昨今、AIの技術は目覚ましく発達しており、さまざまな業界で業務効率化や生産性向上に貢献しています。不動産業界においても、AIを有効活用すれば業務効率化や顧客の満足度向上を実現することができます。人手不足や生産性の停滞に悩んでいる不動産会社の方は、AIの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
 
今回は、不動産業界でAIを活用できる具体的な場面と、導入する際の注意点などを解説します。

不動産業界でAI活用が期待される背景

厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、2023年（令和5年）上半期における不動産業の離職率は9.7％でした。全産業の離職率が8.7％であることを踏まえると、不動産業は離職率がやや高い産業だといえます。
 
人材確保や採用に苦労している不動産会社にとって、人手不足を解決するための手段としてのAIの活用は有用です。AIは膨大なデータをスムーズに分析することが得意であるため、これまで人間が行っていた不動産情報の検索や分析をAIに任せることで、業務の効率化を図れるでしょう。
 
また、煩雑な業務をAIに任せ、社員は人間の判断が必要なコア業務に集中すれば、顧客満足度の向上にもつながります。業務効率化を進めつつ付加価値を生み出すという意味で、不動産会社がAIを導入するメリットは大きいといえます。
 
AIによって定型業務を自動化できれば、社員の負担を軽減することも可能です。負担軽減によって社員のワークライフバランスを向上できれば、職場に定着してくれる期待も持てます。

不動産業は繁忙期における業務負荷が高まる傾向があり、AIの活用などで業務効率化を図ることで業績の向上が期待されます

不動産業界でAIを活用できる場面

不動産業界におけるAI活用には、どのような場面が想定されるでしょうか。以下で、不動産業界がAIを有効活用できる具体的な業務を解説します。

不動産の情報管理

AIは膨大なデータの管理が得意です。不動産情報をAIに学習させれば、人間が逐一調べる手間を省略できます。たとえば、不動産の基本的な情報とこれまでの取引データをAIに学習させれば、エリアごとに適切な情報を管理できます。その結果、社員が欲しい情報をスムーズかつ的確に得られるでしょう。
 
情報検索と顧客への情報提供をスムーズに行えるようになれば、顧客満足度の向上につながるでしょう。

物件情報や広告文言の生成

なかには、文章生成に対応しているAIもあります。そこで、AIに物件情報を伝えて「魅力的な広告の文章を作成して」と指示を出せば、数分程度で広告文を生成することが可能です。
 
具体的な指示文を出せば、それに沿ってAIが自動で魅力的な文章を作成してくれます。まだ完璧というレベルではないため、AIが作成した文章を人間が微調整する必要はありますが、ゼロから広告を作成するよりもスムーズに業務を進められるでしょう。

不動産の査定

不動産の価値を査定する際は「机上査定」と「訪問査定」の両方を行っている不動産会社が多いでしょう。机上査定と訪問査定は、いずれも人間が膨大な情報を分析したうえで査定結果を算出するため、相応の作業負担が発生します。
 
そこで、一部の不動産会社では「AI査定」を導入し、過去の取引データや不動産情報をAIに分析させ、迅速な査定を行っています。
 
AIはさまざまな情報やデータを参照しながら不動産価格を査定するため、スムーズでありながら高精度な査定が期待できます。このように、査定業務の一部をAIに委ねることで、スムーズな顧客対応を実現できるでしょう。

問合せ対応

問合せ対応を、AIに任せることも可能です。顧客から頻繁に受ける質問をAIに学習させれば、チャットボットや音声アシスタントによって自動で対応してくれます。
 
似たような問合せ内容に対して、わざわざ社員が対応するのは非効率ともいえます。AIを導入すれば、社員が問合せに対応する労力を削減でき、生産性の高い業務に注力できるようになるでしょう。
 
さらに、AIには24時間365日対応できるという強みがあります。AIによって、顧客からの問合せに対していつでも対応できる環境を整備すれば、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。

物件情報やチラシのコメント作成、一次受付のAIチャット対応など、さまざまな分野で活用できる可能性があります

不動産業界でAIを活用する際の注意点

不動産業界においても業務効率化や生産性の向上に貢献してくれるAIですが、導入にあたって注意すべき点があります。
 
適切に使いこなせなければAIを導入するメリットが薄れてしまうため、費用対効果を慎重に判断しましょう。以下で、不動産業界でAIを活用する際の注意点を解説します。

AIの操作に詳しい人材確保が求められる

せっかくAIを導入しても、社員が使いこなせなければメリットが薄れてしまいます。AIを効果的に使うためには、AIに詳しい人材が必要なのです。そこで、デジタル分野に明るい人材を新規採用するか内部で育成する必要がありますが、いずれにしても経済的・時間的コストが発生します。
 
また、デジタル化が遅れている不動産会社の場合、AIの導入に否定的な考えを持っている社員がいるかもしれません。
 
AIをスムーズに導入するためにも、AIに関する知識があり、社員にわかりやすく説明できる人材の確保は不可欠です。

ファクトチェックを行う必要がある

AIが提供する情報が必ずしも正しいとは限りません。「ハルシネーション」と呼ばれる、AIが事実とは異なる情報を生成してしまう現象が起こり得るためです。
 
誤った情報を顧客に伝えないためにも、すべての業務をAIに任せきりにするのではなく、社員によるファクトチェックが必須です。
 
AIが生成した情報をそのまま顧客に伝え、その情報が誤りだった場合には顧客からの信頼を失いかねません。不動産会社としての信頼を損ねないためにも、手間をかけてでもファクトチェックを行いましょう。

感情の機微を読み取れない

AIはデータ処理や文章生成が得意な一方で、人間の感情は読み取れません。たとえば愛着のある実家を売却する場合などをはじめ、顧客に強い思い入れがあるシーンにおいては、AIを介さずに直接コミュニケーションを取ったほうがよいでしょう。
 
不動産の価値を判断する際には、暮らしやすさや価格に対する印象など、個人差があることに配慮しなければなりません。顧客対応をすべてAIに頼ることは困難であることを念頭に置き、状況に応じて社員が業務を行う必要があります。

東京都は2023年8月、文章生成AI利活用ガイドラインを公表しています。AIの回答の不正確性や著作権、個人情報保護の配慮など、AI利用に関する留意点も記載されています

（出典：東京都 「文章生成AI利活用ガイドライン」の策定について）

まとめ

不動産業界において、AIに任せられる業務はいくつか存在します。AIを導入すれば、人間が行う作業を減らすことができ、業務効率化や生産性の向上を図れるでしょう。
 
長時間労働や人手不足などに悩んでいる不動産会社の事業主の方は、AIの導入を検討してみてはいかがでしょうか。なお、LIFULL HOME'S Businessでは、AIに関連したサービスをいくつか掲載しています。興味のある方はぜひ利用を検討してみてください。
 
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