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「地中埋設物」とは? 契約不適合責任の事例からトラブル防止策、調査方法まで解説

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土地売買の仲介を行うにあたり、外から見えない「地中埋設物」は、取引後に深刻なトラブルになりかねない重要な注意点です。

解体工事の際に残されたガラ(建築廃材や産業廃棄物)や浄化槽などが後から見つかれば、売主が契約不適合責任を追及されるだけでなく、仲介した不動産会社も説明義務違反に問われるリスクがあります。

このような事態を避けるには、不動産会社が主体となり、事前調査や契約書への明記、免責特約の設定といったリスク対策を講じることが重要です。

本記事では、地中埋設物について、契約不適合責任が問われるケースや実務で役立つトラブル防止法などを解説します。

地中埋設物とは

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重機による地中埋設物の撤去の様子

「地中埋設物」とは、土地の地下に埋まっている廃棄物や障害物全般のことを指します。具体的には、解体工事で出た廃材やコンクリート塊、建物の基礎部分、不法に埋められたゴミ、浄化槽や排水管などの解体前の建物で使用されていた設備などがあり、種類は多岐にわたります。

なかには、悪質な解体業者が本来適切に処分すべき廃材を埋めてしまうケースもあり、売主自身に覚えがない埋設物が出てくることもあり得るため注意が必要です。

なお、現在も機能している水道管や建物の支持に必要な基礎杭などは、重要事項として説明義務はあるものの、撤去の対象とならないのが一般的です。

地中埋設物が契約不適合責任に問われるケース

土地の売買契約では、引き渡された目的物が契約内容に適合しない場合、売主は契約不適合責任を負います(民法562条以下)。

それでは、地中埋設物が土地の「瑕疵(かし)」と見なされ、売主が責任が問われるのはどういった場合なのでしょうか。ここでは、過去の裁判例のほか、不動産会社が注意すべき説明義務違反のケースについても解説します。

地中埋設物が土地の「瑕疵」に当たる基準

どのような埋設物が土地の「瑕疵」と見なされるのかについて、以下の裁判例が参考になります(2013年7月12日大阪高裁判決)。

「土地の売買において、地中に土以外の異物が存在する場合一般が、直ちに土地の瑕疵ということができないことはいうまでもないが、その土地上に建物を建築するについて支障となる質・量の異物が地中に存在するために、その土地の外観から通常予測され得る地盤の整備・改良の程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合には、宅地として通常有すべき性状を備えないものとして土地の瑕疵になると認めるのが相当である」

この裁判例のポイントは次の点です。

  • 単に地中に異物があるだけでは、直ちに土地の瑕疵とはいえない
  • 建物の建築に支障をきたし、通常想定されるレベルを超える除去工事などが必要となる場合に、瑕疵と判断される可能性がある

つまり、土地の瑕疵に当たるか否かは、埋設物の質や量、買主が受ける不利益の程度などが大きな判断基準になるといえます。

建物解体に伴う地中埋設物について売主の撤去義務が認められた裁判例

過去の裁判例には、売買契約書に「売主は、旧建物、工作物および立木等の一切を解体・撤去したうえで、土地を引き渡す」と定められていたにもかかわらず、解体後の土地にガラが残されていた事案で、売主の損害賠償責任(撤去義務)を認めたものがあります(2020年11月26日東京地裁判決)。

この判決でポイントとなったのは以下の点です。

  • 買主が土地を購入する目的である「住宅建築」について、売主も認識できた
  • 契約上の「解体・撤去」の趣旨は、買主が問題なく建物を建てられる状態にすることである
  • 地上の建物などだけでなく、解体で生じた地中埋設物も撤去対象に含まれる

これは、契約条項に「解体・撤去」の文言があれば、地中の廃材にまで撤去義務が及ぶ可能性があることを示す重要な裁判例といえます。

地中埋設物における不動産仲介会社の説明義務違反の可能性

地中から廃棄物や構造物が見つかった場合、売主の契約不適合責任だけでなく、不動産仲介会社も責任を問われる可能性があります。

まず、不動産会社が埋設物の存在を把握していながら、故意に説明せず取引を進めた場合は、重要事項説明義務違反です。

また、実際に埋設物の有無を確認できていなくても、「埋設物があるかもしれない」という合理的な疑いを持てる状況にある場合、不動産会社は調査を行い、買主にその可能性を伝える義務があります。

