LPガスの一部法改正が7月2日に施行。不動産業界に求められることは?
経済産業省は、LPガスの商慣行是正を目的に、2024年4月2日、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する省令を公布しました。LPガスはガスボンベを設置すれば、都市ガスの利用できない山間部などでも利用することができるという利便性がある一方で、かねてから独特の商慣行が問題になっていました。
法改正の内容と、今後、不動産業界で求められる対応について確認しておきましょう。
目次[非表示]
- 1.LPガス料金への上乗せが問題に
- 2.法改正で何が、いつから変わる?
- 2.1.過大な営業行為の制限
- 2.2.三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)
- 2.3.LPガス料金などの情報提供
- 3.求められる不動産業界とLPガス事業者の連携
- 4.今後の予定
LPガス料金への上乗せが問題に
家庭で利用されるガスは、主に「都市ガス」と「LPガス」の2つですが、2021(令和)3年度末の時点※では、LP ガスが約 36%、都市ガスが約 44%、オール電化などが約 20%と、都市ガスに次いで普及割合が高いことが分かります。32の道県では、LPガスの使用世帯数が50%を上回っており、全国の多くの家庭で使用されています。
※参考:総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 資源開発・燃料供給小委員会 液化石油ガス流通ワーキンググループ 中間とりまとめ ~LPガスの商慣行是正に向けた対応方針~
LPガスの家庭利用が普及するのに伴い、他社との競争が激化。賃貸住宅のオーナーへ住宅に関連する設備を無償提供し、ガスの供給契約を得るという営業手法が広まりました。給湯器やガスコンロ、エアコンなど、設備の費用をLPガス事業者は負担し、集合住宅へ提供。その後、LPガスの料金に上乗せされ、その上乗せ分は入居者が支払うという状況が続いていました。法改正は、長年続いてきた商慣行を是正する目的があります。
エアコンや給湯器、インターホン、Wi-Fiなど、LPガスとは関連のない住宅設備が無償提供され、結果的に、ガス料金を入居後に知ることになる入居者が費用負担することが問題となっています
法改正で何が、いつから変わる?
経済産業省は、2024年4月2日に「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する省令」を公布。一部改正内容が公布から 3 ヶ月後に施行されました。これにより、LPガスの商慣行を是正するための新たな規律が設けられることとなります。主な改正内容は下記「過大な営業行為の制限」「三部料金制の徹底」「LPガス料金等の情報提供」の3つです。そのうち、「過大な営業行為の制限」「三部料金制の徹底」 など、義務にかかる規律については、 罰則規定のある条文に位置づけられます。
過大な営業行為の制限
LPガス事業者が、不動産や建設関係者などに対し、設備貸与や紹介料などの形で過大な利益供与を行うなどの営業行為が制限されます。
- 正常な商慣習を超えた利益供与の禁止
- 消費者の事業者選択を阻害するおそれのある、LPガス事業者の切替えを制限するような条件付き契約締結等の禁止
主な対象
LPガス事業者
いつから適用?
「過大な営業行為の制限」は、2024年7月2日施行
三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)
現状、不透明となっている料金表示を是正するため、基本料金、従量料金、設備料金からなる三部料金制が徹底されます。LPガスとは関係ない費用などが上乗せされている状況を是正するため、下記の措置が講じられます。
- 基本料金、従量料金、設備料金からなる三部料金制(設備費用の外出し表示)の徹底
- 電気エアコンやインターホン、Wi-Fi機器など、LPガス消費と関係のない設備費用のLPガス料金への計上禁止
- 賃貸住宅向けLPガス料金においては、ガス器具等の消費設備費用についても計上禁止(LP ガス料金の算定の基礎となる項目を基本料金、従量料金、設備料金とした上で、設備料金は「該当なし」と記載)
(注)上記1は新規契約・既存契約ともに適用。上記2および3は新規契約のみ適用(既存契約は早期移行努力義務)。
主な対象
LPガス事業者、賃貸集合住宅のオーナーなど
いつから適用?
「三部料金制の徹底」は、2025年4月2日施行
LPガス料金などの情報提供
賃貸集合住宅の場合、入居者は、入居後にLPガス事業者を変更することはできません。それを踏まえ、入居前にLPガス料金などの情報を入手できるよう、下記の措置が講じられます。
- 入居希望者へのLPガス料金の事前提示の努力義務(入居希望者に直接、またはオーナー、不動産管理会社、不動産仲介業者等を通じて提示)
- 入居希望者からLPガス事業者に対して直接情報提供の要請があった場合は、それに応じることを義務付け
主な対象
賃貸集合住宅のオーナー、管理会社、仲介会社、LPガス事業者など
いつから適用?
「LPガス料金等の情報提供」は、2024年7月2日施行
(出典:経済産業省 LPガス法改正省令の概要)
求められる不動産業界とLPガス事業者の連携
改正省令の施行と同時に、取引適正化ガイドラインが改正されました。賃貸集合住宅の入居者へ、LPガス料金などの情報を事前に提示することが求められています。国土交通省の通知(LPガスの商慣行是正に向けた制度見直しについて)から、不動産業界に求められることをまとめました。
1. 過大な営業行為の制限(2024年7月2日施行)
LPガス事業者における無償貸与、無償配管工事、紹介料支払いなどの利益供与(過大な営業行為)が禁止されます。 そのような営業行為には応じず、また、利益供与を求めないこと。もし問題行為があった場合は、資源エネルギー庁の「LPガス商慣行通報フォーム」へ報告。
2. LPガス料金等の情報提供(2024年7月2日施行)
賃貸借契約前に消費者がLPガス料金を事前に知る仕組みが法定化されます。
LPガス料金表等の情報が提供されていることを前提とし、消費者に適切に情報提供すること。必要に応じ、賃貸借契約前の消費者がLPガス料金表を事業者に直接要請し情報の提示を受けることができる旨を案内。
3. 三部料金制の徹底(2025年4月2日施行)
LPガス事業者は新規契約では設備費用をLPガス料金に計上しないこと、 既存契約でも設備費用の外出し表示を求められます。これらを踏まえ、三部料金制施行に向けてLPガス事業者からの相談があった場合は、それに対応すること。
(出典:消費者庁 LPガス消費者向け 注意喚起ポスター(LPガス料金を契約前に確認しましょう))
(出典:消費者庁 LPガス消費者向け 注意喚起ポスター(LPガス料金を契約前に確認しましょう))
国土交通省のHPでは、不動産業界団体向けの通知内容など、関連資料が確認できます。
今後の予定
経済産業省は、施行後に、今回の法改正の効果検証を予定しています。資源エネルギー庁ホームページ内にある匿名でも投稿可能な通報フォームから送信された内容や、大手事業者への公開ヒアリング、フォローアップ調査の結果などを確認し、今後、改善につなげていくとしています。
(出典:経済産業省 LPガス法改正省令の概要)
>> LPガスの制度改正は2025年から! 影響について詳しく解説
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