賃貸物件の騒音トラブル対策。防音マットについて防音専門ピアリビングに聞いた
東京都の「テレワーク実施率調査結果」によれば、2023年12月での都内企業（従業員30人以上）のテレワーク実施率は46.1％でした。コロナ禍で急激に浸透したテレワークですが、以降、都内の企業ではテレワークが浸透しているようです。在宅時間が長くなることで気になるのが、音の問題です。在宅時間が長くなったことで、以前よりも自宅の環境が気になるようになったという声も聞きます。防音製品を多数取り扱う株式会社ピアリビングに、防音対策についてお聞きしました。
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入居者の満足度に影響する「音の問題」
音の問題は日常的に発生することもあり、入居者の満足度に大きく影響することが分かっています。現在居住する賃貸住宅の満足度について居住者に聞いたところ、「遮音性（外部からの騒音や上下階・隣戸からの騒音など）」に不満があるとの回答が43.3％と、すべての項目のなかで最も高い結果となっています（一般財団法人 住宅改良開発公社の調査）。賃貸物件の課題ともいえる音の問題ですが、集合住宅は構造的に部屋同士が隣接しており、対策が難しいと思っていらっしゃるオーナーや管理会社の方も多くいるかもしれません。
（出典：一般財団法人 住宅改良開発公社 賃貸住宅市場の動向と 将来予測（展望）調査）
コロナ禍で問合せが5倍に
前述した在宅時間が長くなることで気になるようになった「音」の問題ですが、ピアリビング東京支店 支店長の梶原栄二さんによると、特にコロナ禍で顕著だったといいます。
「ピアリビングへのお問合せは8割が一般の方ですが、コロナ禍は通常の5倍ほどに増えました。以降、賃貸管理会社の方からのお問合せも増加しています。在宅時間が増えて、『こんなに音が響くとは思わなかった』『隣の音が響くので、うちの音も聞こえているのではないかと不安になった』など、たくさんのご相談をいただいています。管理会社の方からのお問合せが増えたこともあり、近年では賃貸EXPOなどにも出展しています。オーナーさんご自身からお問合せをいただくことも増えました」（梶原さん）
貸し止め物件に防音マットを導入
音の問題は、入居者の満足度にも直結しますが、同時に、退去率にも大きく影響を与えます。ピアリビングに寄せられるなかでも多いお問合せやご相談が、「階下の方からのクレーム」なのだそうです。
「階下の入居者の方から音に関するクレームが日常的に発生している賃貸物件がありまして、2階に入居があっても、クレームが繰り返し発生してしまうため、すぐに退去になってしまう状態でした。何度か入居しては短い期間で退去することを繰り返すうちに、結果的に貸し止めの状態になってしまっていました。この物件に、ピアリビングの防音タイルカーペット『静床ライト』と、下敷き用防音マット『足音マット』を設置しました。設置したタイミングで管理会社さんから入居者の方に対策を施した旨をお伝えして、これ以上の対策は難しいということをしっかりお伝えした上で、再度、入居を開始するに至りました」
「静床ライト」は全11色
ロフト物件にも設置
「ほかにも、階下からのクレームが発生していた物件で導入した事例があります。ロフト付きの木造物件で、階段の最後の1段を『ぴょん』と飛ぶと、意外にも、階下には大きく響くんですね。下の階には『ドスン』と大きな音がしていたようで、こちらにも同様に防音マットを設置しました。不動産会社さんにもマットを設置した音の状態を確認してもらいましたが、かなり音が抑えられました」
梶原さんによれば、構造が木造住宅でも、軽量鉄骨であっても、階下への音の対策は同様に静床ライトと足音マットの併用が有効であり、音はかなり抑えられるとのこと。静床ライトと足音マットの併用により、遮音等級（日本産業規格：JIS）は最も高い「特級」となり、椅子の音や落下の音はほとんど聞こえないほどになります。※聞こえ方には個人差があります。
せっかく入居につながってもすぐに退去になってしまい、空き室が続いてしまうとなると、オーナーにとっては非常に大きな問題です。長く居住してもらえる環境を提供するという目的でも、防音対策が重要であることが分かります。
