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普及が加速度的に進むZEH賃貸 そのメリット&デメリットとは

普及が加速度的に進むZEH賃貸 そのメリット&デメリットとは

LIFULL HOME’S総研の中山です。
今回は、2023年から話題になり始めたZEH賃貸について解説します。ZEH=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスはもっぱら一戸建て住宅を前提に作られた規格でしたが、集合住宅、特に分譲マンションや賃貸マンションで大手供給会社が採用し始め、供給も急拡大しています。

目次[非表示]

  1. 1.ZEHは省エネ&断熱しながら太陽光パネルで創エネする一次エネルギー消費量ゼロ住宅
  2. 2.ZEH賃貸を運用するメリット 果たしてデメリットはあるのか?

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ZEHは省エネ&断熱しながら太陽光パネルで創エネする一次エネルギー消費量ゼロ住宅

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスとは、省エネ、高断熱、創エネという3つの機能・特長を併せ持った住宅のことです。

具体的には、①住宅の一次エネルギー消費量=冷暖房など住宅内で使用される年間エネルギー消費の総量を、基準値の80%以下に抑制し(等級6に相当)、②夏に熱を住戸内に侵入させない「日射遮蔽効果」と、冬に住戸内から熱を逃さない「断熱効果」が高く(等級5に相当)、③太陽光パネルや燃料電池エネファームなどの再生可能エネルギー装置が設置されていて、生産エネルギーが消費エネルギーを上回り、エネルギーの消費量が生産量との通算でゼロとなる住宅です。

特にZEH基準を満たしている分譲マンションおよび賃貸マンションはZEH-M、ZEH賃貸などと言われています。ここからがやや複雑なのですが、マンションにおけるZEH基準は創エネの能力に応じて4段階に分けられています。

1.ZEH-M:生産エネルギーが消費エネルギー以上、通算するとゼロ以下
2.Nearly ZEH-M:生産エネルギーが消費エネルギーの75%以上、通算で消費量が1/4以下
3.ZEH-M Ready:生産エネルギーが消費エネルギーの50%以上、通算で消費量が1/2以下
4.ZEH-M Oriented:エネルギーは生産するが生産量自体は問わない

4種類ともZEH基準そのものは満たしており、壁や屋根などの気密性基準(強化外皮性能)、再生可能エネルギー装置の設置、消費電力の20%以上をセーブ可能、などの条件は共通しています。

創エネの能力に4段階の違いはあるものの、現状の住宅性能は省エネ性=エネルギー消費の削減と、断熱性=夏涼しく冬暖かいことに主眼を置いていますから、その条件を満たした上で創エネまでしてくれるZEHは、大変性能に優れ、コスパの良い住宅ということになります。

ZEH賃貸を運用するメリット 果たしてデメリットはあるのか?

ZEHの規格は上記の通りですが、このZEH-M、ZEH賃貸を運用するメリットはどこにあるのでしょう。

まず、住宅性能が高く年間の光熱費が大きく削減できます。使い方次第ですが、一般賃貸住宅と比較して年間10万円以上の光熱費削減ができたという報告もありますから、その分が賃料に乗っていても年間のトータルコストは同じなので、賃料を高めに設定することも可能です。また、2024年4月からは省エネ性能表示制度が開始され、ZEH賃貸であることという省エネ性能ラベルを広告に表示して大いにアピールすることもできます。

また、ZEH賃貸の建築について、条件次第では活用可能な補助金制度も用意されています。大規模な賃貸住宅の建設を前提としたものが多いのですが、低層ZEH-M支援事業(住宅用途部分が3層以下の集合住宅を対象にした補助制度:1戸50万円/年間3億円/1事業6億円を上限として補助)を活用すれば、補助金を得て利回りを引き上げることが可能になります。

ただし、物件の建築にあたって「環境共創イニシアチブ(SII)」に登録している建築会社に依頼しなければならないなどの諸条件がありますのでご注意ください(当該支援事業は2023年末で公募が締め切られていますが補正予算で毎年実施されています)。

また、最新のZEH仕様の賃貸住宅ですから、従来の物件との差別化も比較的容易です。春先や秋口では大きな違いは感じられなくとも、繁忙期である2~3月や夏期には室外との温度差が体感できるため、ZEH賃貸が夏涼しく冬暖かいことをユーザーに実感してもらうことができます。結果的に空室リスクのヘッジにもなります。

さらに、太陽光パネルや燃料電池エネファームなどが設置されているため、売電によって収益を上げ利回りを上げることもできますし、賃借人であるユーザーに少し安価に利用してもらって電気料収入を得る(入居者売電方式)ことも可能です。つまり賃料以外の収益も得られることになります。

このようにメリットが多い物件としてアピール可能なので、運用を終了し出口を検討する際も、省エネ、高断熱、創エネに対応している賃貸住宅であることで売却額も高くなることが期待されます。

ただ、メリットしかないように感じられるZEH賃貸ですが、実際には太陽光パネルの償却期間が17年と比較的短く、交換すると100万円超のコストが発生するなど、運営管理コストも一般賃貸住宅と比較して高めにならざるを得ないこと、必然的にイニシャルコストも高くなることなど、事業の参入障壁が比較的高いことはあらかじめイメージしておく必要があります。また、もっぱら屋根に太陽光パネルを設置する必要があるので意匠においても制限が出てくる可能性がありますし、自然災害にも配慮が必要です。

ZEH賃貸はまだまだ数が少なく認知度アップもこれからですが、2024年4月からは省エネ性能表示制度が始まります。これによってユーザーは光熱費と賃料を合算した“トータルコスト”をより強く意識するようになりますから、住宅性能の良さ=コスパの良さと認識されることで、ZEH賃貸への注目度も確実に高まることでしょう。

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中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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