闇バイトの被害から人命と住居を守る対策は? 防犯力を高めるための助成金も紹介
昨今は、困窮者や若者などが犯罪の実行役として雇われ、強盗や傷害事件を起こす「闇バイト」が社会的な問題となっています。こうした状況の中で安心して生活するためにも、物件の防犯力を高めることが欠かせません。一戸建てだけでなく、マンションやアパートなどの共同住宅でも対策は必須です。
賃貸管理を請け負う不動産会社は、物件や人命を守るためにも、防犯対策を検討してみましょう。
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侵入窃盗・侵入強盗が増加中!
警察庁の資料によると、侵入強盗の認知件数は2003(平成15)年を最多として2004(平成16)年から減少傾向にありましたが、2023(令和5)年は414件と、前年比42.8%の増加となりました。
住宅を対象とした侵入強盗に絞って見ると、2005(平成17)年から2021(令和3)年まで減少傾向にありましたが、2023(令和5)年は152件と、前年比17.8%の増加となりました。
夜間や不在時に侵入するだけでなく、宅配などの配送人を装って住宅に押し入る悪質な手口も増えています。昨今はこうした闇バイトによる強盗がニュースで取り上げられる機会が多く、防犯対策は急務といえるでしょう。
LIFULL HOME'Sが実施した直近の調査では、住宅購入意向者の約8割が直近1年間で「防犯への意識が高まった」と回答しています。
LIFULL HOME'S住宅購入検討者の防犯意識調査
(出典:来年の住宅トレンドワードを解説!『LIFULL HOME'S 2025年トレンド発表会』を開催)
一戸建てだけでなく共同住宅も防犯対策が急務
一般的に、部外者が侵入しやすい一戸建てのほうが侵入強盗の被害に遭いやすい傾向にあります。しかし、「共同住宅なら大丈夫」というわけではありません。
2023(令和5)年における侵入強盗の認知件数の割合を見ると、共同住宅(3階建て以下)が8.7%、共同住宅(4階建て以上)が8%でした。
このように、実際に4階建て以上の共同住宅でも侵入強盗の被害が発生しているため、共同住宅においても迅速な防犯対策が必要だといえるでしょう。
エントランスがオートロックでも、入居者や配送人に紛れ込んで、共同住宅内部に侵入される可能性があります。なお、警察庁が公表しているデータによると、一戸建て住宅や共同住宅では、いずれも「窓」と「表出入り口」からの侵入が全体の7割以上を占めています。
ほかにも、ガラス破りや、隠しておいた合鍵が発見されて家の中に侵入されるケースもあるようです。そのため、「そもそも共同住宅内に侵入させない」ための対策や工夫を施しましょう。
侵入窃盗における侵入口の構成比(令和5年)。
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%とはなりません。
政府広報オンライン 空き巣や強盗から命と財産を守る 「住まいの防犯対策」より
(出典: 空き巣や強盗から命と財産を守る 「住まいの防犯対策」)
闇バイトから住居と人命を守る対策
戸締りの徹底やガラス破り対策は、基本的に各入居者が行う必要があります。不動産会社としては、入居者に対して以下のような注意喚起を行うとよいでしょう。
● 在宅時でも、出入り口や無人の部屋の窓に鍵をかける
● 訪問者に対しては、不用意にドアを開ける前にドアスコープやインターホンなどで確認する
● 外出先から帰宅した際は、背後や周囲に見知らぬ人がいないか確認する
● 日頃から建物周囲を整理整頓し、侵入されにくい環境を整える
● 玄関をツーロックにしたり窓に補助錠を取り付けたりして、防犯設備を充実させる
● 長期不在にする際は、隣近所にへ声をかけておき、郵便物・新聞などの配達を止める
● 合鍵を家族以外の人に見せない、渡さない
● 必要のない訪問販売ははっきり断る
● 不審な電話は相手にせずすぐに切る
● 建物の周りに不審者がいれば110番通報する
各入居者が防犯意識を高めるだけでなく、近隣住民と良好な関係を築いておけば、抑止力を高められます。共有部分の掲示板に注意喚起のポスターを掲示したり、地域の防犯運動への参加を促したりして、入居者全員の防犯意識を高めるとよいでしょう。
政府広報 防犯対策
侵入を諦めさせるための防犯対策
5分以内に建物に侵入できなければ、約7割の侵入者は侵入を諦めるといわれています。つまり、5分以上破壊行為に耐えられる設備を導入すれば、防犯力を高められるといえるでしょう。
人為的な破壊行為に耐えられる時間を「抵抗時間」と呼び、抵抗時間が5分間以上であることが確認された製品は「防犯性能の高い建物部品(CP部品)」として認定されています。
2024(令和6)年3月末時点では、17種類3,473品目がCP部品として認定されています。具体的には、ドア・錠・サッシ・ガラス・ウィンドウフィルム・雨戸・面格子・窓シャッターなどが対象となっているため、入居者に情報提供するとよいでしょう。
ほかにも、共有部分にセンサーライトや防犯カメラを設置したり、縦格子フェンスなどの簡単に乗り越えられない塀を設置したりすると防犯力を高められます。
特に窓周りからの侵入が多いため、窓シャッターや防犯フィルムなどの対策が有効です
防犯設備を整備するときに利用できる助成金
物件が所在する自治体によっては、防犯設備を整備するときの経費について、一部助成を受けられます。例として、東京都葛飾区が実施している「共同住宅への防犯設備整備助成」について見てみましょう。
目的 |
犯罪を未然に防止するため、共同住宅の共用部に防犯カメラ設置した所有者や管理組合などへ、その費用の一部を助成する |
---|---|
助成率 |
対象経費の2分の1(千円未満切り捨て) |
助成上限額 |
50万円 |
助成対象者 |
次のいずれかに当てはまる方 |
助成対象品用 |
防犯カメラ(設置箇所は敷地内・駐輪場などの共用部) |
申請受付期間 |
2024(令和6)年7月1日(月曜日)から2025(令和7)年2月28日(金曜日) |
(出典:葛飾区「共同住宅への防犯設備整備助成」)
助成を受けるためには、事前に申請書を提出し、区から助成金の交付決定を受けてから防犯カメラを設置する必要があります。交付が決定する前に設置工事に着手した場合、助成の対象外となるため注意しましょう。
ほかの自治体でも、防犯設備を整備するときの費用を一部助成・補助する制度を用意している場合があります。防犯力を高める設備を導入する際には、利用できる助成制度があるか確認してみてください。
まとめ
闇バイトから管理物件の損壊を防ぎ入居者の身体を守るためにも、物件そのものの防犯力を高めることが有効です。共同住宅でも実際に被害が出ている以上、しっかりと対策を検討する必要があります。
各入居者に注意喚起をして防犯意識を高めたり、入居者同士・近隣住民同士で良好な関係を築くことも効果的です。自治体によっては、防犯設備を整備するときに利用できる助成金を用意しているため、活用を検討するとよいでしょう。
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