防音マットリースサービスを提供中
管理会社やオーナーの方からの需要の増加を受け、ピアリビングは2023年9月から「防音マットリースサービス」を開始しました。設置費用は無料で、月額7,260円から利用することができます。月額費用には施工費用・メンテナンス費用・処分費用が含まれており、別途料金は発生しません。
「お打ち合わせをさせていただいた後、2週間ほどで設置可能です。設置する面積によって月額費用は変わりますが、20平米くらいのワンルームで9,700円くらいになると思います。途中、退去が発生した際などにクリーニングも対応いたしますので、メンテナンスや、処分の手間もかかりません」
ワンルームくらいの広さ(6帖～8帖くらい)であれば、設置工事の時間は、4～5時間くらいで完了し、大がかりな工事を伴わないため、周辺への音も気にならないとのこと。なお、契約期間は6年間で、違約金が発生するものの、途中解約も可能です。
カーペットの意外なメリット
音への対策として有効な防音マットですが、意外にも、それ以外にカーペットを敷くことのメリットは多いのだとか。カーペットと聞くとホコリやダニがたまりやすいというイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、フローリングと比較して、ハウスダストの舞い上がりを抑制してくれる効果があることが分かっています。日本カーペット工業組合が2013年に実施した実験の結果では、カーペットでの舞い上がり量はフローリングの10分の1で、瞬間的には、最大20分の１という結果が示されています。
（出典：日本カーペット工業組合）
また、防音マットを設置することで室内が静かに保たれることで、集中しやすく、子どもの学習環境にいい影響があったり、ペットの足音が響かなったり、フローリングと比較して滑りにくいためペットの足腰に負担がかからない、などのメリットもあります。
カーテンや防音壁でも対策可能
音に関するクレームで最も多いのが、階下からのクレームであると前述しましたが、ピアリビングでは、階下への音対策以外にも、お悩みに応じた多くの製品を取り扱っています。
・「窓」の対策
窓からの音が気になる、という部屋の場合は、防音カーテン・防音レースカーテン、防音カーテンライナーなどが対策として考えられます。さらに防音効果を高めたい場合は、窓そのものにはめ込む窓用ワンタッチ防音ボードという方法も。
防音カーテンに、レールカバーも設置した状態
窓用ワンタッチ防音ボードを窓に設置すると、外からの音がかなり軽減されます
・「壁」の対策
お隣の部屋の音が気になる場合は、壁に取り付ける防音設備「ワンタッチ防音壁」という製品があります。壁に突っ張り棒などを設置して、音を吸収する「吸音材」 と、音を遮断する「遮音材」がサンドイッチ構造に組み合わさった防音パネルを、突っ張り棒の間にはめ込みます。設置・取り外しともに容易にできます。
ワンタッチ防音壁
実は、1年の中で「音」に関するトラブルが増えるのは春先なんだそうです。春先は、住み替えの多く発生する3月が過ぎ、入居者の方が新しい住まいでひと段落する時期でもあります。ですが、それと同時に、入居した物件の音が響くことに気がついたり、また、階下の人が上階の人の入れ替わりで音が気になるようになったり……と、トラブルが顕在化するタイミングでもあるようです。音に関する相談の多い物件については、住み替えの前に何かしらの対策を検討してみてはいかがでしょう。
ピアリビング東京ショールームでは、今回ご紹介した製品や、それ以外の防音製品の実物も見られて、防音アドバイザーに相談することもできます。通常、来店の際は事前予約が必要ですが、毎月第３土曜日（10:00〜17:00）は事前予約不要で自由に見学することができます。ちょっと防音マットの色を見てみたい、相談したい……という方は、毎月第３土曜日のピアリビングデーに行くのもよいかもしれません。
取材協力：ピアリビング
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