おとり広告とは?不動産会社が知るべき罰則・違反事例と防止策

不動産会社にとって、おとり広告は「知らなかった」では済まされないリスクです。故意でなくても違反となり、最悪の場合は免許取消や刑事罰に発展します。
2024年施行の改正景品表示法では直罰規定が新設され、違反行為に対する法的リスクがさらに高まりました。本記事では、おとり広告の定義・法規制・違反事例、自社で実践できる防止策を具体的に解説します。
目次[非表示]
- 1.おとり広告とは
- 1.1.おとり広告に該当する3つの類型
- 1.2.誇大広告・不実告知との違い
- 2.おとり広告の法規制と罰則
- 2.1.宅建業法による規制と罰則
- 2.2.景品表示法と表示規約による規制
- 2.3.改正景品表示法の直罰規定に注意
- 3.おとり広告の違反事例
- 3.1.賃貸仲介での違反事例
- 3.2.売買仲介での違反事例
- 4.おとり広告を防止する社内体制の作り方
- 5.まとめ
おとり広告とは

おとり広告とは、消費者を不当に誘引する目的で掲載する、実際には取引できない物件の虚偽の広告表示のことです。おとり広告は、宅建業法第32条(誇大広告の禁止)および不動産の表示に関する公正競争規約(以下、表示規約)第21条で明確に禁止されています。
おとり広告に該当する3つの類型
表示規約第21条では、おとり広告を以下の3類型に分けて禁止しています。いずれも「実際には取引できない物件で消費者を誘引する」点が共通です。
類型 | 内容 |
|---|---|
(1)存在しない物件 | 架空の物件情報を掲載するケース |
(2)取引できない物件 | 成約済みや重大な瑕疵(かし)があるなど、実際に取引できないにもかかわらず掲載を続けるケース |
(3)取引する意思がない物件 | 集客目的のみで掲載し、実際には売却・賃貸する気がないケース |
特に注意が必要なのは取引できない物件です。賃貸物件は入れ替わりが早く、申し込みが入ってからすぐに削除できていないケースが少なくありません。故意でなくても違反となるため、情報更新の仕組みづくりは必須です。
誇大広告・不実告知との違い
おとり広告と混同されやすいのが「誇大広告」と「不実告知」です。ここでは3つの違いを整理します。
用語 | 発生段階 | 内容 |
|---|---|---|
おとり広告 | 広告段階 | 取引できない物件を掲載する虚偽表示 |
誇大広告 | 広告段階 | 実際より優良・有利と思わせる誇張表現 |
不実告知 | 契約説明段階 | 重要事項説明を含む虚偽の告知 |
3つの違いは「どの段階で、どのような虚偽を行うか」という点です。不動産会社には、広告表現だけでなく、営業や重要事項説明まで一貫した正確性が求められます。
おとり広告の法規制と罰則
おとり広告を規制する法律は主に3つあります。宅建業法・景品表示法・表示規約それぞれの規制内容と罰則を、不動産会社の視点で確認しましょう。
宅建業法による規制と罰則
宅建業法第32条は、誇大広告を禁止する条文です。おとり広告は「誇大広告」に該当するものとして規制されています。
違反が認定された場合、行政処分は段階的に重くなります。最初は「指示処分」で次に「業務停止処分」、悪質なケースでは「免許取消処分」へと進みます。免許を失えば事業継続は不可能になるため、経営上の致命的なリスクです。
刑事罰としては、同法第81条第1号により6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
景品表示法と表示規約による規制
景品表示法に基づく告示「不動産のおとり広告に関する表示」では、おとり広告を不当表示として明確に規定しています。
表示規約第21条は、不動産業界が自主的に定めたルールです。違反した場合、内容に応じて不動産公正取引協議会によって注意・警告・厳重警告・違約金の4つの措置が講じられます。さらに、違約金課徴の措置を受けた場合、主要なポータルサイトへの広告掲載が原則として1ヶ月以上停止される場合もあります。集客の要を失うと、業務停止処分に匹敵する打撃になりかねません。
改正景品表示法の直罰規定に注意
2024年10月1日に施行された改正景品表示法では、故意に優良誤認表示または有利誤認表示を行った事業者に対する直罰規定が新設されました。
従来は「措置命令→命令違反→罰則」という段階を踏む必要がありました。しかし、改正後は故意に優良誤認・有利誤認表示を行った場合、措置命令を経ずに直接100万円以下の罰金が科されます。
不動産広告では、おとり広告禁止の規定を遵守し、物件や取引条件を実際より有利に見せる表示を行わないよう十分注意しなければなりません。法改正の内容を全従業員が正しく理解する体制づくりが、今まで以上に重要です。
おとり広告の違反事例
おとり広告は、決して他社だけの問題ではありません。首都圏不動産公正取引協議会の2024年度事業報告によると、第13回「インターネット賃貸広告の一斉調査」の調査対象72社のうち16社でおとり広告が認められ、違反事業者の割合は22.2%でした。
賃貸仲介での違反事例
賃貸仲介では、成約済み物件をポータルサイトに掲載し続け、顧客に「先ほど決まってしまった」と伝えて別物件を紹介する手口が典型例です。
また、物件の入れ替わりが早い賃貸市場では、担当者が削除を後回しにしてしまうケースも多く、意図しない違反が起きやすい環境といえます。
とはいえ、「たまたま削除が遅れた」という言い訳は通用しません。故意・過失を問わず違反となる点を、現場の全員が認識する必要があります。
売買仲介での違反事例
売買仲介では、契約済み物件を9ヶ月以上掲載し続けた事例や、売却中止後も2ヶ月半以上広告を継続した事例が確認されています。
さらに悪質なケースとして、架空の建築確認番号を掲載して新築住宅として広告を行った事例もあります。建築確認番号とは、建物の設計が適法であることを建築基準法に基づいて確認した際に付与される番号です。これを偽造することは、おとり広告にとどまらず、刑事事件に発展するリスクもあります。
売買は賃貸に比べて件数こそ少ないものの、1件あたりの金額が大きいため、深刻なトラブルに発展しやすい点に注意が必要です。
おとり広告を防止する社内体制の作り方

