福祉住環境コーディネーターの資格とは? 試験の概要や仕事内容を解説
福祉住環境コーディネーターという言葉を一度は聞いたことがあるけれど、実際どういった資格なのかよくわからない方も多いのではないでしょうか?
福祉住環境コーディネーターの資格を取得すると、他社との差別化を図ることができ、顧客から信頼されやすくなることが期待できます。
そこでこの記事では、福祉住環境コーディネーター資格の特徴や取得するメリット、実際の仕事内容について解説します。ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
福祉住環境コーディネーターとは?
福祉住環境コーディネーターとは、高齢者や障がい者が快適に生活できるよう、住空間の改善を提案するアドバイザーのことです。ケアマネジャーや医師、建築士などの専門家と連携を取りながら、顧客にとって適切なリノベーションプランを提案します。
福祉住環境コーディネーターは1999年に設立され、2024年3月時点で約67万人が資格を有しています。
日本は世界的にも高齢化が進んでいる国であり、総務省が 2024年9月15日時点のデータとして公表した「統計からみた我が国の高齢者」によると、日本の65歳以上人口の割合は29.3%と世界最高を記録しています。
(出典:総務省「統計からみた我が国の高齢者」)
この割合は今後も上昇する見込みであるため、福祉住環境コーディネーターの役割がよりいっそう重要になると考えられるでしょう。
福祉住環境コーディネーター資格を取得するメリット
福祉住環境コーディネーター資格を取得するメリットは主に次の2つです。
・建築や介護などの幅広いスキルが身につく
・希少価値を高められる
福祉住環境コーディネーターの資格を取得することで、手当てが付いたり、給与が上がったりする直接の可能性は低いかもしれません。しかし、この資格を持つことで、専門知識と技能が向上し、高齢者や障がい者の生活支援に貢献できるようになります。
特に、不動産業界においては、福祉住環境コーディネーターの資格を保有している人の割合が少ない状況です。福祉住環境コーディネーター資格保有者が約67万人いるなかで、宅地建物取引士や建築士といった不動産関係に勤めている人の割合はごくわずかです。
(出典:東京商工会議所「福祉住環境コーディネーター検定試験®とは」)
そのため、不動産業界においては福祉住環境コーディネーター資格保有者の希少価値が高く、業界内での差別化を図ることが可能です。高齢者や障がい者向けの住宅改修や住宅開発を行う際に専門知識を生かすことで顧客からの信頼を得やすくなるでしょう。
福祉住環境コーディネーター検定試験の概要
ここからは、福祉住環境コーディネーター検定試験の概要について見ていきましょう。まず福祉住環境コーディネーターになるには、東京商工会議所で実施されている検定試験に合格する必要があります。
本試験は1級から3級までのレベルに分かれており、3級を飛ばして2級や1級を受けることも可能です。また、3級と2級は年に2回試験が実施され、受験方法はIBT方式とCBT方式から選択することになります。一方の1級は年1回のみの実施となり、受験方法もCBT方式のみです。
IBT方式とCBT方式は、どちらもパソコンなどを使用して試験が実施される点は共通していますが、受験環境に大きな違いがあります。IBT方式では、受験者が自身のパソコンやほかの端末を使って自宅や任意の場所からインターネット経由で試験を受けることが可能です。一方のCBT方式では、各地にある受験会場に行き、会場に用意されているパソコンを使用して受験することになります。
1級 |
2級・3級 |
|
---|---|---|
受験回数 |
年1回(12月頃) |
年に2回(7月頃と11月頃) |
受験方法 |
CBT方式のみ |
IBT方式またはCBT方式 |
受験形式・時間 |
[前半・多肢選択式]:90分 [後半・記述式]:90分 |
多肢選択式・90分 |
合格ライン |
前後半それぞれで70点以上/100点 |
70点以上/100点 |
福祉住環境コーディネーター試験の合格率
気になる福祉住環境コーディネーター試験の合格率は、2023年度のデータでは3級が40.9%、2級が38.1%、1級が14.5%であり、1級になると難易度が一気に上がることがわかります。以下が各級の実受験者数・合格者数・合格率の比較表です。
実受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
|
---|---|---|---|
1級 |
234人 |
34人 |
14.5% |
2級 |
1万4,344人 |
5,471人 |
38.1% |
3級 |
5,372人 |
2,197人 |
40.9% |
