空き家が犯罪の標的に? とるべき防犯対策を解説
近年、空き家の増加が社会的な課題となっていますが、放置された空き家が犯罪に利用されるリスクがあることをご存じでしょうか?
一度犯罪の温床となってしまうと、所有者も責任を問われたり、資産価値の低下などの不利益を被ったりする可能性があります。そのため、空き家には適切な防犯対策が求められます。
この記事では、空き家を放置することによる具体的な犯罪リスクと、それを防止するために必要な対策を解説します。不動産会社が果たすべき役割や効果的な管理方法についても触れていくため、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.日本における空き家の現状
- 2.空き家を放置することが招く犯罪リスクとは?
- 2.1.放火
- 2.2.犯罪グループによる不法占拠
- 2.3.空き巣
- 3.空家等対策の推進に関する特別措置法
- 4.必要な防犯対策
- 5.不動産会社に求められる空き家対策
- 6.空き家は早めの対策が重要
日本における空き家の現状
総務省が発表した「令和5年住宅・土地統計調査住宅数概数集計(速報集計)結果」によると、国内の空き家数は右肩上がりに増加を続けており、2023年時点で900万戸を超えています。
総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果より、空き家数及び空き家率の推移-全国(1978年~2023年)
(出典:総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果)
この空き家増加には、少子高齢化や人口減少といった日本の社会的要因が大きく関係しています。特に、親が亡くなったあとに実家を相続したものの、住む予定がないまま放置されるケースも多いようです。
また、空き家を解体しようにも多額の費用がかかるため、そのまま放置する人も少なくありません。さらに、空き家を解体して更地にすると、固定資産税の軽減措置がなくなり税負担が増すことも、解体をためらう一つの要因となっています。
今後、少子高齢化が一層進むなか、空き家の増加はさらに深刻化すると予想されています。
空き家を放置することが招く犯罪リスクとは?
空き家を適切に管理せずに放置すると、さまざまな犯罪に巻き込まれるリスクが高まります。特に次のような犯罪が発生しやすくなるでしょう。
・放火
・犯罪グループによる不法占拠
・空き巣
以下で順に見ていきましょう。
放火
老朽化が進んだ空き家は人目につきにくく、放火のターゲットになりやすいといわれています。
特に、敷地内に可燃ゴミが放置されていると、火が広がりやすくなり、さらにリスクが高まるでしょう。放火による火災は空き家だけでなく、周囲の建物にも被害を及ぼす可能性があり、被害が拡大するおそれもあります。
消防庁の令和5年度消防統計(火災統計)によれば、総出火件数3万8,672件を原因別に見ると、多い順に「たばこ」3,498 件、「たき火」3,473 件、「こんろ」2,838 件、「放火」2,495 件となっています。「放火」および「放火の疑い」を合わせると4,111件と約1割を占めており、空き家であればおのずとリスクが増すことが考えられます。
参照:令和5年(1月~12月)における火災の状況(確定値)について
犯罪グループによる不法占拠
住宅に「誰も住んでいない」と認識されると、他者による不法侵入のリスクが高まります。
一度侵入されてしまうと、そのまま長期間住みつかれてしまうケースもあり、所有者にとって大きな問題となります。さらに、人目につきにくい空き家は、犯罪グループにとって格好の隠れ場所となりやすいのも特徴です。
たとえば、特殊詐欺の被害金や違法薬物の受け渡し拠点として悪用されることもあれば、大麻などの違法植物の栽培場所として利用されるケースも報告されています。こうした犯罪行為に利用されてしまうと、空き家の資産価値が低下するだけでなく、地域の治安悪化にもつながります。
空き巣
放置されている空き家では、室内に現金や貴金属などの貴重品や、電化製品などの資産が残ったままになっていることも少なくありません。
このような空き家は、一度侵入されると金品をすべて奪われる可能性があります。特に、現金や貴金属類、パソコンなどの電化製品を放置している場合は注意が必要です。
空き家は人目につきにくいため、被害の発覚が遅れやすく、その間に状況がさらに悪化する恐れもあります。また、盗難だけでなく、大切な遺品が破損されるリスクもあるでしょう。
空き家は犯罪リスクだけでなく、長期にわたり放置すると倒壊の危険性や、周囲の治安への悪影響なども問題となります。早めの対策が必要です
≫ 粗大ごみや不法投棄の対処法は? 放置した場合のリスクと予防策
≫ 闇バイトの被害から人命と住居を守る対策は? 防犯力を高めるための助成金も紹介
空家等対策の推進に関する特別措置法
ここまでの解説で、空き家を放置することでさまざまなリスクが生じてしまうことを理解できたと思います。こうした問題を受け、政府は2014年に空家等対策の推進に関する特別措置法を制定します。その後、2023年に改正が行われ、自治体による空き家対策の権限が強化されるなど、より実効性のある施策が導入されました。
