液状化現象とは? リスクを調べる方法から液状化対策、支援制度まで解説
液状化は地震によって発生する現象です。液状化による被害は、建物の沈下や傾き、噴水・噴砂の発生によるライフラインの破損など、その後の生活に多大な影響を及ぼします。
この記事では、液状化の被害事例や液状化が発生しやすい土地の特徴を踏まえたうえで、液状化リスクの調べ方から液状化対策、東京都で受けられる支援制度について解説します。
目次[非表示]
- 1.液状化現象とは?
- 2.液状化による被害事例
- 3.液状化リスクの高い土地とは?
- 4.液状化マップを活用してリスクを調べる方法
- 5.地震による液状化対策
- 5.1.建物の基礎で対応する
- 5.2.地盤を改良して対応する
- 5.3.地盤を囲い込み対応する
- 5.3.1.・格子状地盤改良工法
- 5.3.2.・壁状締切工法
- 6.東京都の液状化対策支援制度
- 6.1.東京都戸建住宅等液状化対策促進事業補助制度
- 6.1.1.・液状化判定調査事業費
- 6.1.2.・液状化対策工事費
- 6.2.液状化対策アドバイザー制度
- 7.まとめ
液状化現象とは?
液状化現象とは、地震によって地盤が液体のように流動化する現象のことです。
液状化現象が起こりやすいとされている砂質地盤では、通常、砂の粒子同士はゆるく結合し合い、その隙間に水分が含まれた状態です。そこに地震による振動が繰り返し加わることで、地下水の圧力が高まり、砂の粒子が結びつきをなくし地下水に浮いた状態となります。この状態が液状化です。
液状化現象が起こると、地下水や砂が地表に噴出するほか、建物が不均衡に傾いたり沈んだり(不同沈下)する、マンホールや埋設管が浮き上がるなどの被害が発生します。
また、鉄筋コンクリートのマンションなどと比べ、木造住宅は建物の重量が軽く基礎が浅いため、液状化の影響を受けやすいといえます。
(出典:国土交通省 液状化現象について)
液状化による被害事例
ここでは、過去の地震による液状化の被害事例を紹介します。
【被害事例1】1995年 兵庫県南部地震
1995年に発生した兵庫県南部地震では、神戸市、西宮市、芦屋市の臨海部に位置する埋立地で多くの液状化被害が発生しました。
道路や校庭の噴水・噴砂のほか、日本を代表する国際港である神戸港では、護岸が海側に最大5メートル以上も移動するなど、壊滅的な被害を受けました。
【被害事例2】2011年 東北地方太平洋沖地震
2011年に発生した東北地方太平洋地震では、東北地方だけでなく、震源から離れた関東地方を含む13都県にわたって液状化被害が発生しました。
特に、東京湾岸の浦安市から千葉市にかけての埋立地では、震度5強の地震にもかかわらず、高密度に液状化が生じました。
液状化による被害が最も多く出た一戸建て住宅に関しては、被害を受けた2万6,914棟のうち約3,700棟の建物が半壊以上の被害認定となりました。
参考:一般財団法人消防防災科学センター「東北地方太平洋沖地震による液状化被害の特徴」
【被害事例3】2016年 熊本地震
2016年に発生した熊本地震では、熊本平野広域における多数の地点で液状化が発生しました。
液状化の大部分が埋立地ではなく、内陸部の河川沿岸地域など、自然堆積地盤であったことがこの事例の特徴です。
被害状況に関しては、一戸建て住宅や店舗の不同沈下など、建物への被害や電柱被害(沈下)が顕著でした。
国土交通省 2016年 熊本地震の事例 (液状化被害の事例)
(出典:国土交通省「液状化現象について(過去の被害事例)」)
液状化リスクの高い土地とは?
