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賃料が継続して上昇中。賃料改定の対応方法と基礎知識を解説

近年、賃貸物件の賃料は上昇傾向にあり、大家から賃料の値上げを依頼されるケースも十分に想定されます。本記事では、大家から賃料の値上げを依頼された場合に、入居者との交渉にあたって必要となる知識を解説します。どのような対応が必要になるのか考えてみましょう。

目次[非表示]

  1. 1.賃貸物件の賃料トレンドは?
    1. 1.1.シングル向き賃貸物件の傾向
    2. 1.2.ファミリー向き賃貸物件の傾向
  2. 2.賃料改定の対応方法は? 
  3. 3.賃料協議の基礎知識
    1. 3.1.そもそも適正な賃料とは
    2. 3.2.賃料改定特約の内容はどうなっている?
    3. 3.3.賃料増額請求ができるのはどういう理由のとき?
    4. 3.4.賃料増減額請求権の行使とは
  4. 4.賃料改定への備えを

賃貸物件の賃料トレンドは?

賃貸物件の賃料には昨今どのような傾向があるのでしょうか。LIFULL HOME'S PRESSによる、2024年2月版の「LIFULL HOME'Sマーケットレポート」の詳細を確認してみましょう。

なお、ここでの掲載賃料とは、LIFULL HOME'Sに掲載された物件データによる賃料、反響賃料とは、ユーザーがLIFULL HOME'Sを介して不動産会社に問合せた物件の賃料を指しています。

シングル向き賃貸物件の傾向

首都圏・近畿圏においては、掲載賃料・反響賃料共に、1年以上毎月連続で前年同月を上回っています。特に近畿圏の掲載賃料は、計測開始以降25ヶ月連続で前年同月比で上昇しています。
それでは、2024年2月時点の賃料と上昇率を見てみましょう。

首都圏の掲載物件平均賃料は7万5,871円で前年比102.8%、反響物件平均賃料は7万6,434円で前年比102.7%でした。近畿圏においては、掲載物件平均賃料は5万7,087円で前年比102.8%、反響物件平均賃料は5万8,053円で前年比100.7%と、掲載物件平均賃料は首都圏・近畿圏共に1年で2.8%の上昇となっています。

ファミリー向き賃貸物件の傾向

ファミリー向き賃貸物件の傾向はどうでしょうか。シングル向きと異なり、首都圏と近畿圏でやや異なる様子を見せています。

首都圏では、計測開始以降25ヶ月連続で掲載賃料・反響賃料共に前年同月比を超えています。ただし、掲載物件平均賃料が12万7,000円・前年比114.0%と、前年を大きく上回ったのに対し、反響物件平均賃料は11万8,908円にとどまり、前年比102.1%と、掲載物件平均賃料には追いついていない状況がうかがえます。

一方の近畿圏では、掲載賃料は首都圏と同様、計測開始以降25ヶ月連続で前年同月比からの上昇が見られるものの、反響賃料は計測開始以降初めて前年同月比下落、反響物件平均賃料も前年比98.9%となりました。掲載物件平均賃料は8万2,107円、反響物件平均賃料は8万8,550円と、反響物件平均賃料が掲載物件平均賃料を上回っている点も特徴的です。

地域やターゲットによって違いはありますが、賃貸物件の賃料設定が継続的な上昇傾向にあることがよくわかるデータではないでしょうか。

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LIFULL HOME'Sの掲載物件データとユーザーが問合せをした物件データをマーケットごとに公開しています

(出典:LIFULL「不動産市場動向が分かる!2024年2月「LIFULL HOME'Sマーケットレポート」を公開」)

賃料改定の対応方法は? 

