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敷金診断士とは? 敷金トラブル解決のプロフェッショナルになる方法

敷金診断士とは? 敷金トラブル解決のプロフェッショナルになる方法

賃貸住宅の管理業務において、借主の退去時に敷金の返還についてのトラブルに直面することが少なくありません。この問題は解決までに時間や労力がかかるケースが多く見られ、借主と貸主の双方にとって負担となります。
 
そんなときに頼りになるのが、敷金に関する問題を専門的に解決するプロフェッショナルである「敷金診断士」です。本記事では、敷金診断士の役割や資格取得の方法、そして敷金診断士が提供する付加価値などについて詳しく解説します。

目次[非表示]

  1. 1.敷金トラブルの現状と背景
    1. 1.1.賃貸住宅における敷金トラブルとは
    2. 1.2.最近の敷金トラブルの事例
  2. 2.敷金診断士の役割とメリット
    1. 2.1.敷金診断士の役割
    2. 2.2.敷金診断士を利用するメリット
  3. 3.敷金診断士の資格を取得するには
    1. 3.1.敷金診断士資格の取得方法
  4. 4.敷金診断士試験の概要と出題内容
  5. 5.敷金診断士資格の付加価値
    1. 5.1.ADR調停人としての役割
    2. 5.2.敷金診断士の賃貸業界での重要性
  6. 6.まとめ

敷金トラブルの現状と背景

敷金とは、賃貸住宅への入居時に借主が貸主に預ける保証金のことです。通常は借主の退去時に一部または全額が返還されますが、実際には「原状回復」に関する敷金トラブルが多く報告されています。ここでは、敷金トラブルの現状と、具体的な事例を見ていきましょう。

賃貸住宅における敷金トラブルとは

敷金トラブルとは、主に借主が退去時に支払う原状回復費用をめぐって起こるトラブルのことを指します。原状回復とは、借主が退去する際に部屋を入居前の状態に戻すための修繕のことです。
 
この原状回復について、貸主が過剰な請求を行うことや、借主が負担すべき範囲について意見が一致しないことで問題に発展してしまうのです。
 
たとえば、壁紙の汚れや床の擦り傷は、長期間の使用による「経年劣化」として扱われ、これらの修繕費用は本来は借主の負担にはなりません。しかし、これらの費用まで借主に請求されるケースがしばしば見られます。
 
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)には、敷金トラブルに関する相談が毎年1万2,000件以上寄せられており、この問題の深刻さが浮き彫りになっています。これらのトラブルは、借主と貸主の間に認識の違いがあることに起因します。

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トラブル防止のためには、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も参考となるでしょう

最近の敷金トラブルの事例

独立行政法人国民生活センターのホームページに記載されている最近の敷金トラブルの事例としては、ペットを飼育していた入居者がクロスの張替え費用を請求されたケースや、入居時に口頭で「退去時のルームクリーニング代は不要」と説明されたにもかかわらず、実際には退去時にクリーニング代を請求されたという例などが記載されています。敷金を巡り、さまざまケースでトラブルが発生しているようです。

敷金診断士の役割とメリット

敷金トラブルが多発するなか、専門家である敷金診断士の役割が注目されています。ここでは、敷金診断士がどのような役割を果たすのかを見ていきましょう。

敷金診断士の役割

敷金診断士の主な役割は、賃貸物件における敷金トラブルを解決することです。具体的には、敷金の返還額や原状回復費用の査定を行い、借主と貸主にとって適正な金額を提示します。その結果、双方が納得のいく形でのトラブル解消につながるのです。
 
敷金診断士は「日本住宅性能検査協会」が認定する資格で、行動基準は経済産業省が定めた「住生活エージェントのガイドライン」に基づいており、法的に認められた基準に沿って業務を遂行します。このような理由から、敷金診断士は借主・貸主双方にとって信頼できる存在なのです。

敷金診断士を利用するメリット

敷金診断士を利用する最大のメリットは、専門的な第三者の知見を得ることで、敷金トラブルが公正かつ迅速に解決される点です。トラブルに直面した際、借主は敷金診断士による査定を受けることで、自身が負担すべき原状回復費用が適切であるかどうか確認できます。
 
