状況が続いているのです。

目次[非表示]

  1. 1.異次元の少子化対策の目玉として子育て世帯&若者夫婦世帯に住宅ローン控除の優遇措置
  2. 2.異次元の少子化対策は予算ありき 住宅ローン控除&リフォーム特例は控除のみで予算不要

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異次元の少子化対策の目玉として子育て世帯&若者夫婦世帯に住宅ローン控除の優遇措置

これまでの少子化対策というと、子どもが生まれたらお祝い金を出す、児童手当を支給する、学童保育や病児保育の実施、産後ケアへの対応など、経済的側面からの優遇および支援策がその多くを占めていますが、いくらお金を出しても子どもが増えないということは、経済的支援を行うだけでは対策にならないということです。

LIFULL HOME’Sの調査によると、子育て世帯が住宅を選ぶポイントとして、家の広さや間取りを最も重視すると回答しており、次いで駅からの距離、治安などを意識して探しています。また、通勤時間についても圧倒的多数が1時間以内が望ましいと回答していることから、子育て世帯のお父さんとお母さんは、仕事と育児を両立させるべく、生活時間の効率化=時間的な余裕を望んでいることが明らかです。

子どもの突然の発熱や病気・怪我などに対応するには、職住近接・職託(=託児施設)近接でないと対応が困難ですし、通常の送り迎えについても自宅と勤務先と託児施設や病院などの動線が近くあるべきです。

つまり経済的支援はもちろんのこと、生活面・精神面や時間的な側面でもサポートを必要としている状況が浮き彫りになっているのです。国の少子化対策は、経済的な部分に偏り過ぎてはいないか、もっと他にサポートできることがあるのではないかという視点で再検証していただきたいものです。

今回のテーマである子育て世帯への住宅購入支援策は、昨年末の税制改正大綱で、現岸田政権の目玉である“異次元の少子化対策”の一環として決まったものです。これは優遇を受ける際に19歳未満の子どもを有する家庭=子育て世帯、および夫婦いずれかが40歳未満である世帯=若者夫婦世帯を対象に、住宅ローン減税の元本上限を2023年末の水準に維持するという措置です。

具体的には、例えばZEH住宅を購入して住宅ローンを組めば、対象外の世帯の元本上限は3,500万円、13年間では最大318.5万円の控除ですが、子育て世帯&若者夫婦世帯は上限4,500万円となりますから、13年間の控除総額は最大409.5万円、差額91万円の優遇を受けることができます。ただし、現状では1年間の特例措置とされており、該当する世帯は2024年中に建築確認を受けた新築住宅を購入する必要があります。

異次元の少子化対策は予算ありき 住宅ローン控除&リフォーム特例は控除のみで予算不要

住宅ローン控除以外の“異次元の少子化対策”、例えば育休・時短勤務については2025年度から、出産費用・保育については2024年度から、それぞれ段階的に予算の手当てがついたものを実施していく方針ですが、肝心の予算措置が思うようには進んでいません。それに対して住宅ローン控除は現行制度を維持するだけで予算措置が不要であることが即時実施のポイントとなりました。

また、中古住宅についてはこのような優遇は用意されていませんが、その代わり既存住宅等のリフォームに係る特例(子育て世帯特例)が2025年末まで2年間拡充・延長され、子育て世帯および若者夫婦世帯が現在居住する住宅もしくは既存住宅を購入して耐震改修、省エネ改修、建物の耐久性全般に関する改修などを実施した場合は、改修費用の上限250万円で控除率10%=最大25万円、さらに太陽光パネルなどを設置する場合は上限を350万円まで拡充の上、控除される制度があります。

しかも、これらの改修を組み合わせた場合は最大500万円、太陽光パネルなどを設置した場合は最大600万円まで拡充されますから、10%の控除で最大60万円が控除されることになります。新築住宅ほど長期間&高額の控除ではありませんが、優遇率が大きく効果的な施策とみることができるでしょう。

では、これらの新築&中古住宅に関する子育て世帯への優遇措置は効果があるのでしょうか。筆者は残念ながらその効果は限定的であると見ています。世帯によって年齢も家族構成も異なるのでシミュレーションとなりますが、住宅ローンの控除の全期間である13年間、子どもが19歳未満であるには住宅ローンを組んだ翌年の年度末時点で6歳未満である必要がありますから、教育費・養育費が大きくなり始める時期と重なります(もちろん第二子、第三子を産めば別ですが生活費の負担が重くなります)。同じく13年間夫婦いずれかが40歳未満であるためには住宅ローンを組んだ翌年の年度末でどちらかが27歳未満でなければなりません。

現在の平均初婚年齢は男性31.1歳、女性が29.4歳(最頻値はともに27歳)ですから、13年間フルに優遇措置を受け続けられる世帯は多くないと考えられます。ただし、上記の世帯を対象に「子育てエコホーム支援事業」によって、住宅ローン控除とは別に補助金が20万円~100万円受けられますから、経済的支援は手厚いという見方もできるでしょう。

冒頭に記した通り、子育て支援としての経済的メニューは揃ってはいるのですが、これらだけで少子化対策と言えるかというと甚だ疑問が残ると言わなければなりません。経済面だけではなく、時間的にも精神的にもゆとりをもって子育てできる環境を社会全体で作ることこそ、本来の意味での少子化対策と言えるのではないでしょうか。

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中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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