この法律により、自治体は「保安上・景観上・衛生上の問題がある」と判断した空き家を「特定空き家」に指定し、管理の強化や取り締まりを行うことが可能になりました。
特定空き家に指定されると、所有者は以下のような措置を受けます。
・解体や修繕、立竹木の伐採に関する助言・指導
・指導に従わず改善が見られない場合は最終的に強制撤去
・固定資産税の優遇措置の除外
このように、特定空き家に該当してしまうと、空き家の所有者は行政からの指導を受け、経済的な負担を強いられることになります。そのため、空き家の所有者は、特定空き家に指定されないように適切な管理を行うことが重要です。
参照:e-Gov 法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)
国土交通省は、空き家対策などに関する特設サイトで空き家のリスクや法改正についてなどの情報発信をしています
(出典:国土交通省 住宅・空き家対策 特設サイト)
≫ 不動産会社が知っておくべき「空家対策特別措置法の改正ポイント」
必要な防犯対策
ここからは、空き家が犯罪に利用されないための効果的な防犯対策を紹介します。有効な防犯対策として、以下の方法が挙げられます。
・定期的に空き家の管理を行う
・防犯カメラを設置する
・空き家管理サービスを利用する
空き家を長期間放置すると「誰も住んでいない」と判断され、犯罪に利用されやすくなります。そのため、定期的に空き家に訪れて庭の手入れや郵便物の管理を行い、状態を維持することが重要です。手入れが行き届いていれば、「管理されている家」と認識され、犯罪の標的になりにくくなるでしょう。
防犯カメラも、設置するだけで犯罪の抑止効果が期待できます。万が一侵入された場合も、録画映像が残るため、犯人の特定や捜査に役立つでしょう。
遠方に住んでいるなどの理由で空き家の管理が難しい場合は、空き家管理サービスの導入もおすすめです。このサービスでは、専門のスタッフが定期的に空き家の状態を確認してくれ、異常があれば早期に対応してもらえます。
空き家管理サービスには、定期的な訪問や内部・外部の確認などが含まれるものもあります。お願いしたい内容や定期訪問の頻度、対象エリアなどを確認して検討するとよいでしょう
≫ マンションに防犯カメラの設置は必須? メリットや有効な設置場所を解説
不動産会社に求められる空き家対策
空き家に関して、不動産会社に寄せられる相談は少なくありません。所有者が管理や活用方法に悩んでいる場合、不動産会社として適切な対策を提案できれば大きな信頼を得られます。
提案できる主な選択肢として、以下のような対策が考えられます。
・管理サービスの導入
・空き家の早期売却
・土地活用の提案
不動産会社が提供する空き家管理サービスを導入し、定期的な巡回や清掃、庭の手入れを行うことで、健全な状態を維持できるようになります。特に、遠方に住んでいる所有者にとっては、有効な選択肢となるでしょう。
また、空き家の早期売却を提案するのも一つの方法です。早期売却を進めることで、固定資産税や維持管理費などの負担を軽減できます。
売却が難しい場合は賃貸物件として活用する、あるいは更地にして駐車場や貸倉庫として運用するなど、土地の有効活用を提案することも考えられます。地域のニーズに合った活用方法を見極めることで、所有者にとって最適な提案ができるようになるでしょう。
国土交通省は、賃貸住宅管理業者向けにリーフレットを作成し、空き家対策の協力を呼びかけています
(出典:国土交通省 特殊詐欺、不正薬物の密輸等に悪用される空き家(空き部屋)等の対策にについて)
≫ 不動産業による空き家対策推進プログラム|媒介報酬の見直しを含めて解説
≫ 2024年7月1日以降、800万円以下の不動産契約で仲介手数料見直し
空き家は早めの対策が重要
管理されていない空き家は「放火」「不法占拠」「空き巣」といった犯罪の標的になりやすく、所有者にとっても大きなリスクとなります。そのため、定期的な管理や防犯対策を講じることが重要です。
また、空き家を放置し続けると「特定空き家」に指定され、行政からの指導を受けたり固定資産税の優遇措置が除外されたりなど、経済的な負担も増す可能性があります。こうした不要なトラブルを避けるためにも、早めの対策が重要です。
不動産会社としても、空き家管理サービスの導入や早期売却、土地活用の提案など、所有者の意向を踏まえた提案が求められます。適切なサポートを行うことで、空き家問題の解決に貢献するとともに、新たなビジネスチャンスを生み出すことにもつながるでしょう。
≫ 空き家の関連資格を7つ紹介! 期待される空き家の有効活用
≫ 空き家解体助成金を事例で解説。解体費用の相場や検討ポイントも紹介
LIFULL HOME'S Businessでは、不動産業界に関連したコラムやセミナー情報なども公開しております。ぜひご覧ください。
≫ LIFULL HOME'S Businessコラム
≫ LIFULL HOME'S Businessセミナー一覧