不動産業界で役立つ相続の資格とは? 取得する重要性やメリットを解説
不動産業界で勤務していると、不動産を活用した相続対策について質問される機会があるかもしれません。その際、相続に関する知識を習得している証としての資格を取得していれば、顧客からの信頼を得られるでしょう。
こちらの記事では、不動産業界で相続の知識が求められている理由や、おすすめの資格を解説します。
目次[非表示]
- 1.不動産業界で相続の知識が求められている理由
- 2.不動産業界で役立つ相続関連の資格
- 2.1.行政書士(国家資格)
- 2.2.FP(国家資格)
- 2.3.不動産終活アドバイザー・不動産終活士(民間資格)
- 2.4.相続士(民間資格)
- 2.5.相続診断士(民間資格)
- 3.相続関連の資格を取得するメリット
- 4.まとめ
不動産業界で相続の知識が求められている理由
相続対策には、不動産を活用することができます。まずは、不動産業界で相続の知識が求められている具体的な理由を見ていきましょう。
高齢者人口の増加に伴って相続の悩みを抱える人が増えるから
日本では、今後高齢者人口のますますの増加が見込まれています。高齢者人口が増えると「相続人間でトラブルが起きないような、公平な相続を行いたい」「相続税対策を行いたい」という悩みを抱える人が増えるでしょう。
特に、相続税を軽減するために不動産を活用できるか知りたいという、資産を有している顧客からのニーズが見込まれます。この際に、相続に関する基本的な法律だけでなく、相続税評価額の計算方法を知っておけば、適切なアドバイスを行えるでしょう。
土地や建物を活用して相続税対策ができるから
実際に、土地や建物を活用すると相続税を軽減することができます。同じ価値を持つ預貯金と不動産を比較すると、不動産のほうが相続税評価額が低くなるためです。
たとえば、建物の相続税評価額には固定資産税評価額を用います。固定資産税評価額は、実際の建築価格(市場価格)の約70%といわれています。つまり、1億円で賃貸物件を購入した場合、相続税評価額は約7,000万円となる計算です。さらに、賃貸物件(貸家)は固定資産税評価額から30%の減額を受けられます。
約7,000万円から30%減額すると、最終的な相続税評価額は約5,000万円となります。1億円の額面がそのまま相続税評価額になる預貯金のケースと比較して約半分の金額になることから、相続税対策につながることがわかるでしょう。
土地や建物を共有状態にするとトラブルになる恐れがあるから
相続発生後、土地や建物が複数の相続人による共有状態になることがあります。共有は一見すると公平な遺産分割ですが、不動産が共有状態だと後日トラブルになる恐れがあります。共有状態の不動産は、相続人全員の同意がないと売却できません(自分の持ち分だけの売却は可能)。つまり、不動産を売却したくても売却できない状況になるリスクが考えられるのです。
相続人間の関係が良好でない場合、売却の同意を得られずにいる間に不動産の価値がどんどん下落するといった事態にもなりかねません。相続発生後、相続人が不動産の処分で困る事態を防ぐためにも、相続の知識を習得することは有意義です。
不動産業に携わる場合は、不動産オーナーなどから相続に関する相談を受ける機会もあるかもしれません
不動産業界で役立つ相続関連の資格
不動産業界で役立つ相続関連の資格はいくつかあります。
以下で、代表的な資格や合格率を解説します。
行政書士(国家資格)
行政書士は行政機関に提出する書類などを作成する専門家で、資格を取得するには民法や行政法など、さまざまな法律を学ぶ必要があります。民法科目には「家族法」が含まれているため、相続の基本的なルールを網羅的に学ぶことができるのです。
具体的には、法定相続人の範囲や法定相続分、遺言書の書き方をはじめとする、相続には欠かせない知識を習得できます。国家資格であるうえに、合格率が10%~15%程度と難易度が高いため、資格そのものの価値が高い点も特徴です。
FP(国家資格)
FP(ファイナンシャルプランナー)は、お金に関して顧客のライフプランを設計する専門家です。相続に関する基本的なルールだけでなく、相続税をはじめとする税金に関する知識を総合的に習得できるのがメリットです。
資格取得のための学習の過程で土地や建物の相続税評価額や、相続税を軽減するための特例も学べるため、不動産業界で勤務している方にとっては実務で知識を活用する機会も多いでしょう。
