【令和8年税制改正】住宅ローン控除の変更点と実務対応のポイント

令和8年度税制改正で、住宅ローン控除の内容に変化がありました。具体的には、適用期限が2030(令和12)年末まで5年延長され、省エネ性能の高い既存住宅や子育て世帯・若者夫婦世帯への優遇が拡充されました。
一方で、床面積要件の見直しや建築確認日による適用区分など、押さえるべき論点も増えています。本記事では、改正の全体像から控除額のシミュレーション、不動産会社が顧客への説明時に注意すべきポイントまでわかりやすく解説します。
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目次[非表示]
- 1.令和8年税制改正の全体像
- 1.1.改正の背景と目的
- 1.2.適用開始時期と経過措置
- 2.令和8年改正の主要ポイント
- 2.1.借入限度額の変更内容
- 2.2.控除期間と控除率の見直し
- 3.改正後の控除額シミュレーション
- 4.不動産会社が押さえる注意点
- 4.1.控除額は住宅種別で異なる
- 4.2.控除区分は居住開始年で決まる
- 4.3.必要書類は申請前に揃える
- 5.まとめ
令和8年税制改正の全体像
令和8年度税制改正では、住宅ローン控除の適用期限が5年延長され、省エネ住宅や子育て世帯・若夫婦世帯への支援が拡充されました。
改正の背景と目的
今回の改正の背景には、住宅価格の高騰・少子化・カーボンニュートラルという3つの社会課題があります。ここ数年は住宅価格の高騰が続き、子どもが増えても広い住まいを取得しにくいという現状があります。少子化が進むなか、世帯構成の変化に応じた住まいを選びにくい環境は、子育て支援の観点からも見過ごせない課題です。
また、国は2050年カーボンニュートラルの実現を掲げており、家庭部門のCO2排出削減はGX(グリーントランスフォーメーション)戦略の柱の一つとなっています。住宅の省エネ性能の向上は、この目標達成に直結するテーマです。
こうした背景を踏まえ、今回の改正は以下の2点を目的としています。
- 子育て世帯への優遇を厚くすることで、良質で広い住宅を取得しやすくすること
- 税優遇を通じて高断熱・省エネ住宅の普及を後押しすること
つまり今回の改正は、単なる期限延長ではなく、社会課題の解決に向けて「誰が・どのような住宅を取得するか」に重点を置いた見直しといえるでしょう。
適用開始時期と経過措置
住宅ローン控除の適用期限は、2025(令和7)年12月31日から2030(令和12)年12月31日まで5年延長されました。
注目すべきは、適用期限が5年間延長されたことだけでなく、住宅の省エネ性能や新築・既存住宅の区分に応じて借入限度額が再整理された点です。認定住宅やZEH水準省エネ住宅の新築等は、一定の限度額が維持されます。
一方で、省エネ基準適合住宅の新築等は、2028(令和10)年以降の建築確認分から原則として対象外となるため、物件ごとの確認が重要です。
令和8年改正の主要ポイント

