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増加する土砂災害。土砂災害の概要と危険区域の分類を解説

増加する土砂災害。土砂災害の概要と危険区域の分類を解説

近年、台風や大雨による土砂災害のニュースを頻繁に見聞きします。ひと口に土砂災害と言っても、土砂災害自体や危険が想定されている区域が、複数の種類に分類されているのをご存じでしょうか。本記事では、土砂災害の概要や危険地域の分類について紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.3種類の土砂災害
  2. 2.増加する土砂災害の発生件数
  3. 3.土砂災害の危険がある区域とは?
    1. 3.1.重要事項説明も必要。土砂災害警戒区域    
    2. 3.2.土砂災害警戒区域と土砂災害特別警戒区の違い
    3. 3.3.急傾斜地崩壊危険区域    

3種類の土砂災害

土砂災害と聞いて思い浮かべるのは、どのような災害でしょうか。実は土砂災害は、大きく「土石流」「地すべり」「がけ崩れ」の3つに分類されています。    

土石流は、大雨によって山腹や川底の土や石、砂が勢いよく下流へ流れる現象を指します。土石流の流れは速く、時速20~40kmで土砂が流れ出るため、下流に市街地がある場合には住宅を押し流すなど、大きな被害をもたらします。

地すべりは、その名のとおり、緩やかな斜面が地下水の影響によって広い範囲にわたってすべり落ちる現象です。斜面が大きな塊のまま下方向にずれるため、土石流と比べて移動する土の量が多いことが特徴です。畑や家のある土地がそのままゆっくりすべるケースや、短時間に大きく移動することで土地の上にある建物が壊れる、土が堆積して道路が遮断されるといった被害が発生します。

緩やかな斜面で発生する地すべりに対して、がけ崩れは、急な斜面が突然崩れ落ちる現象を指します。大雨や地震によって発生し、斜面が急激に崩れるため、避難が難しい災害です。

山腹や川底の土砂が一気に下流に流れる「土石流」、緩やかな斜面が広範囲にわたってすべり落ちる「地すべり」、急斜面が急に崩れる「がけ崩れ」。これら3種類を総称して土砂災害と呼ぶのです。

(出典:東京都建設局「土砂災害とは」

増加する土砂災害の発生件数

近年は土砂災害に関するニュースが多いように感じますが、実際の発生件数は増えているのでしょうか。

2023(令和5)年の土砂災害発生状況を見てみましょう。2023年には、43の道府県において1,471件の土砂災害が発生しました。梅雨前線による大雨や台風を原因とする土砂災害が目立ち、1,471件という数字は、1982(昭和57)年以降の年間平均発生件数1,099件を大きく上回る件数です。

2023年に限らず、直近10年(2013年~2022年)の年間発生件数平均は1,446件と、やはり近年は増加傾向がうかがえます。豪雨や地震によって土砂災害の発生件数が多い年は直近10年以前にもあったものの、毎年のように1,000件を超えるのは、近年になってからの傾向だといえます。


(出典:国土交通省「令和5年は過去平均を上回る土砂災害が発生」

土砂災害の危険がある区域とは?

かつてより土砂災害の危険が多い近年ですが、土砂災害の危険がある区域は法律に基づいて指定されています。どのような定義に基づいて該当の区域が定められているのかを確認してみましょう。

重要事項説明も必要。土砂災害警戒区域    

土砂災害から生命を守ることを目的とした「土砂災害防止法」という法律があります。これは、土砂災害の危険性がある区域の周知や、新たな住宅の立地規制、既存住宅の移転を促す法律です。この法律によって「土砂災害警戒区域」と「土砂災害特別警戒区域」が指定されています。

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国土交通省 土砂災害防止法の概要

土砂災害警戒区域と土砂災害特別警戒区の違い

土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域ともに、その名称から土砂災害の危険性がある区域であることは想像がつきますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

大きな違いは、建築物の損壊です。土砂災害特別警戒区域は、「土石等の移動の力が通常の建築物が耐えられる力を上回る区域」と定義されています。被害についても、土砂災害警戒区域のほうが「住民等の生命又は身体に危害が生じるおそれ」であるのに対し、土砂災害特別警戒区域の被害については、「建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれ」と表現されています。

建築物の損壊の程度が異なるため、規制の内容についても2つの区域で違いが見られます。土砂災害警戒区域においては、中心となる対処は警戒避難体制の整備や住民への周知であり、土砂災害特別警戒区域においては、これらに加えて建築物への対応が必要となります。具体的には、住宅の宅地分譲や災害時要援護者関連施設の開発行為が許可制となる、土砂災害に耐えうる建築物であるかの建築確認が必要となる、特に危険な場所の建築物に対する移転勧告が行われるといった対応です。

宅地建物取引業法においても、物件のある場所が土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域に該当する場合は、重要事項説明の際に伝えることが義務づけられています。さらに、土砂災害特別警戒区域では、特別の開発行為において、都道府県知事の許可を得ずに宅地の広告や売買契約の締結を行うことはできません。

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国土交通省 土砂災害防止法の概要

(出典:国土交通省「土砂災害防止法の概要」

急傾斜地崩壊危険区域    

土砂災害警戒区域以外にも、法律に基づいて指定されている危険区域があります。その一つである急傾斜地崩壊危険区域は、崩壊するおそれのある傾斜度30度以上の急傾斜地であり、相当数の居住者等への被害が想定される区域や、急傾斜地に隣接する土地で、急傾斜地の崩壊を助長・誘発することがないよう一定の行為が制限されている区域を指します。

急傾斜地崩壊危険区域では、水の放流や切土・盛土、木々の伐採、土石の採取といった行為が制限されています。

(出典:国土交通省「急傾斜地崩壊危険区域の解説」

地すべり防止区域

急傾斜地崩壊危険区域と似たものに、地すべり防止区域があります。地すべりをしている、もしくは地すべりが発生するおそれが大きい区域と、地すべりを助長している・するおそれがある地域が包括して指定されています。

地すべりは地下水の影響で発生するため、地下水を増やす行為や排水を妨げる行為など、地すべりを助長・誘発する行為が制限されています。

(出典:国土交通省「地すべり防止区域の解説」

砂防指定地    

砂防設備が必要な土地や、治水上の砂防のために行為を制限している区域を砂防指定地といいます。河川による浸食や山の崩壊によって土砂が発生する区域や、砂防設備を設置する必要性のある区域において、伐採や土石の採取など、砂防に支障のある行為が制限されています。

(出典:国土交通省「砂防指定地の解説」

増加する土砂災害 リスクの把握を

土砂災害は近年増加傾向にあり、人々の関心も高まっています。土砂災害リスクの把握や、リスクがある区域の物件については重要事項説明を丁寧に行う重要度も増しています。これまでよりもいっそう、土砂災害の発生状況や危険区域の指定にアンテナを張っておく必要があるといえるでしょう。

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入船みみ
入船みみ
大阪大学卒業後、大手インフラ企業に入社。まちづくり企画・不動産賃貸業・店舗開発などの幅広い不動産事業を経験。人事分野にも携わり、採用・人材育成・組織戦略(ワークエンゲージメント)を推進している。豊富な実務経験をもとに、WEBメディアにおいて不動産・キャリア形成・金融をテーマとした記事執筆多数。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。宅地建物取引士試験合格。 SNS・記事実績リンク:https://1link.jp/mimi_irifune

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