住宅ローン金利は今後どうなる? 固定・変動金利の見通しと住宅需要への影響
近年、住宅ローンの固定金利は大きく上昇しており、今後さらに利上げが進む兆しも見えます。また、2024年の金融政策の影響により、変動金利の上昇も予想されています。住宅ローン金利の上昇によって、住宅購入に対する顧客の不安が大きくなれば、購入を断念してしまう可能性もあるでしょう。
金利上昇に対する不安を解消し、安心して住宅購入に進んでもらうためには、住宅ローン金利の見通しを把握し、利上げへの対策をアドバイスできるように準備することが大切です。
本記事では、これまでの住宅ローン金利の推移と今後の予測、顧客の不安を解消する具体的な対策を解説します。
目次[非表示]
- 1.これまでの住宅ローン金利の推移
- 2.今後の住宅ローン金利はどうなる?
- 2.1.固定金利に影響する長期金利動向は?
- 2.2.変動金利に影響する日銀政策方針は?
- 3.住宅需要への影響
- 4.顧客の金利上昇に対する不安の対処法
- 5.まとめ
これまでの住宅ローン金利の推移
今後の金利の見通しをお伝えする前に、この10年ほどで住宅ローン金利がどのように推移してきたかを振り返ってみましょう。
まず、借入期間中の金利が固定されるフラット35や、一定の年数を選んで金利を固定できる期間選択型ローンの「固定金利」は、2016年と2019年に金利の下降が見られました。
2016年は、国のマイナス金利政策の影響を受けたことで、金融機関が住宅ローン金利を引き下げました。その後、金利は一時的に上昇したものの、2019年にはアメリカの政策金利引き下げの影響により、再び金利が下降したのです。
以降はしばらく横ばいが続きましたが、2022年初めから世界的なインフレと長期金利上昇を背景に、住宅ローンの固定金利も上昇に転じました。2024年に入ってからは、上昇のペースはやや緩やかになったものの、以前より高い水準を維持しています。
一方、短期間で金利が見直される「変動金利」は、90年代の急落以降、一時的に上昇した時期もあったものの、長らく横ばいで推移してきました。
しかし、2024年に入り、金融政策の変更を受けて利上げの兆しが見られたため、今後の動向に目が離せない状況です。
住宅ローン金利は住宅購入需要に影響があるため、今後も動向を注視する必要があります
今後の住宅ローン金利はどうなる?
住宅ローンの金利は、今後どのように推移していくのでしょうか。ここでは、固定金利と変動金利それぞれが影響を受ける要因を基に、今後の金利の動向を考察してみます。
固定金利に影響する長期金利動向は?
住宅ローンの固定金利は、10年国債に代表される長期金利の影響を受けます。10年国債の金利は、2024年7月3日に1.1%に引き上げられ、12年ぶりの高水準となりました。
その後、一時的に下降したものの11月末に再び1%台に戻っていることから、長いスパンで見ると長期金利は上昇傾向にあると考えてよいでしょう。実際、住宅ローンの固定金利も、多くの金融機関で利上げが行われています。
2024年12月における主要銀行の10年固定住宅ローン金利は以下のようになっており、そろって0.10〜0.15%ほど引き上げられました。
・みずほ銀行 1.50%
・三菱UFJ銀行 1.22%
・三井住友銀行 1.95%
・りそな銀行 1.805%
・三井住友信託銀行 1.605%
※金利は最優遇条件の適用を受けた場合です
長期金利は債券市場の動向に左右されるため、予測が難しい面もあります。それだけでなく、3月に行われた金融政策決定会合で、長期金利を一定の範囲に抑える政策の終了が決まったため、今まで以上に市場の影響を受けやすくなっているといえます。
直近では上昇傾向であるものの、この先の固定金利の動向を見通すには、定期的に長期金利を確認したほうがよいでしょう。
日銀の政策方針や金利動向に加えて、国の住宅購入の支援状況なども購入需要への影響があるでしょう
変動金利に影響する日銀政策方針は?
住宅ローンの変動金利は、企業に対する銀行の短期融資金利である、短期プライムレートに影響を受けます。さらに短期プライムレートには、日銀の政策金利が大きな影響を与えます。
この政策金利では、2024年3月にマイナス金利を解除し、7月に利上げを実施しました。この動きを受け、短期プライムレートの利上げに動く金融機関が出てきています。
しかし、その後の10月に行われた金融政策決定会合で、政策金利の追加利上げが見送られました。この影響からか、住宅ローンの変動金利においては据え置く銀行が目立ちます。
2024年12月における主要銀行の10年固定住宅ローン金利は以下のとおりで、前月から据え置きとなっています。
・みずほ銀行 0.375%
・三菱UFJ銀行 0.345%
・三井住友銀行 0.625%
・りそな銀行 0.390%
・三井住友信託銀行 0.48%
※金利は最優遇条件の適用を受けた場合です
とはいえ、今後政策金利のさらなる利上げがあれば、多くの金融機関が追従して利上げを行う可能性があります。変動金利においては、これからの政策金利の動向に注視する必要がありそうです。
住宅需要への影響
住宅ローン金利の上昇は、住宅需要の低下を招く可能性があります。金利が上昇すると、同じ借入額でも毎月の返済額が増加し、顧客にとって経済的負担が大きくなるためです。住宅購入に対する心理的なハードルが高まり、購入を諦めたり計画を延期したりする顧客が出てくるかもしれません。
また、住宅需要が低下すると、不動産市場全体の取引件数が減少し、物件の売れ行きが落ち込む恐れもあります。この状況に売り主が焦り、物件売却を急ぐあまり値下げするようになれば、地域の不動産価格が下落する可能性も出てくるでしょう。
これまで住宅需要を下支えしてきたといえる住宅ローンの低金利。物件価格の高騰もあり、追加利上げの有無は住宅購入検討者にとって気になるトピックスです
顧客の金利上昇に対する不安の対処法
金利上昇に不安を抱く顧客には、価格を抑えた物件を提案してみましょう。たとえば、相場が比較的安いエリアの物件や、新築にこだわらない場合は築浅の中古物件を紹介するのも有効です。借入額を抑えることで、毎月の返済額も軽減できる点を丁寧に伝えるとよいでしょう。
また、将来的な金利上昇を懸念する顧客には、一部繰り上げ返済の活用をアドバイスすることをおすすめします。一部繰り上げ返済は、返済期間中に元本の一部を繰り上げて返済する方法であり、毎月の返済額を減らすことにつながります。
現在、多くの金融機関が繰り上げ返済手数料を無料としており、ウェブで簡単に手続きできるところも増えています。このような提案を通じて顧客の不安を解消し、安心して住宅購入を進められるようにサポートしましょう。
住宅ローン金利について不安に感じている検討者も多くいると思われるため、今後も住宅ローン金利に関する情報、金利政策、住宅ローン控除の制度についてなどの購入者が疑問に感じる点は確認しておくとよいでしょう
まとめ
2022年以降、長期金利の上昇を背景に、住宅ローンの固定金利は高い水準で推移しており、さらなる上昇の兆しを見せています。また、変動金利も2024年の金融政策の影響で、今後上昇する可能性を秘めています。
住宅ローン金利が上昇すれば、返済額の負担が増し、住宅購入を慎重に考える顧客が増えることが予想されます。
そこで、価格を抑えた物件の提案や、一部繰り上げ返済活用のアドバイスなどで、金利上昇に対する顧客の不安を解消することが重要となります。安心して住宅を購入していただけるように、丁寧にサポートを行いましょう。
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