不動産コンサルティングサービスの普及に向けた地域WG登録制度がスタート
2024(令和6)年11月、不動産コンサルティングサービスの普及を目的とした、「地域ワーキンググループ(地域WG)」の登録制度がスタートしました。
これまでは、媒介業務以外の不動産コンサルティング業務に関する内容や報酬について明確な規定がありませんでした。
そこで、2024年6月に「不動産業による空き家対策推進プログラム」が発表されたのを機に、コンサルティング業務を行う場合、媒介業務とは別に報酬を受けられることが明確化されました。
全国的に空き家・空き地の増加が課題となるなか、空き家・空き地の解消を進めるために、宅地建物取引事業者が、金融機関や士業と連携しながら、媒介業務以外の不動産コンサルティング業務を提供することが求められているといえます。
この記事では、消費者に信頼される不動産コンサルティングサービスの普及を促進するための「地域ワーキンググループ(地域WG)」の登録制度について、活動内容や登録要件などを解説します。
目次[非表示]
地域ワーキンググループ(地域WG)登録制度の背景
全国的に年々増え続ける空き家・空き地の削減を目指して、2024年6月に「不動産業による空き家対策推進プログラム」が発表されました。
このプログラムの中には、空き家流通のビジネス化を支援する施策の一つとして、「媒介業務に含まれないコンサルティング業務の促進」が盛り込まれました。
具体的には、媒介報酬規制の適用範囲の明確化や不動産コンサルティングマスターの検索システムの創設など、空き家に関する不動産コンサルティング業務を促進するための内容となっています。
これを踏まえ、国土交通省の支援のもと、(公財)不動産流通推進センターは、不動産コンサルティングに係る活動を実践する団体を「不動産コンサルティング地域ワーキンググループ(地域WG)」として登録する制度を創設しました。
2024年11月8日に登録が開始され、すでに13団体が登録されています(2025年1月時点)。
空き家の増加が社会課題となる一方、不動産活用が期待される宅建業者が減少傾向にあり、担い手が不足することが予想されています。不動産業による空き家対策推進プログラム 資料より
(出典:国土交通省 不動産業による空き家対策推進プログラム~地域価値を共創する不動産業を目指して~)
良質な不動産コンサルティングサービスを推進するための体制
続いて、不動産コンサルティング地域ワーキンググループの体制や活動内容などについて紹介します。
推進体制の概要~地域WGと全国不動産コンサルティングフォーラム~
制度の全体像としては、公認不動産コンサルティングマスターを核とした「不動産コンサルティング地域ワーキンググループ」を国土交通省や不動産流通推進センターが支援・推進する体制が取られています(下図参照)。
(出典:公益財団法人 不動産流通推進センター「地域ワーキンググループを募集」)
また、実務的なノウハウの共有などを目的に、年に一度、不動産流通推進センターが主催する「全国不動産コンサルティングフォーラム」(2025年5月に第1回大会を実施予定)が開催される予定です。
全国不動産コンサルティングフォーラム開催概要は、以下のとおりです。
・優良コンサルティング事例の紹介
・地域WG活動の発表および表彰
・コンサルティングサービス普及のための課題や提言に関するパネルディスカッション
・地域WGの活動状況や今後の取り組みなどの情報提供
・ノウハウ共有やビジネスマッチングの機会提供のための交流会
全国のコンサルティング事例やノウハウを登録団体間で共有するとともに、団体間のネットワークを構築することで、コンサルティングに関するノウハウの蓄積や新たな不動産会社の参入支援につなげる狙いがあります。
また、一般消費者に向けて積極的に情報発信を行うことで、不動産コンサルティングサービスに対する認知度を向上させ、信頼されるサービスの普及を図ります。
媒介業務に含まれないコンサルティング業務の促進
(出典:国土交通省 不動産業による空き家対策推進プログラム~地域価値を共創する不動産業を目指して~)
地域ワーキンググループの活動内容
地域ワーキンググループの活動内容は次のとおりです。
・不動産コンサルティングの事例やノウハウを共有する活動
・⼀般消費者に対する不動産の利活用に関する相談
・地⽅公共団体などの要請・協定などに基づき⾏う活動
・不動産コンサルティングに係る普及・啓蒙活動
・地域における不動産コンサルティングサービスの推進に貢献する公益的な活動
(出典:国土交通省「不動産コンサルティング地域ワーキング・グループ(「地域 WG」)について」)
一般消費者に対する不動産の利活用に関する相談業務は、不動産コンサルティングマスターもしくは宅地建物取引士などの有資格者が実施することとされています。
地域ワーキンググループへの支援
登録を受けた地域ワーキンググループは、国土交通省や不動産流通推進センターから次のような支援を受けて活動を行います。
・地域WGの活動に対する後援名義の付与
・地域WG間情報交換等のための専⽤サイトの設置(令和7年1⽉開設予定)
・国⼟交通省や(公財)不動産流通推進センターからの情報提供
・地域WGの活動に対する表彰
・「全国不動産コンサルティング・フォーラム」への参画
(出典:国土交通省「不動産コンサルティング地域ワーキング・グループ(「地域 WG」)について」)
国や(公財)不動産流通推進センターの後援を明記して活動することで、一般消費者に対して、不動産コンサルティングサービスの信用性や信頼性が担保されることが期待できます。
また、2025(令和7)年1月には、地域のワーキンググループ間での情報交換のための専用サイトの開設が予定されています。
参照:公益財団法人 不動産流通推進センター「地域ワーキンググループを募集」
地域ワーキンググループへの登録申請について
地域ワーキンググループの登録対象となる組織・団体や要件について紹介します。
登録申請の対象となる組織・団体
登録申請の対象となる組織・団体は次のとおりです。
①ブロックまたは都道府県の不動産コンサルティング地⽅協議会
②地域の不動産業団体(47都道府県の協会、本部・⽀部を含む)
③複数の公認不動産コンサルティングマスターで構成される協会などの社団法⼈またはNPO法⼈
④そのほか①~③に準ずる組織・団体で不動産流通推進センターが認めるもの
なお、地域ワーキンググループは、活動エリアでの独占的地位を有するものではないため、同一地域で複数の地域ワーキンググループが活動しても問題ありません。
詳細は不動産流通推進センター「地域ワーキング・グループ登録制度のご案内」ページを参照ください
(出典:不動産流通推進センター 地域ワーキング・グループ登録制度のご案内)
登録要件
組織・団体が登録する場合、地域ワーキンググループの業務責任者となる公認不動産コンサルティングマスター1名以上の届出が必須です。
また、登録対象となる組織・団体に準ずる組織・団体として登録する場合、5名以上の公認不動産コンサルティングマスターで構成されていなければならず、不動産会社単体での登録はできません。
登録団体は、年1回、実施したコンサルティング事例を含む活動報告を提出する必要があります。
まとめ
全国的に空き家・空き地問題が深刻化するなか、不動産会社には、媒介業務だけでなく不動産の利活用をサポートするコンサルティングサービスの提供が求められています。
一方で、国土交通省の調査では、空き家・空き地を取り扱う際の課題として、およそ6割の不動産会社が収益性の低さを挙げています。
不動産会社が媒介業務とは別に提供する不動産コンサルティングサービスは、空き家・空き地の取り扱いにおける収益性の課題を解決する手段の一つにもなり得るものです。
とはいえ、空き家・空き地に関するコンサルティングサービスの業務内容は、該当の空き家・空き地の利活用に向けた課題整理、相続手続きの支援など多岐にわたるため、地域ワーキンググループ登録制度の活用を検討してみてもよいでしょう。
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