東京ゼロエミ住宅改正のポイント解説【2024年10月1日施行】
東京都は、2050年までにCO₂排出を実質ゼロとする世界的ゴール「カーボンニュートラル」に貢献する「ゼロエミッション東京」の一環として、2030年までに温室効果ガス排出量を2000年比50%削減する「カーボンハーフ」の取り組みを加速させています。
その一方で、東京都の特徴として、地価の高さから狭小な敷地が多く、斜線制限による屋根形状の制約もあり、太陽光発電システムなど省エネ設備による環境性能向上の取り組みが進みにくいことが挙げられます。
そこで、断熱性能や省エネ性能について東京都独自の基準を取りまとめたものが「東京ゼロエミ住宅」です。
2019年度から始まった「東京ゼロエミ住宅」助成事業ですが、2024年10月1日に認証基準や助成額などが改正されました。本記事では、東京ゼロエミ住宅の改正ポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.東京ゼロエミ住宅とは
- 1.1.東京ゼロエミ住宅認証制度
- 1.2.他の補助事業との併給の可否
- 2.東京ゼロエミ住宅の改正ポイント
- 2.1.東京ゼロエミ住宅助成制度改正の背景
- 2.2.認証基準の見直し
- 2.3.助成額の見直し
- 2.4.2024年10月1日以降の設計確認申請から新基準が適用
- 3.東京ゼロエミ住宅の活用メリット
- 4.まとめ
東京ゼロエミ住宅とは
東京ゼロエミ住宅の認証制度や、他の補助事業との併給について解説します。
東京ゼロエミ住宅認証制度
東京ゼロエミ住宅は、都が独自に定めた基準の下、高い断熱性を有する断熱材や窓の設置、省エネ性能の高い住宅設備を取り入れた住宅です。これまで9,146件(2023年12月末時点)の住宅が認証を取得しています。
高い断熱性を備えた住宅は、居室間の温度差が減少するためヒートショックの予防につながるほか、冬場の結露が抑制されることで健康を害するダニやカビが発生しにくくなります。
また、空調や給湯設備の高効率化によって光熱費の削減も可能です。
・東京ゼロエミ住宅の断熱性と設備についての概念図
(出典:東京都環境局「東京ゼロエミ住宅とは」)
他の補助事業との併給の可否
国や都の他の補助事業の中には、東京ゼロエミ住宅の助成金と併給できるものもあります。
併給可 |
併給不可 |
---|---|
・子育てエコホーム支援事業 ・地域型住宅グリーン事業 ・ こどもエコすまい支援事業 ・子育て支援型共同住宅推進事業 ・東京こどもすくすく住宅供給促進事業子ども |
・戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)化支援事業 ・集合住宅のCO2化促進事業(ZEH-M) ・LCCM住宅整備推進事業 ・給湯省エネ事業 ・次世代ZEH+実証事業 ・東京ゼロエミポイント など |
(出典:東京都「東京ゼロエミ住宅令和6年度制度改正の概要」p.21)
東京ゼロエミ住宅の改正ポイント
ここでは、2024年10月1日の改正の背景や認証基準、助成額の変更点について解説します。
東京ゼロエミ住宅助成制度改正の背景
改正の背景としては次の点が挙げられます。
|
東京都の目標である「2030年カーボンハーフ」の実現のために、制度を継続的に見直し、新築住宅環境性能の底上げを図るために改正が行われました。
また、これまでの最高水準である水準3を満たす住宅が5割を超えたことを踏まえ、更なる環境性能の向上を目指せると判断したことも背景として挙げられます。
さらに、2025年(令和7年)4月施行予定の建築物環境報告書制度※や国における省エネ基準適合義務化などを踏まえ、環境性能の基準の違いや認証手続きの適正化に対応する必要があることから、今回の見直しが行われました。
※建築物環境報告書制度は、年間供給延床面積が2万平方メートル以上のハウスメーカーなどに、新築住宅などへの太陽光発電設備の設置および断熱・省エネ性能の確保などを義務づける制度
認証基準の見直し
改正前の水準である水準1~3の3段階が水準C~Aに変更になるとともに、新基準では省エネ設備(太陽光発電設備など)の設置が原則として要件化されます。
下図は、旧基準と新基準の違いをまとめたものです。
※1外皮平均熱貫流率(UA値)とは、住宅の壁や屋根、窓などから室内の熱がどれくらい外へ逃げやすいかを数値化したもの。数値が小さいほど断熱性能が高い
