不動産業の開業に届出は必要?必要書類や提出のタイミングを解説
これから不動産業を開業しようとしている方のなかには、「開業届は必ず提出する必要があるのだろうか」「届出はいつ提出すればよいのだろう」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、不動産業の開業における開業届の必要性や、開業届を提出するタイミング、必要な書類について解説します。
目次[非表示]
- 1.不動産業の開業に開業届は必要?
- 2.不動産業の開業において提出する書類と提出のタイミング
- 2.1.個人事業主として開業する場合
- 2.1.1.①個人事業の開業・廃業等届出書
- 2.1.2.②所得税の青色申告承認申請書
- 2.1.3.③青色事業専従者給与に関する届出書
- 2.2.法人を設立する場合
- 2.2.1.①法人設立届書
- 2.2.2.②青色申告の承認届書
- 2.2.3.③給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
- 3.まとめ
不動産業の開業に開業届は必要?
不動産業の開業に開業届は必要です。ただし、事業形態によっては必要でない場合もあります。
新たに不動産業を開業する際、個人事業主と法人の2つの事業形態があります。個人事業主として独立開業する場合は、『個人事業の開業・廃業等届出書』を税務署に提出するだけで開業できます。
一方、法人の場合は『個人事業の開業・廃業届出書』の提出は不要ですが、『法人設立届出書』の提出が義務づけられています。加えて、定款の作成・認証や登記申請手続きなども必要となるため、開業までに時間を要することが一般的です。
(出典:国税庁『個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき』)
不動産業の開業において提出する書類と提出のタイミング
不動産業を開業するまでの一般的な流れは、以下のとおりです。
▼不動産業の開業の流れ
1 .事務所を準備する
2.開業届を提出する
3.宅地建物取引業免許を申請する
4.宅地建物取引業協会や不動産保証協会へ加入する
ここからは、個人事業主と法人のそれぞれのケースについて、開業の届出をする際の必要書類と提出のタイミングについて解説します。
開業までの具体的な流れについてこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
個人事業主として開業する場合
個人事業主として開業する場合は、前述した『個人事業の開業・廃業等届出書』のほかに、所得税の申告に関する書類を提出することをおすすめします。この書類を提出することで青色申告特別控除を受けたり、従業員として家族を雇った場合の給与を経費として計上できたりします。
▼個人事業主として開業する場合の提出書類
届出書(フォーマット) |
提出期限 |
提出の必要性 |
---|---|---|
個人事業の開業・廃業等届出書 |
事業の開業日から1ヶ月以内 |
必須 |
所得税の青色申告承認申請書 |
事業の開業日から2ヶ月以内 |
推奨 |
青色事業専従者給与に関する届出書 |
事業の開始日や、新たに青色事業専従者を雇用する日から2ヶ月以内 |
推奨 |
各届出書、申請書のフォーマットは税務署に設置されているほか、国税庁のWebサイトからダウンロードが可能です。
以下では、それぞれの届出書について解説します。
①個人事業の開業・廃業等届出書
個人事業主として新たに事業を始めるにあたって、『個人事業の開業・廃業等届出書』を所轄の税務署に提出(持参または郵送)する必要があります。提出期限は、開業した日から1ヶ月以内と定められています。
届出を行う際は、本人確認としてマイナンバーを確認できる書類の提示(送付の場合はコピーの提出)が求められます。
(出典:国税庁『個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき』『[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続』)
②所得税の青色申告承認申請書
個人事業主として開業届を提出すると、確定申告の際に所得税の控除が受けられる青色申告ができるようになります。
青色申告をする場合は、『青色申告承認申請書』を所轄の税務署に提出(持参または郵送)します。提出しない場合には白色申告となるため注意が必要です。
また、青色申告承認申請書の提出期限は、開業した日から2ヶ月以内です。ただし、提出日がその年の1月15日より前の場合には、申告する年の3月15日までに提出する必要があります。
(出典:国税庁『個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき』『[手続名]所得税の青色申告承認申請手続』)
③青色事業専従者給与に関する届出書
不動産業の開業後、親族経営で給与を支払う場合には、その給与を必要経費に算入するための『青色事業専従者給与に関する届出書』を提出(持参または郵送)するのがおすすめです。この届出を提出することにより、通常では経費として計上できない親族への給与を経費にでき、節税につながります。
届出書は、事業の開始日もしくは新たに青色事業専従者を雇用するときから2ヶ月以内に提出することが定められています。
ただし、青色事業専従者として給与を経費に算入するには、以下の要件を満たしている必要があります。
▼青色事業専従者の要件
- 青色申告者と生計を共にする配偶者その他の親族であること
- その年の12月31日現在で15歳以上であること
また、経費に算入できる給与額については、専従者の労働期間や労務の程度、使用人の給与などの状況を踏まえてその金額が相当と認められる場合に限られます。加えて、届出書に記載した金額の範囲内であることも求められます。
(出典:国税庁『個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき』『[手続名]青色事業専従者給与に関する届出手続』)
法人を設立する場合
法人を設立して開業する場合は、『法人設立届書』の提出が義務づけられています。加えて、所得税の申告や給与の支払に関する書類を一緒に提出することをおすすめします。
▼法人を設立する場合の提出書類
届出書(フォーマット・書き方) |
提出期限 |
提出の必要性 |
---|---|---|
法人設立届出書 |
会社設立の日から2ヶ月以内 |
必須 |
青色申告の承認申請書 |
会社設立から3ヶ月以内、もしくは事業年度終了日のいずれか早い日の前日まで |
推奨 |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 |
会社設立から1ヶ月以内 |
推奨 |
これらの届出書、申請書については、税務署に設置されているほか、国税庁のWebサイトからダウンロードできます。
①法人設立届書
法人設立届出書は、普通法人を新たに設立した場合に提出する書類です。
所轄税務署・都道府県税事務所・市町村役場の3ヶ所に提出します。税務署への届出の提出期限は会社設立の日から2ヶ月以内です。都道府県税事務所や市町村役場への提出期限については地域によって異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
また、法人設立届出書を提出する際は、定款や寄付行為、規約の写しを添付する必要があります。
(出典:国税庁『個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき』『[手続名]内国普通法人等の設立の届出』)
②青色申告の承認届書
法人税の確定申告や中間申告を青色申告する場合は、『青色申告の承認届書』の提出が必要です。
会社を設立した日から3ヶ月を経過した日、もしくは事業年度終了日のいずれか早い日の前日までに、所轄の税務署に提出します。
(出典:国税庁『個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき』『[手続名]青色申告書の承認の申請』)
③給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
法人を設立して不動産業を開業した際は、給与の支払いに関する『給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出』を行います。
従業員を雇い入れない場合でも、会社から経営者(自分)に給与(役員報酬)が支払われることになるため提出が必須です。提出期限は、会社を設立した日から1ヶ月以内です。
(出典:国税庁『個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき』『[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出』)
まとめ
この記事では、不動産業開業時の届出について以下の内容を解説しました。
- 開業届の提出義務
- 不動産業の開業において必要な書類と提出のタイミング
不動産業を開業する際、個人事業主として開業するか、法人を設立するかという2つの選択肢がありますが、いずれのケースでも開業届の提出が必要です。そのほか、青色申告や給与の支払いに関する書類についても適宜提出が求められます。
不動産業の開業にあたっては、必要書類と提出期限についてあらかじめ確認しておき、余裕を持って準備することが重要です。
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