日本の不動産が中華圏で人気の理由は? 最新動向と事例【セミナーレポート】
LIFULL HOME'S Businessは、不動産会社の方向けにセミナーを開催しております。2024年7月19日に、「日本の不動産は中華圏でなぜ人気? データから見る最新動向と人気物件」と題したセミナーを開催しました。セミナーでは、中華圏(中国、台湾、香港)最大級の日本不動産プラットフォーム「神居秒算(しんきょびょうさん)」を運営する株式会社神居秒算の執行役員ヤンロン氏が登壇。本記事では、セミナーから一部をご紹介します。
【登壇者】
株式会社神居秒算 執行役員 ヤンロン氏
目次[非表示]
- 1.日本の不動産が中華圏で人気の理由
- 1.1.日本の内部的要因4つ
- 1.2.外部的要因
- 2.中華圏の顧客が好む不動産は?
- 2.1.直近3ヶ月で流入数は約1.9倍に
- 2.2.1億円超え物件の問合せ割合が増加
- 3.物件タイプはマンションが安定した人気
- 3.1.東京、大阪、京都が上位3位
- 4.どのような対応が求められる?
- 4.1.求められる対応まとめ
- 5.目的別、成約事例の紹介
- 5.1.留学生の親による購入
- 5.2.資産運用
- 5.3.セカンドハウス
- 5.4.投資経営ビザ取得のための購入
日本の不動産が中華圏で人気の理由
ヤンロン氏は、「日本の不動産が中華圏の方々に人気な理由は、私から見て、大きく内部要因と外部要因に分かれる」と話します。
日本の内部的要因4つ
・円安の進行
・渡航制限の解除
・世界の有名都市と比較して住宅の価格水準が安い
・賃貸ニーズが旺盛で実質利回りが高い
「現在も円安が進行しており、中華圏の方から見ると日本の不動産が非常に割安に感じられます。さらに、渡航制限が解除され、日本に来たくても来られなかった方が気軽に日本に来て購入するケースが非常に増えています。また、世界的に見て、香港やロンドンなどの世界的に有名な都市と比較しても住宅の価格水準がかなり割安であるという調査結果もあります。東京では賃貸の需要が旺盛で、賃貸経営の実質利回りが約3~4%に対して、台北と中国では1~2%しかないといわれていますので、中華圏の投資家にとっては非常に魅力的です」(ヤンロン氏)
外国人の新規入国制限は2022年10月以降解除され、順調にインバウンド需要は回復している
外部的要因
「外部的要因は、『中国本土と香港』と、『台湾』に分けて解説します。『中国本土と香港』は、定期預金金利の減少、不動産価格の下落により、新しい投資先を探している方が多いです。さらに政治的に不安な環境であることから、皆さま積極的に日本へ投資をしています。『台湾』は、台北の不動産価格の高騰、政治環境を懸念した資産の分散を図る動きが見られます。台湾には親日の方が多いということもあり、投資意欲につながっているようです」(ヤンロン氏)
中華圏の顧客が好む不動産は?
中華圏の方は、どういった価格帯、物件タイプ、エリアの物件を好むのでしょうか? ヤンロン氏は「神居秒算」のデータから解説します。
直近3ヶ月で流入数は約1.9倍に
「『神居秒算』のユニークユーザー数は2024年に入って大きく伸びており、1月から3月の昨年同期と比較して約1.9倍に、中国本土のユーザー数割合が最も多いのですが、台湾の伸び率が大きく37%を占めています。ほかに東南アジア系の中華圏の方の割合も増加しています」(ヤンロン氏)
1億円超え物件の問合せ割合が増加
「お問合せのあった物件を価格帯別に見ると、まんべんなくさまざまな価格帯に興味をいただいております。傾向としては比較的低価格帯である3,000万円以下の割合は徐々に減少し、昨年、57%だったのが46%(2023年1月~3月と2024年同時期の比較)に、一方、1億円以上の物件のお問合せ割合は17%から26%と、徐々に増えてきています」(ヤンロン氏)
背景として、ヤンロン氏は、日本に長期的な居住を希望される中華圏の方が増えており、都心では不動産価格の高騰もあってよい物件は1億円を超えるため、高価格帯の物件の問合せが増えていると話します。
お問合せがあった物件の価格帯の変化
物件タイプはマンションが安定した人気
問合せのあった物件タイプについて、2024年1月~3月では63%がマンション、一戸建てが21%、一等ビルが13%と続きます。マンションが人気である傾向に大きな変化は見られず、その背景については、「立地と流動性を重視した結果だと思われます。売却のしやすさも考慮されている」とヤンロン氏。
東京、大阪、京都が上位3位
「エリア別に見た人気物件は、1位東京、次に大阪、京都、福岡、北海道という傾向に大きな変化はありません。最近のトピックスとしては、2024年1~3月で福岡県へのお問合せ割合が大きく増えました。熊本に半導体工場が開業することで台湾の方からのお問合せが増えたことが要因として考えられます」(ヤンロン氏)
神居秒算は、「中華圏投資家が注目する街ランキング(全国版) 2024」を2024年6月6日に発表しています。より詳しい情報はこちらをご参照ください。
(出典:神居秒算、「中華圏投資家が注目する街ランキング(全国版) 2024」発表)
どのような対応が求められる?