また、敷金診断士を利用することで、借主と貸主の間での感情的な対立を避け、冷静に問題を解決できる点も大きなメリットです。敷金診断士は中立な立場から査定を行うため、貸主も結果を受け入れやすくなり、トラブルの長期化を防ぐことができます。

敷金診断士の資格を取得するには

敷金診断士の資格を取得するためには、規定の試験をクリアし、講習を受講する必要があります。ここでは、敷金診断士資格の具体的な取得方法と、試験の内容について解説します。

敷金診断士資格の取得方法

敷金診断士の資格を取得するには、敷金診断士試験に合格することが必要です。この試験は、全国約200ヶ所のCBTテストセンターで実施されており、受験者は自身のスケジュールに合わせて受験日を選ぶことができます。
 
試験に合格したあとは、登録講習を受講し、日本住宅性能検査協会に資格登録を行います。登録講習は、敷金に関する法的知識や原状回復に関する建築知識を深める内容で、公開会場だけでなく通信での受講も可能です。
 
登録後は、2年ごとに更新が必要となります。更新時には、再度登録手数料を支払い新たな認定証を得ることで、資格の有効性を維持することができます。

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敷金診断士の試験は年末年始を除き随時受験が可能です

(出典:敷金診断士ホームページ

敷金診断士試験の概要と出題内容

以下は、敷金診断士試験の概要と出題内容をまとめた表です。試験は、賃貸契約に関する法令や、建築物に関する知識を幅広く問う内容で構成されています。

項目
内容
試験日程
随時(年末年始を除く)
試験会場
全国約200ヶ所のCBTテストセンター
試験形式
4肢択一形式(50問)
試験時間
90分
受験手数料
7,800円(非課税)
 

別途、講習料1万8,000円(非課税)と登録手数料1万5,000円(非課税)が必要

出題分野
<法令系科目>
民法、借地借家法、消費者契約法、区分所有法、宅建業法、品確法、民事訴訟法、標準賃貸契約書、その他建物賃貸に関わる法令及び判例
<建築系科目>
建築物の構造及び概要、建築物に使用されている主な材料の概要、建築物の部位の名称等、建築設備の概要、建築物の維持保全に関する知識及びその関係法令、建築物の劣化、修繕工事の内容及びその実施の手続きに関する事項

参考:試験実施案内-敷金診断士

敷金診断士資格の付加価値

敷金診断士の資格は、敷金トラブルを解決できる以外の付加価値も持っています。ここでは、敷金診断士資格が持つ付加価値について詳しくご紹介します。

ADR調停人としての役割

敷金診断士資格の取得後、日本不動産仲裁機構が実施する「ADR調停人候補者研修」を修了することで、ADR調停人として活動できる道が開かれます。ADRとは「裁判外紛争解決制度」のことで、裁判手続きを行わずにトラブルを解決する手段として注目されています。
 
敷金診断士がこの研修を受講し、日本不動産仲裁機構に調停人候補者として登録されると、敷金の査定だけでなく、賃貸契約に関する幅広い紛争について調停業務まで行えるようになります。
 
ADR調停人候補者として登録することは、敷金診断士としての活躍の場を広げるだけでなく、賃貸業界全体のトラブル解決の迅速化にもつながります。
 
参考:「敷金診断士」が日本不動産仲裁機構 ADR調停人の基礎資格の認定を受けました

敷金診断士の賃貸業界での重要性

賃貸管理会社にとって、敷金診断士は信頼できるパートナーです。敷金診断士が間に入ることでトラブルの早期解決を見込めるため、空室期間が短縮され、収益の安定化にもつながります。
 
さらに、借主にとっても賃貸契約時に敷金診断士のアドバイスを受けることで、安心してサインできます。将来的に、賃貸業界全体において敷金診断士の役割がさらに重視され、トラブル防止のための標準的なサポートとして広がっていくことが期待されるでしょう。

まとめ

敷金や原状回復に関する専門的な知識を身につけ、敷金診断士の資格を取得することで、借主・貸主双方にとって公平な解決案を提供することができるようになります。
 
さらに、追加の講習を受けてADR調停人候補者としても登録することで、賃貸契約に関する紛争を解決まで迅速に導く道も開けます。
 
不動産業界において需要が高まりつつある敷金診断士の資格は、今後、業界全体の信頼性を高めるために欠かせない存在となるかもしれません。
 
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Business 編集部
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