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賃貸物件の東京ルールとは? 賃貸住宅トラブルガイドラインや原状回復ルールを解説

賃貸物件の東京ルールとは? 賃貸住宅トラブルガイドラインの内容や原状回復ルールの内容を解説

東京都では、賃貸住宅紛争防止条例を定めて、賃貸物件に関するルールを設けています。条例は東京都内でのみ適用されるため、「東京ルール」とも呼ばれます。
 
この条例が適用されるのは、東京都内の賃貸物件を取り扱う宅地建物取引業者です。具体的には、主に賃貸物件を紹介する不動産会社や管理会社に対して、入居予定者への説明義務を定めています。
 
今回は、賃貸物件の東京ルールの内容や、国土交通省のガイドラインとの違いなどを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.東京都の賃貸住宅紛争防止条例とは
  2. 2.賃貸住宅紛争防止条例の適用対象と説明すべき内容
  3. 3.賃貸住宅トラブル防止ガイドラインの内容
    1. 3.1.建物価値の減少の考え方
    2. 3.2.原状回復の考え方
    3. 3.3.善管注意義務の考え方
    4. 3.4.経過年数の考え方
  4. 4.国土交通省のガイドラインと賃貸住宅紛争防止条例の違い
  5. 5.まとめ 

東京都の賃貸住宅紛争防止条例とは

東京都では、住宅の賃貸借に係る紛争を防止するために、賃貸住宅紛争防止条例を設けています。
 
条例で明示されているのは、主に原状回復や入居中の修繕などに関する内容です。また、法律上の原則や判例によって定着した考え方についても、宅地建物取引業者が入居予定者に書面で説明することを義務付けています。
 
賃貸物件では、原状回復費用や修繕費を貸主と借主のどちらが負担するかや、借主が負担する場合の金額などをめぐって、トラブルになるケースが少なくありません。
 
入居後や退去時のこうしたトラブルを防ぐために、条例において宅地建物取引業者が果たすべき義務が明文化されているのです。

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特に退去時にトラブルが多く発生しており、円滑な入居者との取引のためには、契約時から賃貸住宅紛争防止条例を意識した対応が必要となります

賃貸住宅紛争防止条例の適用対象と説明すべき内容

賃貸住宅紛争防止条例において、適用対象となる物件や宅地建物取引業者が説明すべき内容は以下のとおりです。

条例の適用対象

・東京都内にある居住用の賃貸住宅(店舗・事務所等の事業用は対象外)※1
・平成16年10月1日以降の新規賃貸借契約(更新契約は対象外)
・宅地建物取引業者が媒介または代理を行う物件

宅地建物取引業者が説明する内容※2

・退去時における住宅の損耗等の復旧について(原状回復の基本的な考え方)

・住宅の使用及び収益に必要な修繕について(入居中の修繕の基本的な考え方)
・実際の契約における賃借人の負担内容について(特約の有無や内容など)
・入居中の設備等の修繕及び維持管理等に関する連絡


※1 都内の物件を扱う場合、都外の宅地建物取引業者にも説明を義務付け 
※2 住宅を借りようとする者が宅地建物取引業者である場合は、書面の交付のみで説明は不要

(出典:東京都住宅政策本部「賃貸住宅紛争防止条例」)
 
都内の賃貸物件は基本的に賃貸住宅紛争防止条例の対象になる、という理解で差し支えありません。宅地建物取引業者が条例に違反した場合、知事は指導および勧告を行うことができ、当該勧告に従わない場合は公表することができます。
 
会社としての信頼を失わないためにも、不動産会社は条例を守る必要があります。

賃貸住宅トラブル防止ガイドラインの内容

東京都では、賃貸住宅紛争防止条例の施行に併せて「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を作成しています。
 
ガイドラインは、建物価値の減少や原状回復の考え方などを明文化しており、賃貸借トラブルを防ぐ役割が期待されています。

建物価値の減少の考え方

建物は年数の経過とともに劣化し、価値も減少していきます。ガイドラインでは、一定期間建物や部屋を借りた場合について、貸主負担となる部分と借主負担となる部分について以下のように定めています。

貸主負担

・経年変化:建物・設備等の自然的な劣化・損耗等
・通常損耗:借主の通常の使用により生ずる損耗等

借主負担

上記以外の損耗(借主の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗)

(出典:東京都住宅政策本部「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン 第4版」
 
借主負担となる損耗として、タバコによる畳の焼け焦げや引越し作業で生じた傷、結露を放置したために拡大したシミやカビなどが挙げられます。

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賃貸住宅の価値(建物価値)に関する判例等の考え方

(出典:東京都住宅政策本部「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン 第4版」

原状回復の考え方

原状回復とは、借主の故意・過失や善管注意義務違反など、借主の責任によって生じた損耗や傷などを退去時に復旧することです。ただし、借りていた物件を契約締結時とまったく同じ状態に戻す、という意味ではありません。
 