「多くの仲介会社さまに成約に至った事例のヒアリングをした結果、どういったことを皆さまが当たり前にやっているのかの傾向が見えてきました。やはり、1つ目は『言語能力』。ほぼ90%、中華圏のお客さまは日本語が話せませんので、中国語、加えて英語と韓国語が話せれば、より幅広いお客さまの対応ができます。2つ目は、電話やボイスメッセージ、対面などでの『スピード感のある対応』。ただ、迅速な対応が出来ればいいというわけではありません。加えて『外国人の方特有のニーズへのアドバイス』、例えばエリアの住みやすさは基本として、税金や相続、ビザ、インターナショナルな学校の情報なども詳しいと信頼されるでしょう。投資を検討されている方からは『あなたは物件を持っていますか? どうですか?』と、アドバイスや情報を求められる機会もありますので、『自身の不動産投資経験』があると、なおいいと思います」(ヤンロン氏)
求められる対応まとめ
・言語能力
・スピード感のある対応
・外国人特有のニーズへのアドバイス
・自身の不動産投資経験
目的別、成約事例の紹介
「最後に、成約事例をご紹介します。主に4つの目的別に分けておりますが、その目的によって予算も購入する物件も異なりますので、そういったニーズを知ることでお客さまとの会話がスムーズに進むと思います」(ヤンロン氏)
留学生の親による購入
予算 :2,000万円~1億円
物件の特徴:新宿区や豊島区などの都心、交通利便性の良い小型区分マンション
「40歳代~50歳代の裕福な両親が、留学生に物件を購入するケースで、2千万円~3千万円の区分マンションを購入するケースが多くありましたが、昨今は予算が上がってきています」(ヤンロン氏)
資産運用
予算: 1,000万円~数億円
物件の特徴:安定的な資産運用が見込める、区分所有マンションや1棟ビルなど、幅広く
「安定的な資産運用ができる投資先を探されている方が、賃貸マンションとして現金で購入されるケースが多いです」(ヤンロン氏)
セカンドハウス
予算: 数億円~
物件の特徴:資産性とアクセスを重視。港区、中央区、千代田区などのタワーマンションや低層の高級マンションなど
「インバウンド需要が回復しホテルの料金が高くなっていることもあり、日本に旅行する機会が多い方は、ホテルよりも広々とした空間で過ごされたいという需要からセカンドハウスとしての物件を探されています。トイレが2つあって駐車場付きなど、広い物件を求めていらっしゃいます」(ヤンロン氏)
投資経営ビザ取得のための購入
予算: 数億円~
物件の特徴:主に1棟マンションや民泊物件、ゴルフ場などの大規模な物件、台東区や大田区
「投資経営ビザを取得するため、事業運営規模を満たす物件が必要です。ある程度の規模の事業規模が必要なことがあり、2物件以上、取扱いされるケースが多いです。民泊需要から台東区と大田区が人気です」(ヤンロン氏)
ヤンロン氏は、昨今の中華圏の顧客の増加について、「個人的にはあと1~2年は続くのではないか」と話します。中華圏の方に物件情報を掲載し、販路を拡大されたいと考えていらっしゃる方は、ぜひ、こちらのLIFULL HOME’Sと神居秒算の連携サービスをご参照ください。
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