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不動産IDとは? 国土交通省のガイドラインの概要と今後の動きを解説

不動産IDとは? 国土交通省のガイドラインの概要と今後の動きを解説

2022年3月、国土交通省は不動産のスムーズな特定を図ることを目的として、「不動産ID」のガイドラインを公表しました。不動産IDが本格的に実用化されれば、物件データのスムーズな連携が可能となり、不動産取引にも大きな影響が生まれていくと考えられます。

今回は不動産IDの目的とガイドラインの概要、導入によって期待されるメリットなどを詳しく見ていきましょう。
(出典:国土交通省『不動産IDルールガイドライン』

目次[非表示]

  1. 1.不動産IDとは
  2. 2.不動産IDが導入された背景と目的
    1. 2.1.導入の背景
    2. 2.2.不動産IDの目的
  3. 3.不動産IDによって期待される効果
  4. 4.不動産ID活用の基本的な考え方
    1. 4.1.誰でも自由に活用できる
    2. 4.2.データの取扱いには注意が必要
    3. 4.3.必ずしも物件情報広告に表示しなければならないというわけではない
  5. 5.不動産IDに関する今後の取り組み

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不動産IDとは

「不動産ID」とは、不動産を即座に特定できる17ケタの番号のことです。すでに存在している13ケタの不動産登記番号を基礎に、4ケタの特定コードを加えて構成されます。
 
すでに付与されている13ケタのみで対象の不動産を特定できる場合(土地や一戸建て、区分所有建物の専有部)は4ケタの特定コードを「0000」とします。一方、13ケタだけでは特定できない対象(賃貸物件の各部屋やオフィスの各フロア)については、ルールに基づいた方法で4ケタの数字を割り当てるという仕組みです。
 
たとえば、オフィスや店舗であれば13ケタの不動産番号に2ケタの階層コード、2ケタの階数コードを加えることで、詳細なフロアが特定できるようになります。このように、その不動産の建物だけでなく階数や部屋までをコードのみで表現できるようにすることが、不動産IDの基本的な目的です。

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不動産IDが導入された背景と目的

不動産IDは国が行うデータ整備・連携・オープン化事業の一つとされます。ここでは、不動産IDが導入された背景について見ていきましょう。

導入の背景

従来の不動産登記の仕組みでは、幅広い場面で共通して用いられている番号が存在していませんでした。そのため、住所や地番の表記ゆれなどによって、物件の特定が妨げられてしまうケースも少なくありませんでした。
 
不動産仲介や開発を行う際には、多様な所有者の不動産関連情報を集めなければならないため、特定の難しさが事業の効率を低下させる課題となっています。そこで、不動産をより明確に特定できるルールとして整備されたのが不動産IDです。
 
国土交通省の不動産IDルール検討会によって、2022年3月に「不動産IDルールガイドライン」がまとめられると、順次適用が始まっています。

不動産IDの目的

不動産IDルールガイドラインによれば、不動産IDは「官民の各主体が保有する不動産関連情報の蓄積・活用、消費者への的確な情報発信等を促進する」ことを目的としたものです。原則として、官民を問わず誰でも自由に活用できることを想定しており、不動産業界全体の生産性を向上させることが期待されています。
 
そのうえで、今後は電気やガス・水道・通信といったインフラ整備や、まちづくり、物流などにも広く活用されることを想定しています。

不動産IDによって期待される効果

不動産IDルール検討会の中間とりまとめ資料によれば、不動産IDが普及すれば次のような効果が期待されるとしています。

期待される効果

  • 物件データのスムーズな連携
  • おとり物件の排除
  • 価格査定の精度向上
  • リフォーム履歴等のスムーズな把握
  • 生活インフラ情報に関する事業者間や自治体等とのスムーズな情報交換・データの統合管理
  • 行政が保有する情報との照会の効率化
  • 最新の都市計画情報、ハザードマップなどとのスムーズな連携
  • ビッグデータの活用による新たな不動産関連サービスの創出(高精度AI査定など)

