第三次国土形成計画の内容は? 背景から重点テーマまでわかりやすく解説
2023(令和5)年7月28日、総合的・長期的な国土づくりの方向性を定める「第三次国土形成計画」が閣議決定されました。人口減少や災害リスク、国際情勢といった課題を踏まえた本計画には、具体的にどのような内容が含まれているのでしょうか。
本記事では、第三次国土形成計画策定の背景から、重点テーマとしてどのような内容が盛り込まれているのかをわかりやすく解説します。自社の事業に関係するキーワードがないか、確認してみましょう。
目次[非表示]
- 1.国土形成計画とは
- 1.1.国土利用計画との違いは?
- 2.第三次国土形成計画の背景
- 3.第三次国土形成計画で目指す国土の姿
- 4.国土構造の基本構想
- 4.1.重点テーマ①「地域生活圏」の形成
- 4.2.重点テーマ②持続可能な産業の構造転換
- 4.3.重点テーマ③グリーン国土の創造
- 4.4.重点テーマ④人口減少下の国土利用・管理
- 5.国土形成計画は今後10年の大きな方向性
国土形成計画とは
はじめに、国土形成計画とはどのようなものなのか、全体像から確認してみましょう。国土形成計画は、「国土形成計画法」という法律に基づいて作成されています。この法律は、1950(昭和25)年に制定された「国土総合開発法」が2005(平成17)年に抜本的に改正されたもので、人口減少のなか、国土の質向上や地方分権を反映した国土計画を策定することを目指して定められました。
国土形成計画の基本理念として、自然的・経済的・社会的および文化的諸条件を維持向上させるための国土の形成に関する施策を適切に定めることや、全国的な規模で、または全国的な視点に立って行わなければならない施策の実施が掲げられています。
国土利用計画との違いは?
また、国土形成計画と似たものに「国土利用計画」があります。これは「国土利用計画法」に基づく計画で、「地域全体の利益を実現する最適な国土利用・管理」を基本方針に、持続可能で自然と共生した国土利用・管理を目指すものです。それぞれ別の法律に基づく2つの計画ですが、両者は別個ではなく、一体のものとして定めることとされています。
国土交通省 第三次国土形成計画ポスター
(出典:国土交通省 第三次国土形成計画)
第三次国土形成計画の背景
第三次国土形成計画は、どのような背景を踏まえて策定されたのでしょうか。将来ビジョンを「時代の重大な岐路に立つ国土」と表現し、大きく3つの観点が挙げられています。
1つ目は、人口減少や巨大災害リスクにより、地域の持続性や安心・安全が脅かされる現状です。2つ目は、コロナ禍を経て、暮らし方や働き方が変化していること。3つ目は、世界における日本の競争力低下やエネルギー・食料分野での海外依存リスクの高まりです。
これらを、日本が直面するリスクであるとともに構造的な変化と捉え、目指す国土の姿や具体的な重点テーマに反映させています。
第三次国土形成計画の背景。地域の持続性、安全・安心を脅かすリスクの高まり
第三次国土形成計画で目指す国土の姿
リスクの高まりや構造変化のなかで、第三次国土形成計画においては新たに目指す国土の姿として、「新時代に地域力をつなぐ国土 ~列島を支える新たな地域マネジメントの構築~」を掲げています。
具体的には、次の3つの国土づくりが示されました。デジタルとリアルを融合させ、地域価値の向上を図る「活力ある国土づくり」、巨大災害や国際情勢に対応する「安全・安心な国土づくり」、森や海の自然と文化を育む「個性豊かな国土づくり」です。これらは、地方への人の流れの創出・拡大を狙いとしています。
この3つの国土づくりに向け、具体的にどのような取り組みを進めるのか、続いては基本構想と重点テーマを解説します。
第三次国土形成計画においては指す国土の姿「新時代に地域力をつなぐ国土 ~列島を支える新たな地域マネジメントの構築~」
国土構造の基本構想
国土の目指す姿を実現するため、広域的な機能分散と連結強化、持続可能な生活圏の再構築による、「シームレスな拠点連結型国土」を基本構想とし、官民連携やデジタル活用、利便性の最適化や縦割り打破といった戦略が示されました。さらに、国土刷新に向けた重点テーマとして掲げられた4つについて、それぞれ確認してみましょう。
重点テーマ①「地域生活圏」の形成
全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を作るため、官民の連携、分野を超えた事業連携、市町村界にとらわれない地域連携による「地域生活圏」の形成を目指します。
1時間圏人口10万人以上の地域を1つの目安に、自動運転やオンライン教育、遠隔医療といったデジタル活用を市町村を超えて実施し、リアル空間の質を向上させるイメージが示されました。このような取り組みにより、人口減少による生活機能の低下といった地域課題を解決しようとしています。
「地域生活圏」の形成
重点テーマ②持続可能な産業の構造転換
産業構造の転換として、半導体などの成長産業の全国分散立地と、既存コンビナートなどの基幹産業拠点の強化・再生を目指します。
半導体や蓄電池といった成長産業の国内生産拠点を強化できるよう、産業の立地を支えるインフラを機動的に整備することや、産業用地の確保を円滑に進めることが掲げられました。
また、臨海コンビナートなど、CO2を多く排出する産業へのGX成長投資や巨大災害へのリスク対応についても、持続可能な産業の構造転換のひとつとして言及されています。
重点テーマ③グリーン国土の創造
グリーン国土の創造と題しては、健全な生態系の保全・再生、カーボンニュートラルの実現を図る地域づくりが示されました。
生態系保全については、部分的な取り組みではなく、森・里・まち・川・海のつながりを確保した、広域的な生態系ネットワークの形成に取り組みます。また、カーボンニュートラル実現に向けて、脱炭素先行地域の創出や、くらし・まちづくり・交通・インフラなどあらゆる分野におけるグリーン化の推進が期待されています。
重点テーマ②持続可能な産業の構造転換、重点テーマ③グリーン国土の創造
重点テーマ④人口減少下の国土利用・管理
人口減少や災害リスクが懸念されるなか、国土の最適かつ安全・安心な利用・管理も重点テーマとされています。
所有者不明土地や空き地の利活用を円滑にすること、荒廃農地や手入れをされていない森林の発生防止や解消など、国土を有効に使うことが課題です。併せて、地域の持続性につながる産業集積に向け、土地利用転換の必要性にも言及しています。
また、災害ハザードエリアにおける開発を抑制し、安全な地域へ居住誘導することで災害リスクに対する備えも目指しています。
国土刷新に向けた重点テーマ人口減少下の国土利用・管理
国土形成計画は今後10年の大きな方向性
重点テーマの中に、自社の事業と関連するキーワードは見つけられたでしょうか。第三次国土形成計画は、2050年さらにその先も見据えた、今後約10年間の計画として定められています。そのため、不動産業界における今後の長期トレンドを考える手がかりにもなるといえるでしょう。
国土形成計画の詳細については、国土交通省のWebサイトで確認できるため、自社と関係しそうなテーマから情報収集してみましょう。事業を長期的に考える場面において、特に役立つのではないでしょうか。
国土交通省 第三次国土形成計画(全国計画)(令和5年7月28日閣議決定)
今後、国土交通省は国土形成計画(全国計画)および国土利用計画(全国計画)の具体化に向けて、取組を進めていくとしています。詳細は国土交通省 第三次国土形成計画(全国計画)(令和5年7月28日閣議決定)を参照ください
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