「マンションストック長寿命化等モデル事業」とは?制度の概要と補助金について紹介
日本の中古マンション総数は年々増加の一途をたどっています。それに伴い、空室の増加や老朽化などの問題が発生していることから、中古マンションにおける維持管理の適正化・再生の円滑化は国レベルでの課題となっています。
今回は、関連する代表的な取組みとして実施されている、「マンションストック長寿命化等モデル事業」について、最新のデータ(『令和6年度マンションストック長寿命化等モデル事業 募集要項 』)をもとに概要や募集要件を見ていきましょう。
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目次[非表示]
- 1.マンションストック長寿命化等モデル事業とは?
- 2.応募するための共通要件
- 3.①評価委員会による評価を踏まえたうえでの採択
- 3.1.②情報公開・国への情報提供への協力
- 3.2.③2024年度中の事業化
- 4.各事業の要件
- 4.1.先導的再生モデルタイプとは
- 4.2.先導的再生モデルタイプの要件
- 4.3.管理適正化モデルタイプとは
- 4.4.管理適正化モデルタイプの要件
- 5.対象となる事業者
- 5.1.計画支援
- 5.2.工事支援
- 5.3.補助対象となる費用
- 5.4.計画支援(先導的再生モデルタイプおよび管理適正化モデルタイプ)
- 5.5.先導的再生モデルタイプ(改修工事支援)
- 5.6.先導的再生モデルタイプ(建替え工事支援)
- 5.7.管理適正化モデルタイプ(改修工事支援)
- 5.8.注意点
マンションストック長寿命化等モデル事業とは?
まずは、「マンションストック長寿命化等モデル事業」とはどのような制度なのか、導入された背景も踏まえて確認しておきましょう。
制度の背景
「マンションストック」とは、国内に現存している中古マンションのことです。国内のマンションストック総数は過去50年以上にわたって連続的に増加しており、2022年度末時点では「約694.3万戸」にものぼるとされています。
マンションストックは日本における膨大な建築資産であり、住環境整備の観点から見れば、有効に利活用されるのが望ましいものです。一方で、築年数が経過した高経年マンションの割合が増えており、「老朽化による居住者・近隣住民への危険性」「管理不全による多大なコストの発生」などが大きな課題となっています。
そこで、主に高経年マンションにおける管理体制の整備と、中古市場の流通円滑化を目的に導入されたのが「マンションストック長寿命化等モデル事業」です。
制度の概要
マンションストック長寿命化等モデル事業は、2020年度から国土交通省が実施している支援制度です。老朽化マンションの改修や建替えにあたり「政策目的に適合した取組み」であり、「独自性・創意工夫、合理性、合意形成、工程計画、維持管理などの点で総合的に優れた再生プロジェクト」を公募し、国がその実施に必要な費用を補助する仕組みです。
具体的な支援はプロジェクトの種類に応じて、「先導的再生モデルタイプ」と「管理適正化モデルタイプ」の2種類が設けられています。
応募するための共通要件
マンションストック長寿命化等モデル事業を利用するには、一定の要件を満たしたプロジェクトを提案し、適切な手順で応募する必要があります。ここでは、「先導的再生モデルタイプ」と「管理適正化モデルタイプ」の両者に共通する基本要件を3つ見ていきましょう。
①評価委員会による評価を踏まえたうえでの採択
提案するプロジェクトは、学識経験者で構成された「評価委員会」による評価を踏まえたうえで採択されるものである必要があります。また、事業の段階によって以下のような要件も定められています。
その他の詳細モデル
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(出典:国土交通省「令和6年度マンションストック長寿命化等モデル事業 募集要領」)
モデル事業としての役割を踏まえて、いずれにおいても「先導性」が評価委員会で認められることが重要な要件となっています。
②情報公開・国への情報提供への協力
プロジェクトの内容やプロセスについては、国が事例集などを作成する際に、情報提供の協力をすることも要件となっています。これは、先導的な工事内容などをほかのマンション再生でも生かし、事業の取組み効果を高めることが目的です。
③2024年度中の事業化
具体的には、以下のいずれかを2024年度中に実施することが要件となっています。
事業化に該当する要件
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なお、交付決定前に着手したものは補助金交付の対象外となるので注意が必要です。
各事業の要件
先述のとおり、マンションストック長寿命化等モデル事業には、「先導的再生モデルタイプ」と「管理適正化モデルタイプ」の2種類があります。さらに、それぞれには事業前の立ち上げ準備段階をサポートする「計画支援」と、工事実施段階をサポートする「改修工事支援(建替え支援)」の2つの事業タイプが用意されています。
ここでは、各モデルの内容と要件について抜粋して見ていきましょう。
先導的再生モデルタイプとは
先導的再生モデルタイプとは、マンションの長寿命化に向けて、新しい工法や材料、機能の導入などを行う事業に対する支援制度です。計画支援では、これらに必要な調査・検討といった準備段階を対象としています。
