第三者管理方式とは? 増加している背景や管理会社が気をつけるべきポイントを解説
近年、マンションなどの区分所有者の高齢化に伴う管理組合員の不足が大きな課題となっています。この問題を解決する手段として注目を集めているのが「第三者管理方式」という管理形態です。聞き慣れない方もいるかもしれませんが、第三者管理方式は管理組合側だけでなく、不動産管理会社といった不動産の専門家にとってもメリットがある方法です。
この記事では、第三者管理方式の概要と、この方法が普及しつつある背景について解説します。また、制度を活用することで得られる管理組合と不動産管理会社双方のメリットについても触れていきます。ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.第三者管理方式とは
- 1.1.第三者管理方式の概要
- 2.第三者管理方式の採用が増加している背景
- 3.第三者管理方式の種類
- 4.第三者管理方式のメリット
- 4.1.区分所有者側のメリット
- 4.2.不動産管理会社側のメリット
- 5.第三者管理方式の注意点
- 6.双方で納得した第三者管理方式の採用が大事
第三者管理方式とは
ここでは第三者管理方式の概要と、この方法が普及しつつある背景を見ていきます。
第三者管理方式の概要
第三者管理方式とは、従来は管理組合が行うマンションなどの管理業務を外部の専門家に依頼し、代行してもらう方法です。本来、管理組合は、総会の運営や修繕計画の立案、修繕積立金の管理、住民への報告などの業務を担います。
第三者管理方式では、原則としてこれらの業務のすべてを不動産管理会社やマンション管理士などの専門家に代行してもらうことになります。専門家が業務を代行することで、業務の効率化が図られるだけでなく、管理業務の質を向上させることが期待できます。
第三者管理方式で代行を請け負うことができる専門家とは、主に以下のような業種の従事者や資格保有者です。
・不動産管理会社
・マンション管理士
・建築士
・司法書士
・税理士
第三者管理方式の採用が増加している背景
第三者管理方式の採用が増加している背景には、主に次の3つの理由が挙げられます。
・標準管理規約の見直し
・高齢化による役員不足
・理事会活動に対する非協力化
まず、国土交通省が作成しているマンションの管理規約のひな形「標準管理規約」が2011年に改正され、「居住している区分所有者に限定」という理事の要件が廃止されました。一方で「第三者管理方式」に関する条文が新たに追加されたのです。
これにより、外部の専門家に業務を委託するという選択肢が生まれ、第三者管理方式の採用増加につながりました。
また、マンションなどでも高齢化が進んでおり、役員を引き受けられない区分所有者の割合が増加しています。退職後などで時間に余裕があったとしても健康上の理由などから役員活動が困難なケースが目立っており、管理業務を担う人手不足が深刻化している状況です。
反対に、働き盛りの世代や子育て世代の区分所有者にとっては、仕事や家庭ですでに多忙な日常を送るなかで、理事会活動のために時間を割くことは大きな負担となります。この理由から、休日に理事会活動に参加することに対して非協力的な姿勢が広がりつつあり、特に近年ではマンション管理に無関心な層が増加傾向にあるとも指摘されています。
これらのいずれかの理由、あるいは複数の理由から、第三者管理方式の採用が増加しているのです。
高齢化などの理由を背景に第三者管理方式の採用が増加傾向にあり、今後も増えることが予想されます
第三者管理方式の種類
第三者管理方式には次の3つの種類があります。
・第三者が理事会に加わり運営を担う方式
・第三者が運営を担当して理事会が監督する方式
・第三者運営で理事会を設けず総会が監視する方式
それぞれの方法と特徴について以下で解説します。
第三者が理事会に加わり運営を担う方式
1つ目が「第三者が理事会に加わり運営を担う方式」です。
この方式では、不動産管理会社などの専門家が理事会のメンバーとなり、ほかのメンバーである区分所有者たちと共に運営を進めていきます。専門家が加わることで、不動産管理や運営の専門知識を活用したスムーズな議論や対応が期待できるでしょう。
ただし、この方式は専門家に業務を一任する形ではなく、区分所有者もこれまでどおりメンバーとして理事会に出席する必要があるため、区分所有者の負担軽減はあまり期待できません。
(出典:一般社団法人 日本マンション管理士会連合会)
※塗りつぶしが外部の専門家
第三者が運営を担当して理事会が監視する方式
次に「第三者が運営を担当して理事会が監視する方式」についてです。
