不動産の囲い込みが是正処分の対象に。対象となる3つの行為と不動産会社に求められること
不動産取引における「囲い込み」は、売主や買主に不利益をもたらす行為として長らく問題視されてきました。
2025年1月施行の宅地建物取引業法改正では、囲い込みが是正処分の対象として具体的に定義され、特定の行為が厳しく規制されることになりました。この改正により、不動産会社は業務の見直しや透明性の向上のための新たな対応が必要となったのです。
この記事では、囲い込みの具体的な内容や処分対象行為の詳細、さらには業界として求められる対応策について解説します。売買仲介を行う不動産会社の方々にとって今後の業務改善に役立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.不動産の囲い込みとは「顧客や物件情報を独占」すること
- 2.不動産の囲い込みは2025年1月から是正処分の対象
- 3.国土交通省の狙い
- 4.不動産の囲い込みで処分対象となる主な3つの行為
- 4.1.特定の不動産会社のみに物件情報を提供すること
- 4.2.他の不動産会社への情報開示を拒否する行為
- 4.3.指定流通機構(レインズ)への登録を怠る行為
- 4.3.1.・取引情報と成約報告の登録義務
- 4.3.2.・登録済証による確認
- 4.3.3.・ステータス管理機能の活用
- 4.3.4.・事実と異なる登録内容の禁止
- 5.不動産の囲い込みに関して不動産業界に望まれる対応
- 6.まとめ
不動産の囲い込みとは「顧客や物件情報を独占」すること
不動産の「囲い込み」とは、売主から仲介を依頼された不動産会社が物件情報をほかの仲介業者に共有せず、自社で買主を見つけることで両者から仲介手数料を得ようとする行為を指します。
囲い込み行為は一見、「短期間で売却できる」「販売活動を効率的に進められる」といった理由から、売主にとって有利に思える場合もありますが、実際には市場での最適な条件での取引機会を失う可能性があります。
たとえば、物件情報を公開しないことで他社のネットワークを活用できず、幅広い買主層へのアプローチが制限されます。その結果、購入意欲の高い顧客を逃してしまい、売却価格が適正価格を下回る事態が生じることもあります。
また、売主が囲い込みに気付かないまま取引を進めると、あとになって「もっと良い条件で売却できたのではないか」と不満を抱く可能性があります。このような状況は、取引完了後に売主と不動産会社の間でトラブルに発展し、信頼関係が損なわれるリスクを高めます。
令和6年12月国土交通省 売主の皆様向け リーフレットより
(出典:令和6年12月国土交通省 売主の皆様向け リーフレット)
不動産の囲い込みは2025年1月から是正処分の対象
2025年1月の法改正によって、不動産業界における囲い込み行為が厳しく取り締まられることになりました。この新たな規制では、不動産会社による独占的な取引や情報非公開といった行為が処分対象となります。
これにより、不動産会社による公平性を欠いた行為や、売主・買主に不利益を与える行為が厳格に規制されます。
たとえば、物件情報を他の不動産会社に共有せず、自社のみで取引を進める行為が確認された場合、まずは指示処分が下される可能性があります。それでも改善が見られない場合や重大な違反が確認された場合には、罰金や業務停止命令といった厳しい措置が取られるため、注意が必要です。
≫ 2025年1月から「囲い込み」が指示処分の対象に。改正内容をあらためて確認
参照:国土交通省|宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(平成13年国総動第3号)新旧対照条文
国土交通省の狙い
今回の法改正は、消費者の利益保護と不動産取引の透明性向上を目的として、国土交通省が主導して進めたものです。一部の不動産会社による囲い込み行為が市場競争を妨げ、売主や買主に不利益を与える現状が課題とされていたためです。
たとえば、囲い込みによって他の仲介会社からの問合せが排除されることで、売主が市場で最適な売却条件を得られないケースが考えられます。この規制強化は、不動産業界に顧客中心のサービス提供と取引透明性の向上を求めるためのものだといえるのです。
また、この法改正を通じて業界全体の信頼性を高め、公正で競争力のある市場環境を構築することも目指されています。国土交通省は、この法改正により、消費者の選択肢が広がるだけでなく、不動産取引の健全性が向上することを期待しているのです。
不動産の囲い込みで処分対象となる主な3つの行為
ここでは、不動産の囲い込み行為で処分対象となる主な3つの行為について解説します。