意図しない違反を防ぐには、個人の注意だけに頼らない仕組みづくりが不可欠です。以下の3つの柱を中心に体制を整えましょう。
物件情報の更新ルールを明確にする
成約・申し込みが入った時点で即日掲載を停止するルールを、社内で明文化することが有効です。
口頭での申し合わせでは属人化しやすく、担当者の異動や繁忙期に抜け漏れが生じます。「誰が・いつ・どの媒体の掲載を止めるか」を明記したフローを整備し、複数人で確認できる体制を整えましょう。
複数のポータルサイトへの掲載を一括管理できる不動産業務支援システムの導入も有効です。1つの操作で全媒体での掲載を停止できれば、削除漏れのリスクを大幅に減らせます。
広告表示チェックの仕組みを導入する
ポータルサイトの中には、申し込みが入ると自動的に掲載が停止される機能を備えているものもあります。こうした自動削除機能を積極的に活用しましょう。
併せて、掲載物件の定期的な棚卸しも重要です。週1回など頻度を決めて、取引できない物件が残っていないかなど、全件確認する運用を習慣化することで、人的ミスを最小限に抑えられます。
人間によるチェックだけでなく、AIを活用したチェックも効果的な対策です。
従業員への定期的な研修を実施する
広告規制のルールは、経営陣だけでなく営業担当者・事務職員など全従業員が理解する必要があります。
特に2024年10月施行の改正景品表示法による直罰規定など、法改正の内容は定期的な勉強会で共有しましょう。「知らなかった」では済まされない時代だからこそ、不明点は顧問弁護士や宅建業協会に相談できる体制を整えておくことも大切です。
まとめ
おとり広告は、故意・過失を問わず違反となり、免許取消や刑事罰といった深刻なリスクを伴います。2024年10月施行の改正景品表示法により直罰規定が新設され、違反の法的リスクがさらに高まりました。
「物件情報の即日削除ルールの明文化」「一括管理システムの導入」「全従業員への定期研修」の3つを柱に、組織全体で防止策を講じることが、不動産会社には求められます。コンプライアンス(法令遵守)を徹底し、顧客だけでなく社会的な信頼を守りましょう。
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