※2( )内は木造以外の構造の集合住宅等の場合
(出典:東京都環境局「「東京ゼロエミ住宅」とは?」)
旧基準の水準1と2が新水準のCに統合され、これまで最高位の水準であった水準3は水準Bに移行されました。併せて、より高い環境性能として、水準Aが新設されました。
また、改正前は、開口部(窓やドア)や給湯設備など、個別の住宅設備について要件が規定されていましたが、設計の自由度向上や認証手続き簡素化の観点から、照明設備と冷暖房設備のみが引き続き要件とされることになりました。
助成額の見直し
認証基準の変更に伴い助成額が引き上げられ、一戸当たりの助成額は次のようになります。
改正前 |
改正後 |
||||
---|---|---|---|---|---|
|
戸建住宅 |
集合住宅等 |
|
戸建住宅 |
集合住宅等 |
水準3 |
210万円 |
170万円 |
水準A |
240万円 |
200万円 |
水準2 |
50万円 |
40万円 |
水準B |
160万円 |
130万円 |
水準1 |
30万円 |
20万円 |
水準C |
40万円 |
30万円 |
(出典:東京都「東京ゼロエミ住宅令和6年度制度改正の概要」p.19)
また、助成対象住宅に太陽光発電設備や蓄電池、V2Hを設置する場合は、引き続き追加の補助を受けることができます。
・太陽光発電設備
発電出力 |
改正後 |
備考 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|
太陽光発電システム(3.6kWまで) |
12万円/kW |
上限額:36万円/戸 |
||||
太陽光発電システム(3.6kW超50kW未満) |
10万円/kW |
50kW以上は対象外 |
※オール電化住宅への設置:助成額に1万円/kWを加算
(出典:東京都「東京ゼロエミ住宅令和6年度制度改正の概要」p.20)
・蓄電池
機器代、材料費および工事費の3/4を助成
上限額は、蓄電池の合計蓄電容量に応じて次のとおりです。
|
・V2H
機器代などの1/2を助成(上限額50万円)
※電気自動車などを所有し、太陽光発電設備を設置している場合は10/10を助成(上限額100万円)
2024年10月1日以降の設計確認申請から新基準が適用
改正前後の助成金の適用関係については、認証審査機関に対して設計確認申請を行った日で判断されます。
・2024(令和6)年9月30日までに設計確認申請:旧制度の助成額
・2024(令和6)年10月1日以降に設計確認申請:改正後の助成額
また、改正前の基準の助成金の申請受付期限は令和6年12月末まで、新基準による申請受付期限は令和7年3月末までとなっています。
東京ゼロエミ住宅の活用メリット
東京ゼロエミ住宅の認証を取得することで、不動産取得税の減免を受けられます。
減免割合は認証基準によって異なります。
水準A |
10割 |
---|---|
水準B |
8割 |
水準C |
5割 |
(出典:東京都「東京ゼロエミ住宅令和6年度制度改正の概要」p.22)
減免を受けるには、東京ゼロエミ住宅認証書などを添付のうえ、納税者本人から所在地を所管する都税事務所に申請する必要があります。
また、事業者は、東京ゼロエミ住宅の認証を受けた住宅を販売・賃貸する際の広告に、東京ゼロエミ住宅であることを示すロゴマークを掲載可能です。
(出典:東京都環境局「東京ゼロエミ住宅関連事業」)
不動産ポータルサイトやチラシ、現地の表示などにこのロゴマークを活用することで、都の認証を受けた断熱・省エネ性の高い住宅であることを訴求することができます。
ただし、ロゴマークの利用にあたっては都への利用申請と許諾が必要なため、助成金申請の際に併せて行うとよいでしょう。
まとめ
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国や各自治体でさまざまな取組みが行われています。
そのなかでも、今回の改正によって認証基準の変更に併せ助成額の引き上げが行われた「東京ゼロエミ住宅助成事業」は、他の制度との併給も含め、有効に活用すべき制度といえるでしょう。
事業活動の中で、新築住宅の分譲主や販売会社、マンションオーナーなどにも提案・説明できるように準備しておきましょう。
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