マンションの長寿命化を図るには、どのように再生を図るのかについて、区分所有者の間で十分に比較検討し、専門家のアドバイスも参考にしながら合意形成を行わなければなりません。計画支援はそのためのサポートを目的としています。
また、改修工事支援では、具体的な改修工事や建替え工事に対する支援を行います。
先導的再生モデルタイプの要件
先導的再生モデルタイプでは、それぞれ以下のような要件が設けられています。
対象事業 |
要件 |
---|---|
計画支援 |
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改修支援 |
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建替え支援 |
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管理適正化モデルタイプとは
管理適正化モデルタイプとは、管理水準の低いマンションが地方公共団体と協力して、適正化を図っていくことをサポートする制度です。計画支援では管理水準の向上に向けた大規模修繕工事などの事業を実現するための調査・検討などを対象としています。
また、改修工事支援では大規模修繕工事等の実施段階が対象です。
管理適正化モデルタイプの要件
管理適正化モデルタイプの要件は以下のとおりです。
対象事業 |
要件 |
---|---|
計画支援 |
|
改修支援 |
|
なお、管理適正化タイプについては、建替え工事を対象外としているので注意が必要です。
対象となる事業者
続いて、各事業の対象事業者についてそれぞれ見ていきましょう。
計画支援
計画支援では、マンション再生に向けた提案、アドバイスを行う立場にある事業者が対象です。具体的には、「マンション再生コンサルタント」「設計事務所」「管理会社」などが想定されています。
工事支援
工事支援では、管理組合から工事を請け負う「施工会社」、工事を実施したうえで個人などに売却する「買取再販事業者」、管理組合と関わって改修事業や建替え事業に参画する「事業参画者」が対象となります。
補助対象となる費用
各提案事業の補助対象事業費については、交付事務局が明細等の精査を行い決定するものとされています。ここでは、各事業における補助金の上限について解説します。
計画支援(先導的再生モデルタイプおよび管理適正化モデルタイプ)
計画支援では、選定1案件につき「年間500万円(最大3年)」が上限です。なお、以下の調査・検討を行う場合には、1案件につき「年間600万円」が上限となります。
年間600万円が上限となる調査・検討内容
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なお、要除却認定とは、特定行政庁によって耐震性やバリアフリー性の不足が認定されることを指します。要除却認定されたマンションは「大きな危険性を伴う」あるいは「インフラに問題がある」とみなされ、速やかな建替えが望まれることから、建替え時に容積率の緩和などの適用を受けることができます。
先導的再生モデルタイプ(改修工事支援)
先導的再生モデルタイプの改修工事支援では、以下の費用の合計「3分の1以内」の金額が補助されます。
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先導的再生モデルタイプ(建替え工事支援)
先導的再生モデルタイプの建替え工事支援では、以下の費用の合計「3分の1以内」の金額が補助されます。
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管理適正化モデルタイプ(改修工事支援)
管理適正化モデルタイプの改修工事支援では、以下の費用の合計「3分の1以内」の金額が補助されます。
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注意点
具体的な補助額については、評価委員会などでの審査に基づき、応募に際して提出された事業計画や補助要望額などを総合的に考慮して決定されます。そのため、事業が選定された場合でも、採択通知に記載された金額が全額補助されるとは限りません。
その他、『令和6年度マンションストック長寿命化等モデル事業 募集要項』には細かな経費の取り決めや支払い確認の方法なども記載されているので、利用を検討する場合は必ず目を通しましょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:マンションストック長寿命化等モデル事業とは?
A:マンションストックの有効活用や管理適正化を目的とし、主に高経年マンションの修繕や建替えなどをサポートするために設けられた制度です。増加を続ける高経年マンションの円滑な再生を図るため、国土交通省によって2020年度から実施されています。
Q:マンションストック長寿命化等モデル事業の応募要件は?
A:応募要件は「3つの共通要件」と「各種事業の要件」の2つに分かれています。応募するためには共通要件をすべて満たしたうえで、利用する事業の要件をクリアする必要があります。
Q:マンションストック長寿命化等モデル事業の支援内容は?
A:計画支援では、選定1案件につき「年間500万円(最大3年)」(場合によって年間600万円)が上限です。その他の事業では、各対象内容における合計費用の「3分の1以内」が上限となります。