この方式では、不動産管理会社などの専門家が管理組合の管理者に就任し、理事会のメンバーとして運営を担います。一方で、理事会自体は監査的な立場をとり、外部の管理者(専門家)の活動を監視する役割を果たします。加えて、別の外部管理者を理事会に迎え入れることで、監視体制を強化するケースも見られます。
この方式のメリットのひとつとして、不動産管理の専門家が対応することで、専門性が高く、時間的な拘束や心理的な負担が大きい業務を効果的に処理できる点が挙げられます。たとえば、管理費回収訴訟や反社会的勢力への対応、災害時の被災対応など、特定の問題に対して迅速かつ的確な判断と行動が可能です。
ただし、この仕組みでは区分所有者が引き続き理事会を構成して運営に関与する必要があるため、区分所有者の負担軽減にはつながりにくいという課題もあります。
(出典:一般社団法人 日本マンション管理士会連合会)
※塗りつぶしが外部の専門家
第三者運営で理事会を設けず総会が監視する方式
「第三者運営で理事会を設けず総会が監視する方式」とは、理事会を設けず(廃止)、不動産管理会社などの専門家が管理者として就任し、運営を行います。この際、区分所有者から選出された監事が外部専門家を監視するか、監査法人による外部監査を行うことが一般的です。
理事会自体がなくなるため、区分所有者は理事会のメンバーになる必要がなく、定期的な会議なども開催されません。そのため、この形式であれば区分所有者の負担を軽減しやすいといえるでしょう。
一方で、大半の業務を外部に委託するため、外部管理者への依存度が高まってしまい、利益相反への懸念が生じる可能性があるでしょう。
(出典:一般社団法人 日本マンション管理士会連合会)
※塗りつぶしが外部の専門家
第三者管理方式のメリット
ここからは、第三者管理方式を活用することで、区分所有者と不動産管理会社が得られるメリットをそれぞれ詳しく見ていきます。
区分所有者側のメリット
・専門家が業務を対応
・区分所有者の負担軽減
マンション管理の専門家が管理組合の運営を担うことで、運営の高度化と効率化を期待できます。建物の老朽化に伴ってさまざまな問題が発生しても、専門的な知識と経験を生かして適切に対応してくれる点も魅力的です。
さらに、選択する方法次第では、区分所有者は理事会メンバーとしての業務から解放され、負担を負わずに済むようになります。「休日に理事会への参加を義務づけられるのが負担」と感じる区分所有者にとっては大きなメリットといえます。
不動産管理会社側のメリット
一方の不動産管理会社側は、総会の運営や修繕計画の立案、修繕積立金の管理、入居者への報告といった業務を請け負うことで、契約に基づく報酬を得ることができます。これは、不動産管理会社にとっての安定した収益源となります。
また、不動産管理会社が直接運営に関与することでマンション全体の価値を維持・向上させることができれば、自社の評価にもつながり、業界内での競争力を高めることが可能です。
第三者管理方式の注意点
第三者管理方式は管理組合の負担を大幅に軽減するメリットがありますが、一方で外部管理者への依存度が高まる点には注意が必要です。
外部管理者にすべてを任せきりにすると、透明性が欠如してしまいます。不正行為が行われるリスクもゼロではありません。リスクを防ぐためにも、理事会や総会が外部管理者の業務内容を定期的にチェックし、適切な運営が行われているかを監視する体制を整える必要があるでしょう。
また、不動産管理会社と管理組合の間で利益相反が発生しないようにするための工夫も欠かせません。たとえば、修繕計画や見積もりの妥当性を第三者の専門家に評価してもらうなど、外部の視点を取り入れることで透明性を高められます。
管理会社側としても、費用や業務内容を明確に提示し、利益相反が発生しないよう十分な配慮を行うことが求められます。
双方で納得した第三者管理方式の採用が大事
第三者管理方式とは、従来管理組合が行うマンションなどの管理業務を外部の専門家に依頼し、代行してもらう方法です。近年の標準管理規約の見直しや、高齢化による人手不足などの影響により、第三者管理方式の採用は増加傾向にあります。
第三者管理方式を採用すると、管理について専門家が主導することになるため、より高度で効率的な運営が期待できるでしょう。
不動産管理会社側にとっても、運営業務を請け負うことで、契約に基づく報酬を得られます。ただし、利益相反には十分に気をつけ、透明性をしっかりと確保し、双方が納得のいく契約内容を取り決めることが重要です。
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