全国の上下水道施設の耐震化状況を一斉調査。耐震化率は全国で低い傾向
国土交通省は能登半島地震の教訓を踏まえ、上下水道施設の耐震化状況の緊急点検を実施し、その結果を2024年11月1日に発表しました。調査対象は、全国すべての水道事業者や下水道管理者で、現在も復旧対応が続く能登6市町(珠洲市、 輪島市、能登町、穴水町、志賀町、七尾市)のみ対象外となっています。
これまで、耐震化状況調査は、水道と下水道の基幹施設のみが対象となっていましたが、能登半島地震を踏まえ、上下水道システムの急所施設や避難所などの重要施設に接続する上下水道の管路なども対象となっています。
国土交通省の調査結果から、緊急点検の結果と、今後の国土交通省の対策をまとめます。
目次[非表示]
- 1.能登半島地震では約14 万戸が断水
- 2.避難所などの重要施設に接続する水道・下水道の耐震化率は15%にとどまる
- 2.1.緊急点検結果概要
- 2.1.1.上下水道の耐震化率
- 2.1.2.避難所などの重要施設に接続する水道・下水道の耐震化率
- 2.2.全国の水道事業者に耐震化計画策定を要請
能登半島地震では約14 万戸が断水
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、最大約14 万戸が断水し、上下水道施設に甚大な被害が発生しました。上下水道システムの基幹施設(浄水場や配水池、下水処理場に直結する管路など)の耐震化が実施されていなかったことなどにより、断水や下水道内の滞水が発生し、復旧に遅れが発生しています。耐震化が実施されていた施設においては重大な被害がなかったことから、事前防災の観点で、上下水道インフラの耐震状況の調査と耐震化を進める必要性が浮き彫りとなっています。
能登半島地震における上下水道の被害
(出典:国土交通省 上下水道施設の耐震化状況に関する 緊急点検結果)
避難所などの重要施設に接続する水道・下水道の耐震化率は15%にとどまる
緊急点検の対象となったのは、急所施設(その施設が機能を失えばシステム全体が機能を失う最重要施設)と、避難所などの重要施設に接続する上下水道です。
緊急点検結果概要
上下水道の耐震化率
・水道システムの急所施設
取水施設は約46%、導水管は約34%、浄水施設は約43%、送水管は約47%、配水池は約67%
・下水道システムの急所施設
下水処理場は約48%、下水道管路は約72%、ポンプ場は約46%
避難所などの重要施設に接続する水道・下水道の耐震化率
水道管路は約39%、下水道管路は約51%、汚水ポンプ場は約44%
給水区域内かつ下水道処理区域内における重要施設のうち、接続する水道・下水道の管路など、両方が耐震化されている重要施設の割合は、全国値で約15%と低い結果にとどまりました。東京都が52%と最も割合が多く、香川県が最も少ない0%でした。人口規模別に見ると、市町村では約 4~21%、都道府県別では約 0~52%の幅と、いずれも低い傾向にあります。
全国の耐震化率の結果概要(上下水道施設の耐震化状況に関する 緊急点検結果)
(出典:国土交通省 上下水道施設の耐震化状況に関する 緊急点検結果)
全国の水道事業者に耐震化計画策定を要請
国土交通省は調査結果を受け、すべての水道事業者や下水道管理者に対し、点検結果をもとに「上下水道耐震化計画」の策定を要請。上下水道施設の耐震化を計画的・集中的に推進していくとしています。国土交通省の今後の取組みは下記です。
・上下水道耐震化計画に基づく計画的・集中的な耐震化の推進
・取組み状況のフォローアップ・公表
・運営基盤の強化や施設規模の適正化の推進
・技術開発の推進
・災害時の代替性・多重性の確保
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