費用の負担は、破損部分の補修工事に必要な施工の最小単位に限定されます。具体的に、貸主負担と借主負担となる部分は以下のとおりです。

貸主負担

・鍵の取替え(破損、紛失のない場合)
・浴槽・風呂釜等の取替え(破損等はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)
・トイレの消毒
・エアコン(借主所有)設置による壁のビス穴、跡
・フローリングのワックスがけ
・クロスの変色(日照など自然現象によるもの)

借主負担

・鍵の破損(不適切使用)、紛失による取替え
・風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等(使用期間中の清掃や手入れを怠った結果、汚損が生じた場合)
・ガスコンロ置き場、換気扇の油汚れ、
スス(手入れを怠ったことによるもの)
・落書き等の故意による床や壁の毀損

(出典:東京都住宅政策本部「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン 第4版」
 
震災による不可抗力の損耗や、借主とは無関係な第三者を原因とする損耗や破損は、借主が負担すべきものではありません。

善管注意義務の考え方

善管注意義務とは、入居者が「善良な管理者」として、居住している住居を管理する義務です。借主は借家に住んでいる以上、入居してから貸主に明け渡すまでの間は、相当の注意を払って物件を使用・管理しなければなりません。
 
善管注意義務に反して、物件を壊したり汚したりした場合、借主は原状回復義務を負います。また、本来は通常損耗に該当する損耗でも、借主が損耗を放置したり手入れを怠ったことが原因で損耗が発生・拡大した場合は、善管注意義務違反となることがあります。

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「善良なる管理者の注意義務」は、略して「善管注意義務」といいます。この義務に反して、入居者が物件を壊したり汚したりなどをした場合、原状回復を求められます

経過年数の考え方

借主の故意や過失、善管注意義務違反などによる損耗が発生し、原状回復義務を負う場合でも、借主が全額を負担しなければならないわけではありません。建物の設備は年数の経過に伴って価値が減少するため、その分を考慮する必要があるのです。
 
経年変化・通常損耗をしている分は貸主の負担となるため、借主は補修費用からその分を差し引いた額を負担します。
 
なお、トラブル防止ガイドラインでは、住居の主な設備の耐用年数について以下のように定めています。

耐用年数

設備

5年

流し台

6年

・畳床
・カーペット
・クッションフロア
・壁(クロス)
・冷暖房用機器(エアコン、ルームクーラー、ストーブ等)
・電気冷蔵庫
・ガス機器(ガスレンジ)
・インターホン

8年

主として金属製以外の家具(書棚、たんす、戸棚、茶ダンス)

15年

・便器
・洗面台等の給排水・衛生設備
・主として金属製の器具・備品

建物の耐用年数を適用

・ユニットバス
・浴槽
・下駄箱等建物に固着して一体不可分なもの

(出典:東京都住宅政策本部「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン 第4版」
 
たとえば、借主が2年間入居して壁・クロスの原状回復費用が6万円の場合、借主負担額は「原状回復費用(6万円)×借主負担額(4/6)=4万円」です。
 
入居していた2年分(2万円)については通常損耗に含まれ、貸主が負担すべきとされます。

国土交通省のガイドラインと賃貸住宅紛争防止条例の違い

賃貸物件に関する全国的なルールを定めたものが、国土交通省のガイドラインです。
 
国土交通省のガイドラインは、主に原状回復に関する問題に焦点を当てており、賃貸借契約の当事者(貸主と借主)に向けた内容となっています。ガイドラインに法的拘束力はなく、あくまでも指針として機能しています。
 
一方、東京都内の居住用賃貸住宅に適用される賃貸住宅紛争防止条例は、宅地建物取引業者に対して書面での説明義務を課しているため、規制として機能しています。条例であるため法的拘束力があり、違反した宅地建物取引業者は知事から指導や勧告、公表などの措置が取られる可能性があります。
 
また、原状回復だけでなく、入居中のマナーや家賃滞納など、広範な問題を扱っている点も賃貸住宅紛争防止条例の特徴です。

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賃貸住宅トラブル防止ガイドラインでは、トラブル防止策として入居時の物件状況確認書を作成し活用することが提案されています

まとめ 

東京都内の賃貸物件を取り扱う不動産会社は、東京都の賃貸住宅紛争防止条例、通称「東京ルール」を遵守する必要があります。このルールでは、不動産会社は入居者に対して、原状回復の基本的な考え方や賃借人の負担内容などについて書面で説明することが義務付けられています。
 
会社としての信頼を失う事態を防ぐだけでなく、入居者間とのトラブルを防ぐためにも、条例の理解は欠かせません。
 
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柴田 充輝
柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。保有資格はFP1級・社会保険労務士・行政書士・宅建士。金融メディアや不動産メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆経験がある。自身でも株式投資や不動産投資を行い、実体験に基づく質の高い情報の提供と、読者にとってわかりやすい執筆を心がけている。本業のかたわら、FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。

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