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農地付き空き家の手引きが改訂。移住促進のポイントと注意点を徹底解説

農地付き空き家の手引きが改訂。移住促進のポイントと注意点を徹底解説

人口減少や少子高齢化が進むなか、地方では増加する空き家と未利用農地の増加が深刻な問題となっています。一方で、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに地方移住への関心が高まり「農地付き空き家」が新たな選択肢として注目を集めているのも実情です。
 
しかし、農地管理や法的手続きなど、不動産会社としても対応が難しい側面があります。そこでこの記事では、農地付き空き家の手引き改訂の背景や具体的な内容、活用する際の注意点を詳しく解説します。

目次[非表示]

  1. 1.「農地付き空き家」とは?
  2. 2.農地付き空き家の手引きが改訂された主な理由
  3. 3.農地付き空き家の手引き改訂版で解説されている4つの内容
    1. 3.1.地方移住や空き家等をめぐる動向
    2. 3.2.取り組みを進めるにあたっての手続
    3. 3.3.取り組み事例
    4. 3.4.関連制度等の紹介
  4. 4.農地付き空き家を活用する際の2つの注意点
    1. 4.1.農地管理の負担を減らす
    2. 4.2.法的なトラブルを防ぐ
  5. 5.まとめ

「農地付き空き家」とは?

農地付き空き家とは、建物(空き家)とその隣にある農地(または空き家と農地が一つの地番や敷地内に含まれており、境界線や分割がなく、物理的にも法的にも一体となっている状態)がセットになった物件のことです。主に、地方の農村地域に多く見られます。
 
少子高齢化や過疎化の進行に伴って増加した空き家を有効活用する目的もあり、移住希望者の受け皿として提供されるケースが増えています。
 
農地付き空き家は、農業を楽しみながら田舎での生活を実現できる物件のため、移住者にとって魅力的です。また、不動産会社にとっても、空き家と農地を一体で売買する新たなビジネスチャンスとなります。

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農地付き空き家の事例

(出典:国土交通省 「『農地付き空き家』の手引き」を改訂しました!~農地取得時の「下限面積要件」の廃止等に対応~

農地付き空き家の手引きが改訂された主な理由

農地付き空き家の手引きが改訂された主な理由は、2023(令和5)年4月1日に施行された農地法(昭和27年法律第229号)の改正にあります。この改正により、農地の権利取得における下限面積要件が廃止され、より柔軟な農地利用が可能になりました。
 
改正の背景には、空き家や未利用農地が増加しているという課題に対応し、地域の活性化を目指す国の方針があります。また、近年の空き家や地方移住をめぐる動向にも対応できるよう、手引きには具体的な手続きや支援制度の紹介が加えられています。

農地付き空き家の手引き改訂版で解説されている4つの内容

この章では、農地付き空き家の手引き改訂版で解説されている4つの内容について、詳しく説明します。

地方移住や空き家等をめぐる動向

地方移住への関心は、新型コロナウイルス感染症の流行やテレワークの普及をきっかけに大きく高まっています。過疎地域における人口移動の状況(コーホート純移動率)を見てみると、2010~2015年の期間では、60~64歳や65~69歳といった高齢層に加え、25~29歳の若年層も自然豊かな環境を求めて移住を検討する動きがあることがわかります。

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※2 「コーホート」とは、同じ年(又は同じ期間)に生まれた人々の集団のことを指す。 ここで言う「純移動率」とは、期首年次における人口がその5年後の期末年次に、どの程度流入又は流出しているかを 示すものであり、次の算式で表す。
 純移動率(%)=(期末人口-期首人口×生存率)/期首人口×100

(出典:国土交通省|「農地付き空き家」の手引き|過疎地域における人口移動の状況(コーホート純移動率)|p.2
 
NPO法人や地方公共団体が提供する移住相談や体験プログラムの利用者も増加傾向にあり、スローライフや家庭菜園といった理想の暮らしを目指す移住希望者が多いようです。
 
一方で、空き家を有効活用する動きも活発化しており、農地付き空き家は地方活性化の有力な手段として注目を集めています。

取り組みを進めるにあたっての手続

農地付き空き家活用の取り組みを進めるためには、まず空き家バンクを設置する必要があります。空き家バンクを設置することで、空き家や農地の情報を効率的に収集し、利用者間のマッチングを促進できるようになるためです。
 
また、自治体、宅建業者、農業委員会などの関係機関が連携し、それぞれの役割を明確にしながら取り組みを進めることが重要です。さらに、農地付き空き家を提供する際には、所有者や利用希望者に対する適切な手続き案内が求められます。
 
これらの手続きを体系的に進めることで、地方移住や地域活性化に向けた効果的な取り組みを実現できます。​

取り組み事例

農地付き空き家を活用した取り組み事例として、次の5つの自治体が挙げられます。
 
・宍粟市(兵庫県)
・佐用町(兵庫県)
・雲南市(島根県)
・豊後高田市(大分県)
・竹田市(大分県)
 
これらの自治体では、地域活性化を目的に、移住希望者に農地付き空き家を提供する取り組みを進めています。以下は、具体的な取り組みの内容です。

自治体
取組内容

宍粟市(兵庫県)

移住希望者の声を受け、空き家調査や情報提供の面を工夫し、農地付き空き家の活用を推進している。

佐用町(兵庫県)

