賃貸物件のリノベーションは空室対策に有効? 実施するときのポイント
賃貸物件を経営するうえでは、なかなか入居者が集まらないときに備えて、早い段階から空室対策を検討しておくことが大切です。空室対策にはさまざまな施策が考えられますが、代表的なものとしてあげられるのが「リノベーション」です。
今回は賃貸物件におけるリノベーションが空室対策としてどの程度の効果を生み出すのか、具体的にどのような選択肢があるのかなどを費用の目安とともにご紹介します。
目次[非表示]
- 1.空室対策を行わないことのデメリット
- 1.1.空室が増え始めると負の循環に陥ってしまう
- 1.2.リノベーションの効果
- 2.方法①:フルリノベーション
- 2.1.主な特徴
- 2.2.効果的なケース
- 2.3.方法②:間取りの変更
- 2.4.主な特徴
- 2.5.効果的なケース
- 3.方法③:部分的なリノベーション
- 4.リノベーションにかかる費用の目安
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空室対策を行わないことのデメリット
賃貸物件の経営において、空室対策はとても重要な課題となります。ここでは、空室対策を行わないデメリットと、リノベーションで期待される効果について見ていきましょう。
空室が増え始めると負の循環に陥ってしまう
一般的に、建物や設備は歳月の経過とともに老朽化していくため、価値も減少していきます。不動産としての価値が下がるとともに、借り手から見た魅力も相対的に下がってしまうため、何も対策を講じなければ次第に空室が増加していってしまいます。
空室が増えて賃料収入が減少し、初めて設備投資や空室対策の重要性を認識したとしても、その時点ではもはや十分な資金が確保できないため、実行に移すのは容易ではありません。このように、早期の空室対策を怠れば、価値の下落を止められないという負のスパイラルに陥ってしまう可能性があるのです。
そのため、経営を長く続けるためには、資金にゆとりのあるタイミングで空室対策に目を向けることが重要となります。
リノベーションの効果
空室対策には「広告宣伝に力を入れる」「人気の設備を導入する」といった様々な方法がありますが、根本的な取り組みが必要な場合は「リノベーション」に注目してみるのも有効です。リノベーションとは、既存の建物に改修を加えて、「価値を高める」行為を指します。
単に修繕するだけのリフォームと比べて、間取りの変更や設備の強化によって価値を高めることを目的としているのが特徴です。たとえば、「時代に合わなくなった間取りを変更する」「流行のデザインや設備を取り入れる」といった方法により、新たな借り手を
呼び込みやすくなるのが大きなメリットです。
一方、大規模な工事には高額な費用がかかるため、現状や目的に合わせた施工内容を選択することも大切となります。ここからは、代表的なリノベーションプランの種類と特徴について見ていきましょう。
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方法①:フルリノベーション
「フルリノベーション」とは、間取りや設備も含め、内装をゼロから変えられるプランのことです。
主な特徴
フルリノベーションのメリットは、古くなった内装や間取りを丸ごと入れ替えられる点にあります。キッチンやお風呂の配置まで変更することができるため、「古い間取りやデザインを一新したい」「現代の技術で使い勝手を向上させたい」など、大胆なブラッシュアップが可能です。
流行のデザインを取り入れれば、若年層や学生といった新たなターゲット層を狙うことも可能であり、空室対策としては大きな効果が期待できます。一方で、費用は高額になるため、実現するためにはまとまった資金が必要です。
場合によっては建て替え並みのコストになってしまうケースもあるので、見積もりをきちんと取ったうえで判断する必要があります。
効果的なケース
フルリノベーションが効果的な場面としては、次のようなケースがあげられます。
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フルリノベーションは高額な費用がかかるため、十分なリターンが見込めるかどうかを慎重に検討する必要があります。たとえば、人気の立地であるにもかかわらず、物件の古さによって入居者が集まらない場合などであれば、フルリノベーションで投資を回収できる可能性は十分にあると判断できるでしょう。
方法②:間取りの変更
場合によっては、大がかりな工事ではなく、一部の間取りを変更するだけでも効果的なケースがあります。
主な特徴
間取りの変更は、入居者のライフスタイルの変化に対応できるのが特徴です。たとえば、2Kや2DKなどの間取りは、それぞれ高度経済成長期やバブル期に流行したものである
ため、現代では古い印象を与えてしまうことが多いです。
現代はキッチンとリビング・ダイニングが一体となった広めのLDKが好まれる傾向にあるため、2DKを1LDKに入れ替えるなどの方法は、効果的な選択肢の一つといえるでしょう。また、近年ではテレワークの普及により、ワークスペースが充実した間取りも好まれる傾向にあります。
築年数が経過した物件では、こうした新しい生活様式に対応できない部分があるため、必要に応じた間取りの変更が有効策となり得ます。
効果的なケース
間取りの変更が効果的なケースをまとめると、次のようなパターンがあげられます。
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方法③:部分的なリノベーション
コストを抑えて空室対策を実施するのであれば、部分的なリノベーションを行うという選択肢もあります。
主な特徴
部分的なリノベーションは、「既存設備活用型のリノベーション」と考えることもできます。問題がない箇所はそのまま残しつつ、主に住宅設備の取り替えを行い、全体としての使い勝手を向上させるのが狙いです。
物件の弱点となっていた部分に手を加え、魅力ある状態に変えることで、コストを抑えつつ訴求力を高められるのがメリットです。また、工期を短縮できるとともに、施工範囲も狭いため、ほかの入居者への影響を小さくとどめられるのも利点といえます。
効果的なケース
部分的なリノベーションが効果的なケースとしては、以下のような場合が考えられます。
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特に注意すべきなのは、立地上の問題で大きなリターンが見込めないケースです。賃貸物件は駅までのアクセスなどの交通利便性が重視されることが多く、築年数が経過した物件でも、駅近であれば比較的に借り手が見つかりやすい面があります。
一方、駅から離れているなどの立地上のハンディキャップがある場合は、リノベーションを行っても完全に問題を解消することはできません。そのため、なるべくコストをかけずに部分リノベーションを行って、賃料を上げなくても済むような予算を設定することが有効です。
リノベーションにかかる費用の目安
リノベーションにかかる費用は、床面積や建物の状態、構造などによって異なります。そのため、一概にいくらと表現することはできませんが、一室のフルリノベーションを行う場合は少なくとも500万円前後、グレードにこだわるなら1,000万~2,000万円程度が目安といえます。
あくまで一例ではありますが、予算別に可能な施工内容をご紹介します。
目安予算 |
可能な施工範囲の組み合わせ例 |
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400万円 |
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500万円 |
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600万円 |
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700万円 |
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コストは建物の現状や所在する位置によっても異なるので、まずはいくつかの施工会社に見積もりを依頼し、施工内容と費用のバランスを確かめてみるといいでしょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:リノベーションは空室対策にどんな効果をもたらす?
A:古くなった間取りや設備を入れ替えることで、若年層や学生まで借り手のターゲットを広げやすくなります。ただし、大がかりな工事には大きなコストがかかるため、状況に合わせたプランを考えることが大切です。
Q:空室対策としてのフルリノベーションはどんなケースで有効?
A:築30年以上の古い物件や、設備の入れ替えを行っていない物件では有効なケースが多いです。また、立地が優れている場合は、フルリノベーションによって大幅な賃料アップを狙うこともできます。
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