「複数の生活拠点」を持つ人の割合は5.1%、5年後に移動の可能性がある人は17.2%。第9回人口移動調査
人口の移動は不動産市場にとって大きな影響を与える可能性のある指標です。 国立社会保障・人口問題研究所は2024年7月30日に「第9回人口移動調査」結果の概要を公表しました。人口移動調査では、これまでの移動歴や理由、5年後の見通しなどを明らかにし、将来の人口移動を予想することを目的に実施されています。
2023年7月に全国1,000の調査地区を対象に実施された調査から、一部をご紹介します。
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引越し回数の平均は3.24回。60~64歳で約4.3回とピーク
生まれてから現在までの引越し回数を聞いたところ、男性が3.29回、女性が3.19回と男性のほうがやや多く、平均は3.24回という結果になりました。前回調査(第8回)の平均3.04と比較し、あまり大きな傾向の違いは見られませんでした。
総数 |
男性 |
女性 |
|
---|---|---|---|
第8回(2016年) |
3.04 |
3.06 |
3.03 |
第9回(2023年) |
3.24 |
3.29 |
3.19 |
年齢別に見ると、平均引越し回数は20代前半から40代前半にかけて急速に増加します。前回の調査では、50歳から54歳の間でピークに達し、約4.2回でしたが、今回は、60歳から64歳の間で約4.3回まで上昇しており、引越し回数のピークが高年齢化しています。
年齢別の平均引越し回数。国立社会保障・人口問題研究所「第 9回人口移動調査」を参照して作成
5年以内の移動割合は23.3%、同じ都道府県内の移動割合が上昇
5年前の居住地が現住地と異なる人は23.3%と、前回調査の22.4%から0.9ポイント上昇しましたが、第7回調査(2011年)の24.7%、第6回調査(2006年)の27.7%と比較するとここ10年においての移動傾向が少ないことがわかります。なお、異動した23.3%のうち県内の移動は16.9%から17.6%と0.7ポイント上昇、、同じ都道府県内の他の区市町村から移動した人の割合の上昇幅が6.2%と比較的大きくなりました。
移動理由で多かったのは「住宅を主とする理由」(住宅事情、生活環境上の理由、通勤通学の便など)が最も多く38.9%、続いて「その他」(14.8%)、「職業上の理由」(就職・転職など)(13.9%)、「家族の移動に伴って」(10.1%)でした。
5年後に引越す可能性のある人は17.2%
5年後に居住地が異なる可能性が「大いにある」「ある程度ある」と回答した人を合計すると17.2%となり、前回調査の17.3%から大きな変化は見られませんでした。
5年後に移動可能性がある人の推移。国立社会保障・人口問題研究所「第 9回人口移動調査」を参照して作成
次に、5年後に移動可能性のある人の割合を現住都道府県別に見ると、大都市圏に所在する都府県と北海道、沖縄県において移動可能性が比較的高いことがわかります。北海道と沖縄県を除く非大都市圏に所在する県では、大都市圏に比べておおむね移動可能性が低い傾向にあります。
5年後に移動する可能性のある人の割合を、現住所の都道府県別に多い順で見ると、東京都37.6%、神奈川県33.5%、沖縄県32.5%、千葉県29.6%、兵庫県27.8%、北海道27.6%、大阪府26.5%となり、最も移動可能性が低いのは鳥取県で9.5%でした。北海道、沖縄県を除いて、比較的大都市圏において移動可能性が高いことがわかります。
約9割が新型コロナウイルス感染症拡大による影響はなし
本調査では、2020年前後で特に顕著であった新型コロナウイルス感染症拡大による影響を把握するために新たな設問が設けられました。引越しへの影響について、影響なしが89.9%、影響ありが0.9%、不詳9.2%と、影響があった割合は1%に満たない結果となりました。
(出典:国立社会保障・人口問題研究所「第 9回人口移動調査」新型コロナウイルス感染症拡大による引越しへの影響)
複数の生活拠点を持つ人は5.1%
複数の生活拠点を持つ人は、男性が5.8%、女性が4.4%で、全体では5.1%と、やや男性のほうが多い傾向です。年齢別に見ると、80歳代が8.6 %と最も多く、次に70歳代で6.6%と、比較的高齢になると割合が高くなることが分かります。
複数の生活拠点を持つ理由については、「家族と暮らす」が21.4%、「仕事・学業」が21.0%と多くを占め、次に「その他」(11.5%)や「家族・親族の介護・支援」(6.9%)、「生活の質」(4.8%)、「病院・施設等への入所」(2.4%)となっています。二拠点居住者は暮らしやすさのような「生活の質」を求めている人が多いように思われますが、結果を見ると、仕事や学業、介護などの事情がある人の割合のほうが多いようです。
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