不動産鑑定士として独立するには? 成功するために必要な準備
不動産鑑定士は、「不動産価格の鑑定評価」という独占業務を持つ国家資格です。土地や建物の鑑定を行い、適正価格を評価できる技能・知識は、不動産業界のさまざまな場面で重宝されます。
不動産鑑定士には、特定の企業に勤める勤務鑑定士と、自身で事業を営む独立鑑定士という大きく分けて2つのキャリアプランがあります。今回は不動産鑑定士として独立するメリットや注意点、必要な準備などを見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.不動産鑑定士の年収は高い? 統計データから収入面をチェック
- 2.不動産鑑定士として独立することのメリット
- 2.1.定年がない
- 2.2.独占業務がある
- 2.3.初期投資を抑えやすい
- 3.不動産鑑定士として独立するための準備
- 3.1.必要な手続き・必要なもの
- 3.2.事前準備
- 4.宅建士とのダブルライセンスは目指したほうがいい?
- 5.不動産鑑定士の将来性
不動産鑑定士の年収は高い? 統計データから収入面をチェック
まずは、不動産鑑定士の収入面について、統計データから具体的な数字を確認しておきましょう。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」から、職種別の統計データのうち最新(2019年)のものを参照すると、不動産鑑定士の平均月収は49万300円とされています。
ここに賞与や特別給与額などを含めると、平均年収は754万5,900円と計算できます。続いて、平均年収に関するデータも見てみましょう。最新(2023年8月現在においては2021年分)の国税庁「民間給与実態統計結果」を見てみると、全職種の給与所得者の年間平均給与は443万円となっています。
このように、統計データを比較すると、勤務不動産鑑定士の収入は平均を大きく上回ることが分かります。今回は、このデータを踏まえて、独立不動産鑑定士の魅力や特徴について見ていきましょう。
不動産鑑定士として独立することのメリット
データで確認したように、勤務不動産鑑定士も収入という面で見れば、平均を大きく上回る待遇で働けるということが分かります。そのうえで、不動産鑑定士としてあえて独立することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、3つのポイントに分けて解説します
定年がない
勤務不動産鑑定士との違いは、定年がない点にあります。健康である限り、自身の資格と経験を生かして仕事を続けられるため、長きにわたって活躍を見込めるのが独立不動産鑑定士の魅力です。
独占業務がある
不動産鑑定士はその他の資格と比べても、独立がしやすい資格とされています。その理由の一つは、独占業務があることです。
不動産の鑑定評価は資格保有者の独占業務であることから、比較的に安定的な仕事の獲得を見込みやすいのです。また、業務の幅も工夫次第で広げやすく、基本となる「売買・相続における不動産鑑定評価」から「担保物件・公共用地の鑑定評価」「不動産の投資・運用コンサルティング」「土地・建物に関する税金・法務相談」など、さまざまな分野に携わることができます。
このように、「安定的な仕事の機会を得やすい」「創意工夫で業務の幅を広げやすい」のが独立に向いている理由といえるでしょう。
初期投資を抑えやすい
不動産鑑定士が独立に向いているもう一つの理由は、初期投資を抑えやすいという点にあります。仕事をするうえでは、特に高価な設備や機材が必要になるシーンが少なく、単体でも動けるため人件費が多くはかかりません。
支出が抑えられるため、独立による収入アップが見込めるのも大きな特徴といえます。
不動産鑑定士として独立するための準備
不動産鑑定士として独立するためには、実際にどのような準備を行う必要があるのでしょうか。ここでは、事前準備や必要な手続きについて解説します。
必要な手続き・必要なもの
不動産鑑定士として新たに事業をスタートする際には、所定の機関へ登録申請を行う必要があります。事務所の数によって申請場所が異なり、1ヶ所のみの場合は都道府県知事へ、都道府県をまたがって複数設ける場合には国土交通大臣への申請が必要です。
また、個人事業主としてスタートするのであれば、開業から1ヶ月以内に開業届を税務署に提出する必要があります。そのうえで、不動産鑑定士として開業するのであれば、事務所や事務所の備品、パソコンや周辺機器なども用意しなければなりません。
さらに、ゼロからスタートすることを考えれば、開業までに事務所のホームページを立ち上げておくのが理想です。
事前準備
不動産鑑定士としての独立は、必要な申請手続きを行えばすぐに実行可能です。しかし、事業としてきちんと継続していくためには、実際に走り出す前にしっかりと準備を整えなければなりません。
事前準備としてもっとも力を入れるべきなのは、集客方法を検討することです。それには、以下のようなポイントが主要な課題となります。
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不動産鑑定士は、ほかの士業との連携によって仕事が生まれるケースも珍しくありません。そのため、まずは良質な人脈を幅広く築いておくことが独立への第一歩となります。
また、「日本不動産鑑定協会連合会(JAREA)」への加入も、人脈づくりやスキルの向上に役立ちます。そのうえで、自身でも集客ができる方法を探り、さまざまなルートから仕事を見つけられるような準備を進めることも大切です。
そのためには、営業力の強化とともに、差別化によって独自の強みを築く努力が欠かせません。これまでに築いてきたキャリアや経験、取得しているほかの資格なども踏まえながら、強みが発揮できる専門分野を見つけましょう。
宅建士とのダブルライセンスは目指したほうがいい?
宅建士(宅地建物取引士)は、不動産に関連するメジャーな資格として、不動産鑑定士以上に広く普及しています。宅建士は不動産売買・賃貸の仲介といった不動産取引の専門家です。
宅建士は「契約締結前の重要事項説明」「重要事項説明への記名」「契約書への記名」といった3つの独占業務を持ち、賃貸の仲介も含めた幅広いシーンで必要とされることから、100万人以上が登録する人気の資格です。一方の不動産鑑定士は難関資格ということもあり、登録者数は1万人を切る希少な存在であるため、宅建士とのダブルライセンスは大きな強みとなるでしょう。
具体的なメリットとしては、「鑑定評価を受けた顧客の案件を売買の仲介までカバーできる」「宅建士として磨かれた営業力・接客力が鑑定士の業務にも生きる」といったイメージが挙げられます。
≫ 不動産鑑定士に将来性はある? 年収・資格取得の難易度・登録までの手順
不動産鑑定士の将来性
デジタル技術の目覚ましい進歩が繰り返される現代では、AIの発展によって士業を含む多くの職業が必要性を失ってしまう可能性があるといわれています。不動産鑑定士も決して例外ではなく、AIによって精度の高い不動産鑑定評価書を作成できるリスクもないとは言い切れません。
しかし、不動産鑑定士は前述のように希少性が高い資格です。一方、高齢化に伴い相続にまつわる仕事のマーケットは今後も拡大していくと考えられているため、需給のバランスを考慮すれば大きなビジネスチャンスが広がっていると考えることもできます。
いずれにしても、仕事を獲得できるかどうかは、個人の資質や営業力に左右される部分も大きいものです。開業を決断するのであれば、しっかりと営業スキルの向上にも時間と労力を注ぎましょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:不動産鑑定士の年収はどのくらい?
A:厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2019年)によれば、勤務不動産鑑定士の平均年収は754万5,900円とされています。これは、全職種の平均給与所得(443万円/国税庁「民間給与実態統計結果(2021年分)」)を大きく上回ります。
Q:不動産鑑定士として独立するメリットは?
A:勤務鑑定士と比べて収入アップのチャンスが広がりやすい点や、定年がない点が基本的なメリットですが、それ以外にも「独占業務がある」「初期投資を抑えやすい」といったポイントが独立向きとされています。
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