IT重説とは? デメリットやガイドラインに基づいた対応方法を紹介
インターネット回線を用いて重要事項説明が行えるIT重説。非対面で実施できることから、遠方の顧客との契約時など。さまざまな場面での活用が期待されています。
しかし、導入する際にはいくつかのデメリットにも注意を払う必要があります。今回はIT重説の基本的な仕組みを確認したうえで、デメリットやその対応方法について見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.IT重説とは
- 2.IT重説の対象となる契約と利用状況
- 3.IT重説のデメリット
- 3.1.IT環境の整備が必要
- 3.2.反応が分かりづらい
- 3.3.重説そのものを軽んじられる可能性がある
- 4.IT重説の4つの要件
- 5.IT重説を実施する際の注意点
- 5.1.宅地建物取引士の資格が必要
- 5.2.IT重説の同意を得ておく
- 5.3.カメラオフは不可
- 5.4.内覧の実施を勧める
IT重説とは
IT重説とは、パソコンやスマートフォンなどの端末を利用し、対面時と同じように重要事項説明を行うことを指します。なお、対面する場合と同じように、宅地建物取引士が担当者となる必要があり、賃借人に対しては事前に重要事項説明書を交付することが条件となっています。
IT重説が普及し始めたのは比較的に最近のことであり、2017年10月1日から、まずは賃貸借契約において実施可能となりました。それ以来、以下のようなメリットがあることから、不動産営業のさまざまな場面で幅広く活用され始めました。
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また、利便性の高さとともに、新型コロナウイルスの蔓延による非対面型サービスの推進も大きく関係し、ここ数年でIT重説を導入する不動産会社は増加してきています。
IT重説の対象となる契約と利用状況
前述のように、IT重説が解禁された当初(2017年)は、試験的な導入の意味合いもあり、「賃貸取引」のみで認められていました。しかし、2021年3月30日からは「売買取引」でもIT重説が可能となり、さらに活用の幅が広がっています。
国土交通省が行ったアンケートによれば、IT重説の利用件数は2017年10月~2019年1月の調査で約2万5,000件に上りました。そして、利用者の多くが「説明が分かりやすい」「質問しやすい」など好意的な意見を寄せています。
特に、「店舗へ足を運ぶ負担の節約」が主な利用動機となっており、「仕事や病気のため」「国外にいるため」などの回答も多く、IT重説が現代のユーザーのニーズに合致していることが読み取れます。
IT重説のデメリット
このように、利用者にとってはさまざまなメリットのあるIT重説ですが、不動産事業者側から見ればいくつか注意しなければならないデメリットもあります。ここでは、3つのポイントに分けて見ていきましょう。
IT環境の整備が必要
IT重説は適切なIT環境を整えなければならないため、導入に手間がかかってしまうのがデメリットです。店舗側のパソコンやタブレット端末、通信環境などを整備しなければならないのはもちろん、顧客側にも適切な準備をしてもらわなければなりません。
途中で音声の途切れなどの通信トラブルが起こると、重説を中断しなければならないため、双方がスムーズな通信環境を整えられることが重要条件となるのです。
反応が分かりづらい
IT重説は画面越しで行われるため、対面で行う場合と比べると、どうしても相手の反応が分かりづらい面があります。説明をしても顧客がきちんと内容を理解しているかどうか判断が難しいため、小まめに質問してもらえるタイミングを設けるなどの工夫が必要です。
重説そのものを軽んじられる可能性がある
営業所に来店してもらう通常の重説と比べて、自宅にいながら説明を受けてもらうこととなるため、緊張感が失われてしまいがちな面もあります。契約に関わる重要な部分を聞き逃してしまうリスクも増えるため、対面時以上に双方向的なコミュニケーションを意識し、内容の確認を丁寧に行うことが大切です。
IT重説の4つの要件
IT重説を円滑に行うためには、どのような点を意識すればいいのでしょうか。国土交通省が公表している「実施マニュアル」では、IT重説の要件として次の4つの項目が提示されています。
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まずは、事前に記名押印された重説等の書類を送付し、相手方が確認できるようにしておく必要があります。そのうえで、当日はスタート前に担当者の宅地建物取引士証を提示し、正当な手続きであることを証明しなければなりません。
取引士証の確認は、以下のような流れで進めていくのが理想です。
取引士証の提示から確認までの流れ
1 .取引士がカメラに自分の取引士証をかざす 2.取引士証の写真と担当者の顔が同じであること確認してもらう 3.相手方に取引士証に記載された名前、登録番号などを読み上げてもらう 4.読み上げてもらった内容が正しいことを確認する |
その後、映像・音声の状況を確認し、問題がなければ重説へと進みます。
IT重説を実施する際の注意点
最後に、IT重説を行ううえで注意すべき点を確認しておきましょう。
宅地建物取引士の資格が必要
IT重説を行う担当者は、従来の重説と同じように宅地建物取引士の資格が必要です。重説に入る前には、必ず取引士証の提示を行い、相手方に確認してもらいましょう。
IT重説の同意を得ておく
重要事項説明には、対面による方法とITを用いた方法の2通りがあり、どちらを選ぶかについては相手方の意向を確認する必要があります。確認方法については明確な取り決めがありませんが、トラブル予防の観点からいえば、書面などで記録として残しておく方が望ましいといえます。
また、個人情報保護の観点を踏まえて、取り扱う物件の売主や貸主などからも同意を得ておくと安心です。
カメラオフは不可
IT重説の要件でも確認したように、双方向で音声と映像のやりとりが行えることが条件となっているため、原則としてお互いにカメラはオンの状態にしておかなければなりません。相手方が操作に不慣れである可能性や、事前通知なしで画面に顔を出すことに抵抗を感じてしまうケースも踏まえると、あらかじめカメラオンが必須であることも伝えておくと安心です。
内覧の実施を勧める
不動産取引を行うにあたって、買い手や借り手に内覧を行ってもらうことは、法律上の義務ではありません。そのため、IT重説が解禁されたことで、内覧なしで物件の契約が締結されるケースも増えています。
しかし、やはり物件の内部に関する事情は、口頭の説明や写真・映像だけではどうしても把握しきれません。内覧を省略したばかりに、契約後にイメージと違うと感じ、トラブルに発展してしまうリスクは高まるといえます。
賃貸と比べて、売買で内覧を行わないケースは多くありませんが、省略を希望する顧客に対しても内覧の実施は勧めた方が望ましいと考えられます。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:IT重説とは?
A:IT重説とは、パソコンやスマートフォンなどの端末を利用し、対面時と同じように重要事項説明を行うことです。2017年の導入後は賃貸借契約のみで用いられていましたが、2021年以降は売買契約でも解禁されました。
Q:IT重説のデメリットは?
A:まずは、会社側と顧客側の双方でIT環境の整備をしなければならない点が課題となります。また、IT化することで重説が気軽なものになってしまい、内容の聞き逃しによるトラブルなども懸念されます。
Q:IT重説の注意点は?
A:円滑に重説を進めるためには、「事前に関係者の同意を得る」「カメラはオンにしなければならないことを伝えておく」などのポイントが重要となります。また、重説をITで済ませる場合でも、トラブル予防のために内覧は実施してもらうように勧めることも大切です。
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