液状化が起こりやすい土地は、砂質土壌で比較的地下水位が高く、ゆるく砂が堆積している状態にあるという特徴があります。これらを踏まえ、液状化リスクが高い土地として、具体的に次のような土地が挙げられます。
|
東北地方太平洋地震では近年造成された土地に、熊本地震では元は田んぼで、建物を建てられるように造成した土地に多くの被害が見受けられました。
液状化マップを活用してリスクを調べる方法
液状化リスクを調べる方法として、国が提供するハザードマップ(液状化危険度分布図)を活用する方法があります。
・東京都の液状化危険度分布図
(出典:国土交通省「重ねるハザードマップ」※2024年9月25日時点)
そのほか、地盤調査や建物検査サービスなどを提供するジャパンホームシールド株式会社は、地盤の強さや地質、地形の情報に合わせて液状化の可能性を確認できる「地盤サポートマップ」を提供しています。
また、東京都は、都内で実施された地盤調査によって得られた地質柱状図を提供しています。地質柱状図とは、建物の建設の際に行われる地盤調査(ボーリング調査など)を基に、その土地の土質や地盤の強さなどを柱状に示した図です。
(出典:東京都港区「土を調べてみよう 土質柱状図」)
こういった情報を活用することで、液状化やそれに伴う災害のリスクを一定程度判断することができます。
参考:ジャパンホームシールド株式会社「地盤サポートマップ」
参考:東京都建設局「東京の地盤(GIS版)」
地震による液状化対策
ここでは、地震による液状化対策として3つの方法を紹介します。
建物の基礎で対応する
1つ目である、建物の基礎で対応する方法は、液状化発生時の建物への被害を少なくするという考え方に基づく方法です。
・ベタ基礎
建物の荷重を底板全体で受け止め、分散して地盤に伝えることで不同沈下が起きにくくする方法
(出典:東京都都市整備局出典「東京都建物における液状化対策ポータルサイト(被害の軽減を図る対策)」)
※以下、液状化対策の工法に関する画像も同様
・小口径杭工法
建物の荷重を支える基礎を底面で確保したうえで、強固な地盤層まで届く鋼管などの杭を設置し、沈下を防ぐ工法
地盤を改良して対応する
2つ目は、地盤を改良することで液状化現象そのものを起きにくくする方法です。
・深層混合処理工法
土と固化材を混ぜた円柱状断面の改良体を、基礎スラブや基礎フーチング(逆T型をした基礎の底盤)直下に杭のような形で配置して地盤を改良する工法
・浅層混合処理工法
建物の周囲を含め、基礎スラブまたは基礎フーチングの直下について、全面的に固化材と原状の土を混ぜ合わせ、薄い層状・板状に改良する工法
・注入工法
水とセメントの混合液や水ガラス系などの薬液を地盤に注入する工法
地盤を囲い込み対応する
3つ目は、建物の基礎直下の地盤を囲い込み、液状化の発生や建物の沈下を抑える方法です。
・格子状地盤改良工法
地盤の土とセメント系の固化材を混ぜ、地中に円柱型の連続する壁をつくり、液状化しやすい地盤を囲い込む工法
・壁状締切工法
矢板などの板状の杭を基礎の外周部に設置し、液状化しやすい地盤を囲い込む工法
液状化対策の工法にはさまざまなものがあり、費用や完了までにかかる時間も異なります。
また、中古住宅の場合、建物を維持しながら施工しなければならないため、新築時と比べて費用がかかる、あるいは施工条件(隣接地との距離など)によっては採用が難しい工法もあります。
参考:東京都「東京都建物における液状化対策ポータルサイト(液状化対策を検討する)」
東京都の液状化対策支援制度
最後に、液状化対策に関する東京都の支援制度について解説します。
東京都戸建住宅等液状化対策促進事業補助制度
東京都では「液状化の判定調査」と「対策工事」に対して補助を行っています。
・液状化判定調査事業費
補助対象 |
液状化判定調査に要する経費 |
---|---|
補助額 |
液状化判定調査に要する経費の1/3以内(限度額13万3,000円) ※別途区市町村が1/3を負担 |
要件 |
・敷地が東京都内にある |
・液状化対策工事費
補助対象 |
液状化対策工事に要する経費(設計料を含む) |
---|---|
補助額 |
液状化対策工事に要する経費の1/4以内(限度額40万円) |
要件 |
・敷地が東京都内にある |
参考:東京都「東京都戸建住宅等液状化対策促進事業補助制度概要」
液状化対策アドバイザー制度
東京都では、液状化の発生の可能性や地盤の状況の把握、対策方法の選定など、液状化対策を検討するための無料相談窓口「液状化対策アドバイザー制度」を設けています。
東京都と連携した一般社団法人東京建築士会では、窓口への相談だけでなく派遣相談も無料で受けることができます。
参考:東京都「東京都建物における液状化対策ポータルサイト」
まとめ
地震大国である日本では、過去の被害事例や液状化しやすい土地の特徴を踏まえ、物件の所在地の液状化のリスクを検討し、対策する重要性が高いといえます。
そのため不動産取引においては、顧客に物件を案内する際や、建物の工法の選定時に、液状化リスクや対策工事、あるいは行政で受けられる支援制度について案内できるようにしておく必要があるでしょう。ぜひ参考にしてください。
LIFULL HOME'S Businessでは、不動産業界に関連したコラムやセミナー情報なども公開しております。ぜひご覧ください。
≫ LIFULL HOME'S Businessコラム
≫ LIFULL HOME'S Businessセミナー一覧