特定の不動産会社のみに物件情報を提供すること
特定の不動産会社のみに物件情報を提供し、他の不動産会社からの問合せに対して「申込済み」「契約済み」などの虚偽の情報を伝える行為は、処分の対象となります。また、物件情報の共有を制限する契約や取り決めを結ぶことも、不公正な取引を助長する行為として問題視されており、内容によっては処分の対象となる可能性があります。
このような行為は、売主が多くの買主に情報を届ける機会を失い、最適な条件で売却できなくなる原因となります。さらに、物件情報を隠したり、虚偽の情報を伝えたりすることで、不動産取引全体の透明性が損なわれ、市場の公平性が失われるだけでなく、業界全体の信頼が低下する恐れがあります。
他の不動産会社への情報開示を拒否する行為
物件紹介を拒否したり、媒介契約において特定の不動産会社以外との取引を禁止したりする行為も処分対象に含まれます。これらの行為は、売主にとって取引先の選択肢を狭める結果となり、不公平な状況を生み出します。
たとえば、媒介契約書に「特定不動産会社以外との取引を禁止する条項」を含めると、売主が幅広い買主層に物件をアピールできなくなり、最適な買主に出会う機会を失うリスクが高まります。こうした状況を避けるために処分が行われるのです。
指定流通機構(レインズ)への登録を怠る行為
指定流通機構(レインズ)への正確な情報登録を怠る行為も、処分対象として厳しく規制されています。以下の点が重要なポイントです。
・取引情報と成約報告の登録義務
レインズへの取引情報や成約報告の登録が義務付けられています。登録を怠った場合や虚偽の情報を提供した場合は処分の対象となります。
・登録済証による確認
宅地建物取引業者がレインズに物件を登録したあとは、指定流通機構から発行される登録済証を売主に交付する必要があります。この登録済証を受け取ることで、売主は物件が正しく登録されていることを確認できます。
・ステータス管理機能の活用
レインズのステータス管理機能を通じて、取引の申込み状況や成約状況など最新の情報を適時更新し、正確に反映することが求められます。
・事実と異なる登録内容の禁止
専属専任媒介契約や専任媒介契約に基づいて登録された物件について、登録内容が事実と異なる場合は処分の対象となります。具体的には、取引状況や成約の有無について虚偽のステータスを設定する行為が該当します。
ステータス管理の仕組み(イメージ)。令和6年12月国土交通省 売主の皆様向け リーフレットより
(出典:令和6年12月国土交通省 売主の皆様向け リーフレット)
不動産の囲い込みに関して不動産業界に望まれる対応
不動産業界が囲い込み行為を防ぎ、公正な取引を実現するためには、情報の透明性を高めることが重要です。
囲い込みは、市場の健全性を損なうだけでなく、顧客満足度の低下や業界全体の信頼失墜を招く要因となります。囲い込みが続くようであれば、長期的には収益性にも悪影響が及ぶでしょう。
こうした状況を避けるため、すべての物件情報を正確にレインズに登録し、売主や買主が取引状況をいつでも確認できる環境を整えることが求められます。また、営業方法や契約の仕組みを定期的に見直し、顧客が最適な選択肢を選べる柔軟な対応を心がけることが重要です。これらの取り組みによって、公正で透明性の高い不動産取引を実現し、顧客から信頼される業界を築くことができるでしょう。
さらに、囲い込みに頼らなくても競争力を維持できるよう、差別化を図ることも重要です。たとえば、専門知識を活かした提案や付加価値の高いサービスを提供することで、他社との差別化を図り、顧客満足度を向上させることが可能です。同時に、社内のルールや体制を整え、従業員への研修を通じてコンプライアンスを徹底し、業界全体の健全な成長に寄与する必要があります。
公正で透明性の高い不動産取引の実現、コンプライアンスの徹底が求められます
まとめ
2025年1月の法改正により、不動産業界での囲い込み行為が是正処分の対象となりました。この改正により、取引の透明性と公正性が向上し、業界の信頼性がより高まることが期待されます。これは不動産業界全体にとって、顧客満足度を高める大きなチャンスとなるでしょう。
不動産会社は、法改正をきっかけに日々の業務や手続きの進め方を見直し、社員教育や研修を強化することで、さらなる競争力の向上を目指せます。また、付加価値の高いサービスを提供すれば、顧客との長期的な信頼関係を築くことができるでしょう。
不動産取引の透明性を高めるためには、業界全体が一丸となって囲い込み対策に取り組むことが重要です。公正で信頼される市場を築くために、早急に行動を起こしましょう。
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