マイナンバーが必要な不動産取引とは?不動産会社の対応方法や注意点を解説

不動産取引において、マイナンバーの取扱いは重要な業務です。マイナンバー制度が開始されて以降、不動産会社は支払調書の作成時に、相手方のマイナンバーを記載することが求められています。
本記事では、不動産会社が知っておくべきマイナンバー制度の基本から、実際の取引における具体的な対応方法までを解説します。
そもそもマイナンバー制度とは
マイナンバー制度は、日本国内に住民票を有するすべての個人に12桁の個人番号(マイナンバー)を割り当てる制度です。社会保障・税・災害対策の3分野で、個人情報を効率的に管理・活用する目的があります。
不動産取引においてマイナンバーが必要となる主な理由は、税務管理の適正化です。国税庁は、不動産の売買や賃貸借に関する支払調書にマイナンバーの記載を義務付けることで、不動産所得の正確な把握と適正な課税の実現を目指しています。
不動産会社は、個人番号関係事務実施者として、法令に基づいた適切な取得・管理・廃棄の義務を負います。マイナンバー制度は、取引の透明性確保・マネーロンダリングの防止・反社会的勢力の排除といった効果もあり、不動産業界全体の健全化にもつながる重要な仕組みです。
マイナンバーの提出が必要な不動産取引
不動産会社が取引先からマイナンバーの提供を受ける必要があるケースは、法令により定められています。具体的にどのような取引の際にマイナンバーが必要となるのか、解説します。
不動産を売るとき
不動産の売却においてマイナンバーの確認が必要となるのは、買主が「法人または不動産業者である個人」であり、同一の取引先から受け取る売買代金の金額の合計が年間100万円を超える場合です。
複数回にわたる取引がある場合には、年間の合計額で判断します。たとえば、同じ相手に対して年2回、それぞれ60万円で物件を売却した場合、1回当たりは100万円以下です。しかし、年間合計額は120万円となるため、支払調書の作成とマイナンバーの取得が必要です。
不動産を貸すとき
不動産の賃貸においては、借主が「法人または不動産業者である個人」であり、受け取った家賃・地代などの金額が年間15万円を超える場合に、マイナンバーの確認が必要です。
たとえば、所有する不動産を法人に月額2万円で賃貸している場合を考えてみましょう。年間の賃料は24万円となり、15万円を超えるため、貸主は「不動産の使用料等の支払調書」を作成し、そこにマイナンバーを記載しなければなりません。
マイナンバーの提供を受けた不動産会社がやるべきこと

取引相手のマイナンバーを取得した不動産会社は、個人番号関係事務実施者として、法令に基づいて適切な処理を行う責任があります。マイナンバーは重要な個人情報であるため、慎重に取り扱わなければなりません。
マイナンバーの提供を受けてから税務署に支払調書を提出した後まで、不動産会社がやるべき業務フローの例は、以下のとおりです。
- マイナンバーを取得した際の本人確認記録を作成する
- 支払調書を作成する(マイナンバーの記載欄に12桁の個人番号を正確に転記する)
- 原則として翌年1月31日までに所轄の支払調書を税務署に提出する
- 施錠可能なキャビネットやパスワード管理されたシステムなどで書類を7年間保管する
なお、不動産取引の際に収集したマイナンバーの利用は、支払調書に記載する目的に限定されています。目的以外での利用は法令違反となる可能性があるため、注意しましょう。
マイナンバーの提供を受けるときの注意点
番号法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)では、マイナンバーの取得時に厳格な本人確認を義務付けています。これを怠った場合には法令違反となる可能性があるため、注意が必要です。
本人確認と番号確認を慎重に行う
マイナンバーの提供を受ける際、不動産会社は「番号確認」と「身元確認」を確実に行わなければなりません。
・番号確認:提供されたマイナンバーが正しい番号であることの確認
・身元確認:マイナンバーの提供者が本人であることの確認
両方を確認することで、なりすましや番号の誤記を防げます。確認方法は複数あり、代表例は以下のとおりです。
マイナンバーカードによる確認 | マイナンバーカードのICチップを読み取り、番号確認と身元確認を行う |
|---|---|
通知カード+写真付き身分証明書(※) | 通知カードでマイナンバーを確認し、写真付き身分証明書で身元を確認する |
個人番号記載の住民票+写真付き身分証明書※ | 住民票でマイナンバーを確認し、写真付き身分証明書で身元を確認する |
※写真のない身分証明書の場合は、2種類以上必要
番号確認と身元確認を行った記録として、確認日時・確認方法・確認書類の種類などの詳細を残しておきましょう。
安全管理措置を行う
マイナンバーは特定個人情報として、法令で定められた目的以外での取得・利用・他人への提供が禁じられています。
「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」は、個人番号利用事務実施者に対して、安全管理措置を講じることを義務付けています。違反した場合、最大で4年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性があるため、注意が必要です。
実務の場面においては、以下のような安全管理措置が考えられます。
・マイナンバー取扱責任者および事務取扱担当者を明確に定める
・取扱規程や事務フローを文書化して全従業員に周知徹底する
・情報漏えい事案が発生した場合の報告連絡体制を整備する
・取扱担当者に対する定期的な教育・研修を実施する
・マイナンバーを取り扱う従業員を必要最小限に限定する
・マイナンバーを取り扱う区域を明確にし、入退室管理を実施する
・書類は施錠可能なキャビネットに保管し、鍵の管理を徹底する
・電子データは暗号化し、アクセス権限を適切に設定する
・ウイルス対策ソフトの導入と定期的な更新を実施する
国土交通省は通達によって、マイナンバーカードを本人確認書類として利用する場合、個人番号が記載された裏面の写しをとらないよう注意喚起しています。万が一裏面の写しをとってしまった場合は、個人番号部分に復元できない程度のマスキングを施すか、復元できない形で廃棄しましょう。
マイナンバーの提出を拒否されたときの対応
不動産取引の現場においては、相手からマイナンバーの提供を拒否されるケースがあるかもしれません。
結論から言うと、支払調書にマイナンバーの記載がなくても税務署は当該書類を受理するため、そのままの状態で提出できます。マイナンバーの提供を拒否された場合、不動産会社に過失はないため、罰則は科されません。
マイナンバーの記載がない支払調書を提出する際に、相手の事情で取得できていない旨を伝えましょう。また、義務違反でないことを明確にするためにも、マイナンバーの提供を求めた事実を社内で記録・保存しておきましょう。
まとめ
不動産を売る際や貸す際、不動産会社は相手方からマイナンバーを取得しなければなりません。取得の際には、番号確認と身元確認を徹底し、なりすましや誤記を防ぎましょう。
取得したマイナンバーは、特定個人情報として厳格な安全管理措置の下で管理しなければなりません。法律に違反すると罰則を科される可能性があるため、会社全体で管理体制を構築することが大切です。
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