移住促進策として農地付き空き家を活用し、体験事業や就農支援、定住コーディネーターによる相談対応を実施している。

雲南市(島根県)

農地付き空き家活用を全国で初めて実施。専属スタッフの配置や補助金、体験プログラム、新規就農支援を提供している。

豊後高田市(大分県)

空き家バンクを中核とする農地付き空き家活用を推進し、移住支援サイトなどの施策を充実させている。

竹田市(大分県)

認定NPO法人ふるさと回帰支援センターと全国初の協定を締結し、移住相談のワンストップ化や新規就農者への技術・資金支援を充実させている。

このような事例は、農地付き空き家の有効活用や移住促進の成功例として、不動産会社にとっても非常に参考になります。紹介した事例について、詳しくは『農地付き空き家』の手引き第3章の事例(37~57ページ)をご覧ください。

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兵庫県佐用町空き家バンクの仕組み

参照:国土交通省|『農地付き空き家』の手引き

関連制度等の紹介

手引きの最後には、「関連制度等の紹介」があります。全国版空き家バンクや空き家再生等事業、各種就農支援制度、移住や二地域居住を支援する制度が掲載されており、それぞれの概要が簡潔にまとめられています。
 
農地付き空き家を有効活用するためには、各自治体が提供する補助金制度や移住者向けの就農支援との連携が重要です。これらの支援制度は、空き家や農地のマッチングを支援する「空き家バンク」の活用を促進し、地域活性化を目的として設計されています。
 
不動産会社としては、これらの制度を活用し、顧客への提案力を高めることが重要です。関連制度について、詳しくは農地付き空き家の手引き第4章の関連制度等の紹介(58~64ページ)をご覧ください。
 
参照:国土交通省|『農地付き空き家』の手引き

農地付き空き家を活用する際の2つの注意点

この章では、農地付き空き家を活用する際の2つの注意点を解説します。不動産会社として、所有者や移住希望者に適切なサポートを提供できるようにしましょう。

農地管理の負担を減らす

農地付き空き家の管理には、雑草の除去や土壌の管理など、農地を耕作可能な状態で維持するための多くの手間がかかります。所有者の負担を軽減するために、不動産会社としては、以下のような具体的な提案が必要です。
 
・農協との連携
・自治体の農地バンクや移住支援制度の活用
・管理業者の仲介
 
農協と連携して耕作者を紹介し、農地の委託利用を促進することで、農地の荒廃を防ぐことができます。また、自治体の農地バンクを活用すれば、農地利用を希望する耕作者との効率的なマッチングが可能です。これにより、移住希望者が見つかるまでの間も農地を適切に維持管理できる環境を整えることができます。
 
また、雑草対策やメンテナンスを請け負う会社を仲介することで、所有者の管理負担を減らし、農地付き空き家の活用を促進する環境を整えることが可能です。
 
なお、移住希望者が農地利用を始める際の初期費用や技術面での負担を軽減することも重要です。補助金や就農支援を通じて、移住希望者の定住を後押しし、地域活性化につなげていくことが期待されます。
 
これらの取り組みによって農地付き空き家を有効に活用できるようにしましょう。

法的なトラブルを防ぐ

農地付き空き家を扱う際には、以下の法律を正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。
 
・農地法
・建物利用の制限
 
農地を別の用地に転用する場合は、農地法に基づく許可が求められます。無許可での転用は違法となるため、適切な手続きを進めることが不可欠です。市街化区域の場合は届出をすれば基本的に受理されますが、市街化調整区域の場合は申請が必要で、許可を得なければ転用できません。

市街化区域

届出を行えば基本的に受理される

市街化調整区域

申請を行って許可を得る必要がある

また、都市計画区域内(都市の整備や保全を目的に、都市計画法に基づいて指定された区域で、市街化区域と市街化調整区域のほかに非線引き区域がある)では、建物部分に用途地域や建ぺい率、容積率などの制限が適用されるため、これらの規制を遵守することが重要です。
 
不動産会社は、こうした法的規制があることを所有者や移住希望者に説明し、トラブルを未然に防ぐことが求められます。

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地域の資源として活用が期待されている農地付き空き家。取り組み事例や関連制度を確認して活用してきたいものです

まとめ

農地付き空き家の手引きは、地域社会の課題解決と移住促進を支えるために改訂されました。不動産会社にとっては、新たな事業機会の創出につながるほか、地域活性化に貢献できる可能性も秘めています。
 
この記事で紹介した改訂の背景や手引きの内容、具体的な事例を、実務に役立てるようにしましょう。農地付き空き家の活用には大きな可能性がありますが、実際には的確な提案と手厚いサポートが求められます。
 
不動産業界としてこの取り組みに積極的に関わり、地域社会とともに成長を目指していきましょう。
 
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岩井佑樹 ゆう不動産代表
岩井佑樹 ゆう不動産代表
合同会社ゆう不動産代表。熊本学園大学商学部経営学科卒業。大学卒業後に飲料メーカーの営業として7年間勤務後、宅建を独学で取得し不動産業界に転職。不動産業界歴は10年目となり、現在は不動産会社とWebライティング制作会社を経営。今まで、実体験を絡めたリアルな不動産関連の記事を500記事以上作成。日ごろから、記事を読む人が「どんなことで悩んでいるのか」「どんなことを知りたいのか」など、読み手の方の気持ちに寄り添って記事を書くように心がけている。

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