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2025年の賃貸住宅市場は”住宅性能元年”に。今後気にすべきことは?

2025年の賃貸住宅市場は”住宅性能元年”に。今後気にすべきことは?

LIFULL HOME’S総研の中山です。

早くも2024年の年末を迎えました。2024年はコロナ禍から本格的に脱却して、不動産・住宅市況も全般的に活況といえる状態にまで回復したのですが、一方で円安が進み、新築住宅市場では人件費、地価、資材価格の高騰というコストプッシュ型の価格上昇が発生。東京23区の新築マンション価格は平均で1億円を突破する歴史的な事態が現在も継続しています。また中古流通市場も新築価格の高騰に連動して相場価格が明らかな上昇を示すエリアが拡大し、住宅はにわかに手の届きにくいものになってしまった感があります。

目次[非表示]

  1. 1.2025年は賃貸市場に“大きなうねり”が発生する?
  2. 2.2025年4月開始、新築の省エネ性能適合義務化は賃貸物件にも適用される
  3. 3.省エネ性能部位ラベルも一因に

2025年は賃貸市場に“大きなうねり”が発生する?

一方の賃貸住宅市場は、本格的なコロナ後の“都心回帰”を受けて市街地への人流の転入が継続し、首都圏を中心と賃貸コロナ禍での低迷から需要が回復したのは喜ばしいことです。ただし、ここでも円安の影響による物価の高騰に対して賃金が思うようには上がらず、実質賃金指数も伸び悩んでいることから、テレワークを前提とした“ファミリー層の郊外化”が顕著になっています。つまり、“都心回帰”しているのは学生や若年単身者が圧倒的多数を占めている状況で、ワンルームタイプの賃貸物件が春先に市場から急減するという現象も発生しました。

このように、住宅市場は、全般的にコロナ前に戻ろうとする人流などの動きと、コロナ後に顕著になった円安や政策金利の先高観などによる新たな動きが交錯し、エリアごとの個別要因も加わって市況がこれから強含むのか弱含むのか、一見するとわかりにくい状況にあります。

それでも、特に動きが速い賃貸住宅マーケットでは、ユーザーの住宅性能に関する関心が高まることによって、“大きなうねり”ともいえるような変化が起き得る可能性があります。

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住宅市場は2つの動きが交錯し、一見すると分かりにくい状況にあるといえます

2025年4月開始、新築の省エネ性能適合義務化は賃貸物件にも適用される

その“大きなうねり”とは、2025年4月から施行される「改正建築物省エネ法」に起因するものです。この法律は、分譲住宅やオフィスだけでなく、賃貸住宅や商業施設などすべての新築建築物にエネルギー消費等級4以上、断熱等級4以上であることを義務付けるものですから、2025年4月1日以降に建築確認を取得した建物については、これを遵守しなければなりません。守らなければ確認済証も検査済証も交付されないので、引き渡しができなくなってしまいます。

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制度の詳細は「建築物の省エネ性能表示制度ホームページ」を参照ください

(出典:国土交通省 建築物の省エネ性能表示制度ホームページ

したがって、今後の日本では、この省エネ性能に適合している住宅かどうかということが、賃貸住宅を含めたすべての住宅の価値を判断する指標になり得るという状況が醸成される可能性が高まります。

当然のことながら、現在市場で流通している賃貸物件の多くはエネルギー消費等級4以上、断熱等級4以上という基準を満たしていませんから、今後性能が劣る=安価にしか貸せなくなる可能性があるのです。しかも現在流通している賃貸物件でも、屋根や壁、玄関ドアやサッシなど住宅の“外皮”といわれる内と外を区分する部位をリフォーム&リノベーションする場合は、新築物件同様にエネルギー消費等級4以上、断熱等級4以上という基準を満たす必要(義務)が発生しますから、ご留意ください。

省エネ性能部位ラベルも一因に

また、この新築物件および中古リフォーム部位への省エネ性能の適合義務化は、省エネ性能表示ラベル(以下、性能ラベル)と省エネ性能部位ラベル(以下、部位ラベル)という2つの表示制度があることも“大きなうねり”を生み出す一因となっています。

 ≫ 速報 既存住宅の省エネ部位ラベルの表示制度開始! その概要と意義

部位ラベルは2024年11月から運用が開始されたばかりですのでまだまだ活用例は少数ですが、半年先んじて4月からスタートした性能ラベルは、LIFULL HOME’Sに掲載されている広告から任意に100物件の事例を抽出調査したところ、既に運用規定どおりにラベル表示を実施している物件が3分の2の66物件に上りました(ラベルとは異なる表示や写真を使用している物件も23物件あり何らかの省エネに関する表記をアピールしたいという意思が表示されています)。賃貸ユーザーに対して有益な情報源として提供可能(もちろん物件の差別化や優位性のアピールに資する)との認識を有する不動産会社が多いことが明らかです。

まだ数は少ないものの、年間の目安光熱費を記載している物件もあり、ユーザー目線で考えると、物件を借りるかどうかの判断材料として有効活用できる資料になり得ますから、今後の活用拡大が待たれると同時に、ユーザーサイドからもラベル表示が好意的に受け止められる証左と受け止めています。

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消費者向け建築物の省エネ性能表示制度チラシ

(出典:国土交通省 建築物の省エネ性能表示制度ホームページ

このように、2025年の賃貸市場には、“省エネ”“断熱”“高性能”“太陽光パネル設置”といったキーワードが多数登場するようになると考えています。何より、ユーザーの関心が生活と交通の利便性だけでなく、夏も冬も快適に過ごせる住環境にシフトすることを考慮すれば、この“大きなうねり”が徐々に、また確実に市場に押し寄せることとなります。

さらに、5年後の2030年には2025年の基準からエネルギー消費等級が6以上、断熱等級5以上、つまりZEH基準へと引き上げられることが既に決まっていますから、中長期的には最低でも今からZEH基準を前提とした省エネ&断熱改修をイメージしておくことをお勧めします。2025年は賃貸市場においても“住宅性能元年”となること認識しておく必要があるのです。

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中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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