賃料が継続的に上昇するなか、大家から賃料増額を依頼される可能性は大いにあり得るでしょう。その場合、具体的にどのような対応が必要となるのでしょうか。

賃料改定には、「家賃変更合意書」の締結が必要です。まずは入居者に対して賃料改定の請求・通知を内容証明郵便を使って送付し、入居者が合意した場合に、「家賃変更合意書」を作成します。「家賃変更合意書」には、対象物件、家主と入居者の氏名・住所、家賃変更の合意について締結する旨、改定後の賃料、現行の賃料、改定後の賃料の適用が開始される時期を記載します。

賃貸借契約書と同様、「家賃変更合意書」は2通作成し、家主と入居者双方が記名押印のうえ、それぞれが1通ずつ保管します。

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賃料改定の際は、家賃変更に関する合意書の取り交わしが必要

賃料協議の基礎知識

賃料増額にあたっては、管理会社による入居者への交渉・同意形成が必要となりますが、この際の基礎知識として押さえておきたいポイントについて、国土交通省作成の「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版) 」からわかりやすく解説します。

そもそも適正な賃料とは

そもそも適正な賃料は何でしょうか。賃貸借契約における賃料は、当事者である貸主・借主間の合意によって決まるため、法令上の上限が定められているものではありません。

賃貸物件の賃料は、立地や部屋の広さ、間取り、設備、建築物の構造、日照・通風などの条件によって決まり、類似物件と比較した結果も踏まえ、当事者間で合意できる賃料が適正な賃料であるといえるでしょう。

賃料改定特約の内容はどうなっている?

増額交渉にあたっては、賃貸借契約書の賃料改定特約が重要です。以下は、国土交通省作成の「賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)」から、賃料改定に関する部分を抜粋したものです。

(賃料)
​​​​​​​第4条 (略)
3 甲及び乙は、次の各号の一に該当する場合には、協議の上、賃料を改定することができる。
一 土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により賃料が不相当となった場合
二 土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により賃料が不相当とな
った場合
三 近傍同種の建物の賃料に比較して賃料が不相当となった場合

(出典:国土交通省「賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)」)

賃料改定ができるのは、土地の価格上昇によって固定資産税が上がり、大家の負担が増えている場合や、物価高騰に伴い建物の維持費が増えている場合、周辺の類似物件と比較して賃料が著しく低い場合などが想定されるでしょう。

賃料増額請求ができるのはどういう理由のとき?

賃料改定特約がない契約を結んでいる場合や、入居者との協議がまとまらない場合も、借地借家法32条において賃料増額請求ができると定められています。

想定されている増額理由は賃料改定特約とほぼ同様で、①租税等の負担増加、②土地建物価格の上昇や経済事情の変動、③近隣の類似建物と比較して賃料が不相当、という条件にあてはまり、かつ「一定期間賃料を増額しない」という特約がない場合です。

賃料増減額請求権の行使とは

大家から入居者に賃料増額請求を行い、協議によって入居者が増額に同意すれば、請求したとおりの増額が確定します。協議がまとまらない場合には、管轄裁判所に調停の申立てをすることとなります。

それでは、協議がまとまる前、つまり係争中の賃料はどうなるのでしょうか。係争中も入居者は相当と認められる額を支払う必要があり、調停によって決まった新賃料が支払っていた賃料を上回る場合には、利息を付して支払う必要が生じます。

賃料改定への備えを

固定資産税の上昇や賃料が不相当となった場合など、正当な事由があれば、賃料増額を求めることは可能です。ただし、スムーズに合意を得られなければ、調停の申立てに至る以前に入居者が退去してしまうケースも考えられるでしょう。

入居者との交渉に際しては、理由をわかりやすく丁寧に伝える、改定の直前ではなく早めに伝えるといった配慮を行い、不信感を与えない対応が大切です。状況によっては、大家との調整を行い、条件を緩める選択肢も必要となります。

賃料上昇のトレンドのなかでは、実際の賃料改定にスムーズに対応できるよう、賃料改定の事例について情報を収集するなど、事前の備えが必要になってきているといえるでしょう。

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入船みみ
入船みみ
大阪大学卒業後、大手インフラ企業に入社。まちづくり企画・不動産賃貸業・店舗開発などの幅広い不動産事業を経験。人事分野にも携わり、採用・人材育成・組織戦略(ワークエンゲージメント)を推進している。豊富な実務経験をもとに、WEBメディアにおいて不動産・キャリア形成・金融をテーマとした記事執筆多数。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。宅地建物取引士試験合格。 SNS・記事実績リンク:https://1link.jp/mimi_irifune

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