今回の改正で押さえるべき変更点は、5年の期限延長・借入限度額の維持・既存住宅への優遇拡充などです。
借入限度額の変更内容
新築・買取再販では、住宅の省エネ性能に応じて借入限度額に差がつけられています。性能が高いほど限度額が大きくなる仕組みです。
住宅タイプ | 借入残高上限 | 控除期間 |
|---|---|---|
長期優良・低炭素住宅(新築) | 4,500万円 (5,000万円) | 13年 |
ZEH水準省エネ住宅(新築) | 3,500万円 (4,500万円) | 13年 |
省エネ基準適合住宅(新築) | 2,000万円(3,000万円) | 13年 |
長期優良・低炭素住宅(中古) | 3,500万円 (4,500万円) | 13年 |
ZEH水準省エネ住宅(中古) | 3,500万円 (4,500万円) | 13年 |
省エネ基準適合住宅(中古) | 2,000万円 (3,000万円) | 13年 |
その他の住宅(中古) | 2,000万円 | 10年 |
※カッコ内は、子育て世帯等(特例対象個人)に適用される借入限度額です。具体的には、年齢40歳未満で配偶者を有する人、年齢40歳以上で年齢40歳未満の配偶者を有する人、または年齢19歳未満の扶養親族を有する人を指します。
具体的な借入限度額は、長期優良・低炭素住宅が4,500万円、ZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅が3,500万円となります。ZEHとは、断熱性能と高効率設備でエネルギー消費を実質ゼロに近づけた住宅です。
省エネ基準適合住宅の新築等は、2026(令和8)年・2027(令和9)年入居では借入限度額2,000万円です。2028(令和10)年以降に建築確認を受ける省エネ基準適合住宅の新築は、原則として対象外となります。
ただし、一定の経過措置に該当する場合は借入限度額2,000万円、控除期間10年で適用できる可能性があります。
控除期間と控除率の見直し
控除率は0.7%で据え置かれ、控除期間は住宅性能で分かれます。認定住宅・ZEH水準・省エネ基準適合住宅の新築は13年、その他住宅は10年です。
控除率0.7%とは、年末のローン残高に0.7%を掛けた額を所得税などから差し引けることを意味します。ローン残高は月々の返済によって年々減っていくため、実際の控除額も毎年少しずつ減少します。
既存住宅(中古)に対しても見直しがありました。省エネ性能を備えた既存住宅は控除期間が10年から13年へ延長され、利活用を促す内容となっています。
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改正後の控除額シミュレーション
改正後の控除額は、住宅の性能と世帯属性で大きく変わります。ここでは年末ローン残高×0.7%という基本式を基に、2つのモデルで初年度の控除額を試算します。
一般世帯のケース
ZEH水準省エネ住宅を新築し、年末残高が3,500万円ある一般世帯を想定します。この場合の初年度の控除額は「3,500万円×0.7%で24.5万円」です。
なお、控除額の計算に使える年末残高には、住宅タイプごとの借入限度額(このケースでは3,500万円)という上限があります。仮に年末残高が4,000万円あっても、計算の対象となるのは3,500万円までです。
年末残高が借入限度額の範囲内であれば「残高×0.7%」で計算した控除額を、控除期間13年にわたって受けられます。ただし、残高は返済が進むほど減るため、実際の控除額は年々小さくなっていく点に留意しましょう。
子育て世帯のケース
認定住宅を新築する子育て世帯(特例対象個人)では、借入限度額が5,000万円まで上乗せされます。年末残高5,000万円の場合、初年度の控除額は「5,000万円×0.7%で35万円」です。
なお、いずれのケースも納める税額を超える控除は受けられません。まず所得税から控除され、所得税で控除しきれない金額がある場合は、一定の上限の範囲内で翌年度の個人住民税から控除されます。
そのため、そもそも所得税額や住民税額が少ない場合は、計算上の満額の控除額を受けられないことがあります。
不動産会社が押さえる注意点

顧客への説明や契約の際には、トラブルを防ぐためにも、特に限度額・適用区分・必要書類の3点を重点的に確認しましょう。
控除額は住宅種別で異なる
控除額の上限は、借入限度額に控除率0.7%を掛けた金額です。借入限度額は新築・買取再販・既存・リフォームの区分や省エネ性能によって異なるため、控除額の上限も住宅種別ごとに変わる仕組みです。
たとえば、借入限度額が3,500万円のZEH水準省エネ住宅(新築)なら、年間の控除額の上限は「3,500万円×0.7%=24.5万円」となります。同じ借入額でも住宅の区分によって控除額の上限が変わるため、物件ごとの確認が欠かせません。
床面積要件にも注意が必要です。改正により、床面積40m2以上50m2未満の住宅についても一定の場合に住宅ローン控除を受けられる措置が、既存住宅にも広がりました。
ただし、合計所得金額が1,000万円を超える年は適用されず、子育て世帯等への借入限度額の上乗せ措置を利用する場合は50m2以上が必要です。
なお、床面積は登記事項証明書などに記載された面積で確認します。マンションでは、販売図面に記載される壁芯面積より登記簿上の内法面積のほうが小さくなることがあります。そのため、40m2台の物件では広告や間取り図だけで判断せず、登記事項証明書で確認することが重要です。
控除区分は居住開始年で決まる
控除の区分は、契約日ではなく居住を開始した年で判定されます。引渡しが年をまたぐと適用区分が変わる場合があるため、スケジュール管理が重要です。
特に注意したいのが、省エネ基準適合住宅の新築です。2028(令和10)年以降に建築確認を受ける場合は、原則として控除の対象外となります。
ただし経過措置があり、2027(令和9)年12月31日までに建築確認を受けた場合などは、借入限度額2,000万円・控除期間10年で適用を受けられる余地が残されています。
必要書類は申請前に揃える
控除の初年度は、確定申告が必須です。会社員でも初年度は自分で申告する必要があるため、必要書類を事前に揃えておくと手続きが滞りません。
主な書類は、登記事項証明書・住宅ローンの年末残高証明書・建築確認済証などです。省エネ性能で優遇を受ける場合は、住宅省エネルギー性能証明書などの性能を証する書類も求められます。
これらは取得に時間がかかる場合があります。引渡し前から準備を案内できれば、顧客の安心につながり、不動産会社への信頼も高まるでしょう。
まとめ
令和8年度税制改正では、住宅ローン控除の適用期限が2030(令和12)年12月31日まで5年延長され、子育て世帯や省エネ住宅への支援が手厚くなりました。借入限度額が引き下げられなかった点も、購入を後押しするポジティブな特徴です。
一方で、床面積要件や建築確認日による適用区分など、実務で見落としやすい注意点もあります。控除上限額も住宅の種別と居住開始年で決まるため、物件ごとの確認が欠かせません。