このように、3級や2級を受験する人はかなり多く、合格率も比較的高い傾向にあります。一方の1級の実受験者数は234人と少数であり、合格者も年間で30人程度です。そのため、より強く差別化を図りたい場合は1級を目指すのがよいかもしれません。
福祉住環境コーディネーターの仕事内容
ここからは、実際に福祉住環境コーディネーターが行う仕事内容について詳しく見ていきましょう。主な仕事内容は次のとおりです。
・住環境の提案
・日々の生活で用いる福祉用具の提案
・住宅改修理由書の作成
住環境の提案
福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障がい者が住みやすい環境を整えるための専門アドバイザーです。医師やケアマネジャー、建築士と協力しながら、個々のニーズに合わせた住環境の改善を提案します。
たとえば、病気や加齢によって移動が困難になった場合、これまでは気にならなかった小さな段差も大きな障害となり得るでしょう。こうした住宅に関する問題を解決するために、福祉住環境コーディネーターは段差の解消やスロープの設置など、多様な改善策を提案するのです。
日々の生活で用いる福祉用具の提案
福祉住環境コーディネーターは、住環境についての提案だけでなく、福祉(介護)用具の提案も行います。福祉用具には多くの種類があり、身体状況に応じて異なるものを使用する必要があります。そのため、その人に適した用具の紹介や提案を行うことも福祉住環境コーディネーターの重要な仕事の一つなのです。
たとえば、足腰の弱った高齢者には歩行器や手すりを、体力が限られる人には介護用ベッドなどを提案することが考えられるでしょう。
住宅改修理由書の作成
福祉住環境コーディネーターの2級以上を取得していれば、住宅改修費理由書の作成が可能です。
住宅改修理由書とは、要介護者または要支援者が自宅で生活するために改修工事が必要となる場合に、改修にかかる費用の一部を自治体に支援してもらうための申請書類です。
この理由書はケアマネジャーや理学療法士、福祉住環境コーディネーター2級以上の取得者など、限られた人しか作成できません。福祉住環境コーディネーター2級以上を取得していれば、このような専門的な業務にも携わることができます。
福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障がい者が住みやすい環境を整えるための用具や住環境に関することが主な仕事となります
福祉住環境コーディネーターの資格を生かせる仕事
福祉住環境コーディネーターの資格を生かせる仕事は主に次の2つです。
・建築・不動産関係の仕事
・福祉・介護関係の仕事
建築・不動産関係の仕事
冒頭でも解説したとおり、日本は世界的にも高齢化が進んでおり、この傾向は続く見込みです。そのため、今後ますますバリアフリー住宅や福祉施設の需要が高まることが予想されます。
このような状況を背景に、建築および不動産関係の業界では、バリアフリー住宅の設計やリフォーム、福祉施設の開発に携わる機会が増えていくことでしょう。
そこで、福祉住環境コーディネーターの資格を有している人が担当者となることで、医療や福祉分野の顧客により安心感を与えられる可能性が高まります。
福祉・介護関係の仕事
福祉住環境コーディネーターの資格は、福祉・介護関係の仕事で生かされることが多いです。実際に福祉住環境コーディネーターを取得している人の大半は福祉・介護関係で働いています。
ケアマネジャーや介護保険施設、グループホームなどの施設で働いている人が取得し、施設などの住環境整備についてアドバイスを行っているのです。ほかにも、介護用品を扱う店舗や福祉機器メーカーなどでも、福祉住環境コーディネーターの資格を生かせるでしょう。
建築に加え、医療や福祉の知識も得ることでより専門的な提案ができるでしょう
福祉住環境コーディネーターの資格を取得してビジネスに差をつけよう!
福祉住環境コーディネーターとは、高齢者や障がい者が快適に生活できるよう、住空間の改善を提案するアドバイザーのことです。ケアマネジャーや医師、建築士などの専門家と連携を取りながら、顧客にとって適切なリノベーションや建築プランを提案します。
福祉住環境コーディネーターの資格を取得することで、市場における希少価値を高められます。特に不動産業界においては、福祉住環境コーディネーターの資格を保有している人の割合はまだまだ少ない状況にあり、他社との差別化を図りやすいといえます。
バリアフリー住宅や福祉施設の需要は今後ますます高まることが予想されるため、これらの受注機会を逃すことがないよう、福祉住環境コーディネーターを取得してビジネスに差をつけましょう。
LIFULL HOME'S Businessでは、不動産業界に関連したコラムやセミナー情報なども公開しております。ぜひご覧ください。