FP試験は1級から3級まであり、合格率の目安は以下のとおりです。
FP1級 |
FP2級 |
FP3級 |
|
---|---|---|---|
学科試験 |
10%前後 |
50%前後 |
75%~85%程度 |
実技試験 |
80%~90%程度 |
50%~60%程度 |
75%~85%程度 |
FP3級は合格率が高いため、初めてお金や相続に関する勉強をする方でも取り組みやすいでしょう。
不動産終活アドバイザー・不動産終活士(民間資格)
不動産終活アドバイザー・不動産終活士は、不動産に関する終活の専門的な資格です。不動産を所有している方が抱えている悩みや問題をヒアリングしたうえで、最適な活用方法を提案します。
不動産所有者に貢献できることはもちろん、地域への不動産終活の普及や広報にも携わることができるため、地域に根差した営業を行っている場合にはより親和性が高いといえるでしょう。
なお、不動産終活士は不動産終活アドバイザーの上位資格です 。いずれも合格率に関するデータは公表されていませんが、講座の受講から試験までがWEB上で完結するため、自分のペースで勉強を進められます。
相続士(民間資格)
相続士とは、相続に関連する手続きを円滑に進めるための支援を行う資格です。必要に応じて各専門家(税理士・司法書士・弁護士・行政書士・土地家屋調査士・不動産鑑定士など)と協力し、正しい相続手続きをサポートします。
相続士の資格取得を通じて、不動産の相続税評価額や空き家問題などについて学ぶことができます。不動産業界に勤務している方にとって、実務的な内容だといえるでしょう。
試験の合格率は公表されていませんが、公式テキストが販売されており、合格基準は50点満点中30点以上です。試験の難易度は比較的易しいと考えられるため、相続について初めて学ぶ方でも取得しやすい資格です。
相続診断士(民間資格)
相続診断士とは、相続の基本的な知識を身につけることで、顧客がどのように相続に備えるべきかを診断できる資格です。円満な相続を実現できるように顧客をサポートし、必要に応じて税理士や司法書士、弁護士などの専門家につないでトラブルの芽を摘む役割を果たします。相続診断士の勉強を通じて、最新の法改正や不動産をめぐる相続のトラブル事例を学べます。
試験の合格率は公開されていませんが、さまざまな情報をもとに推測すると合格率は90%程度です。難易度は比較的易しいため、初めて相続関連の勉強をする方でも取得しやすいでしょう。
相続関連の資格を取得するメリット
相続に関する知識を学び関連の資格を取得すれば、仕事上で自分の価値を高められる可能性があります。
以下で、相続関連の資格を取得するメリットを解説します。
対外的に相続の知識を有していることをアピールできる
資格は知識を有していることの証となるものです。資格を保有していれば、相続関連の知識を有していることを対外的にアピールできるでしょう。
顧客に対し、「私は相続に詳しい」と口頭で伝えるだけでなく、名刺に保有資格を記載すれば説得力が増すでしょう。
顧客から信頼を得やすくなる
資格を取得して相続に関する知識を有していることを伝えれば、顧客の信頼を得やすくなります。顧客からすると、資格のない人よりも、資格を持っている人のほうが安心感が増すためです。
学んだ知識を活かし、有益なアドバイスを提供できれば、顧客に対してより大きな付加価値を提供できます。信頼が信頼を呼び、新しい顧客を得られる可能性にもつながるでしょう。
顧客から高い評価を受けられればキャリアアップにつながる
顧客から信頼を得て高い評価をもらえれば、キャリアアップにつながる可能性もあります。資格によって勤務先に貢献できれば、昇給や昇任などの場面で有利になる可能性が考えられるのです。
キャリアアップや収入アップにつなげるという意味でも、資格の取得は有意義です。
まとめ
相続関連の資格を取得することは、不動産業界で勤務している方にとって有意義です。顧客に対して価値のあるアドバイスを提供できるようになり、信頼を得られる場面が増えるでしょう。
相続関連の資格は多くありますが、FPや不動産終活アドバイザー、不動産終活士はより実務的な知識を学べます。資格を取得し、自分の価値をさらに高めてみてはいかがでしょうか。
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