物件情報の名寄せ・ひも付けが容易になることで、不動産データの連携がスムーズになるのが大きな利点です。それにより、たとえば不動産情報サイトなどで同一物件であることが分かりにくいという理由で生じる重複掲載や、おとり物件を排除することができます。
 
また、取引データや住宅履歴情報も活用しやすくなるため、価格査定の精度向上・リフォーム履歴の正確な把握なども可能です。このように、不動産取引のさまざまな場面で効率化・合理化が進んでいくのが不動産IDに期待される効果です。
 
そのうえで、生活インフラ情報に関する情報交換や統合管理もしやすくなるため、都市計画の精度向上やハザードマップとのスムーズな連携も可能となります。さらに、データの取扱いがスムーズに行われれば、高精度AI査定といった新たなサービスの創出にもつながるとされています。

不動産ID活用の基本的な考え方

これまで見てきたように、不動産IDにはさまざまなメリットがあり、きちんと導入が進めば不動産業界全体に多様な恩恵をもたらすと考えられます。ここでは、不動産IDルールガイドラインを基に、活用における基本的な考え方や前提について見ていきましょう。

誰でも自由に活用できる

不動産IDは社会のさまざまな分野で活用が目的とされているため、基本的には誰でも自由に利用できることを前提としています。ただし、法令や公序良俗に反する行為、不当に第三者へ損害を与える目的での利用は認めないというのが原則です。

データの取扱いには注意が必要

不動産IDは、それ自体が特定の個人を識別できるものではありません。しかし、その他の情報と照合すれば特定の個人を識別できる場合は、個人情報保護法で扱われる「個人情報」に該当するため、法令に基づく慎重な取扱いが求められます。
 
この点については、現在個人情報保護法等の法令に基づいて行われている実務の範囲内で不動産IDの利活用を行う場合であれば、特に新たな対応を講じる必要はないとされています。ただし、さらなる不動産IDの利活用を図る場合は、利用方法などに応じて利用目的の適切な公表や、第三者提供時の同意取得といった措置が必要です。

必ずしも物件情報広告に表示しなければならないというわけではない

不動産IDを取得したからといって、必ずしも物件情報広告にIDを表示しなければならないというわけではありません。そのため、たとえば不動産情報サイトなどに不動産IDを表示する場合は、売主や貸主の同意を得る必要があります。

不動産IDに関する今後の取り組み

ガイドラインが公表されて以降、不動産IDに関する取り組みはさまざまな形で実施されています。不動産番号の確認の容易化に向け、自治体が保有するデータとのひも付けや、登記情報連携プラットフォームと連動した不動産IDの取得・確認手法の実用化が進められています。
 
また、2022年の補正予算として、不動産IDの社会実装を進めるための官民連携プラットフォームの設置や、各分野におけるユースケース展開に向けた技術実証の経費が約4.5億円計上されました。このように、国レベルでは利活用への積極的な施策が打ち出されています。
 
一方で、不動産IDが実際に有効利用されるためには、十分な数のデータを蓄積することが不可欠です。現状では大小さまざまな不動産会社や所有者のすべてに浸透しているとはいえず、登録や活用の徹底には高いハードルを乗り越えなければならないのも確かです。
 
不動産IDの本来の目的を実現するためには、官民一体となり、より多くの主体が不動産IDを不動産関連情報にひも付けていくことが必要とされます。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
 
Q:不動産IDとは?
A:
不動産IDとは、不動産を即座に特定するために付与される17ケタの番号のことです。すでに存在している13ケタの不動産登記番号を基礎に、4ケタの特定コードを加えて構成されます。
 
Q:不動産IDを導入する利点は?
A:
不動産データのスムーズな利活用が可能になることで、不動産業界全体の事業効率化やサービスの向上が期待できます。また、災害情報のひも付けやまちづくり、新たなサービスの創出といった面にも活用できると考えられています。
 
 
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