たとえば、過去に工場や倉庫として利用されていた土地や、建物解体後間もない土地については、地中に廃材や設備が残されている可能性を疑うのが自然です。こうした可能性を認識しながらも放置した場合には、調査義務・説明義務違反に問われる可能性があります。

地中埋設物に関する契約トラブルを防ぐ方法

ここでは、地中埋設物に関する契約トラブルを未然に防ぐ方法について紹介します。

売買契約前に地中埋設物を調査・撤去する

地中埋設物に関するトラブルを防ぐ最も確実な方法は、契約前に調査を実施し、埋設物が発見された場合は撤去してから引き渡すことです。これにより、地中埋設物に関する契約上のリスクをほぼゼロにできます。

売主には、調査・撤去費用がかかりますが、地中埋設物のリスクがない土地として広く買主を募集することも可能です。

調査内容を売買契約書に明記する

調査によって埋設物があることが判明している場合に、その内容を売買契約書、重要事項説明書に記載し、買主に容認してもらったうえで契約する方法もあります。

たとえば、「本物件の地中には、調査の結果、旧建物のコンクリート製の基礎が残置されています」といった形で具体的に告知し、その分、売買価格の減額などで調整するのが一般的です。

価格交渉や契約成立への影響はあるものの、売主は引き渡し後の責任追及を避けられます。

売買契約書に免責の特約を設ける

状況的に地中埋設物がある可能性は低いと判断できる場合などは、土地の調査を実施しないこともあります。

この場合、調査未実施であること、ならびに地中埋設物の存在は不明であり、売主は責任を負わないことを売買契約上の特約とすることで、トラブルを回避する方法があります。

【特約の記載例】

本物件の地中埋設物の存在については不明であり、将来発見された場合でも売主は責任を負わない

ただし、過去の裁判例では、売主が瑕疵の存在を知りながら買主に告げなかったことなどを理由に、免責特約が無効と判断されたケースもあります。特約の設定にあたっては、弁護士に相談するなど、慎重に進める必要があります。

地中埋設物を調査する方法

最後に、地中埋設物の調査方法を紹介します。下表のとおり、机上調査からレーダー調査、試掘調査まで、いくつかの方法があります。

調査方法
特徴
費用相場
机上調査
設計図や竣工図、古地図、登記簿謄本、地歴などからリスクを推測する方法
数万円~10万円
レーダー調査
地中に電波を照射し、反射波を解析して地中の状態を可視化する非破壊検査
10万~30万円
ボーリング調査
地面にボーリング穴を掘り、サンプラーと呼ばれる部品を挿入して地盤の強度や埋設物を調査する方法
20万~50万円

試掘調査

埋設物の存在が濃厚な場合に、重機で掘削して確認する方法

20万~50万円

調査実施の有無や結果は、必ず重要事項説明書・売買契約書に反映させ、埋設物が見つかった場合の取扱い(撤去や免責など)を明記することが重要です。

まとめ

土地の外観からは判断できない地中埋設物は、売買取引後に売主の契約不適合責任や不動産会社の説明義務違反などの重大なトラブルに発展するリスクをはらんでいます。

こうしたトラブルを防ぐには、まず「地中埋設物がどういった場合に土地の瑕疵となりうるか」の理解が重要です。そのうえで、不動産会社として必要な調査を行い、重要事項説明書・売買契約書に反映することが欠かせません。

さらに、取引時の状況に応じて、売主の免責特約の設定を設けるなど、契約条件を調整することも大切です。

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吉満 博
吉満 博
不動産コンサルタント・ライター。株式会社あつみ事務所 代表取締役。不動産の購入から売却まで出口戦略、資産性を踏まえ、長期の視点で不動産コンサルティング・売買仲介サービスを提供する。また、購入・住み替え前のライフプランニングから、資金計画や住宅ローン、保険の見直しなど、お金に関するセカンドオピニオンを提供。不動産・住宅ライターとして、不動産メディアを中心に、これまでの建築設計、不動産売買の経験を踏まえた記事執筆をおこなう。

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