建物構造は「見た目」だけで判断しない―賃貸管理現場で押さえたい構造種別の基礎知識―

賃貸管理の現場では、建物の構造を正しく理解しておくことが重要です。木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造。これらは、単なる物件広告上の表示ではなく、耐久性、遮音性、修繕計画、税務上の耐用年数、金融機関評価、災害リスクなどにも関係します。
2025年度賃貸不動産経営管理士試験問35では、建物の構造に関する基本知識が問われました。出題内容としては比較的シンプルですが、実務では「RC造だから安心」「鉄骨造だから弱い」「プレハブだから簡易な建物」といった表面的な理解で済ませるべきではありません。管理会社や賃貸不動産経営管理士には、構造の基本的な違いを理解したうえで、必要に応じて専門家につなぐ判断力が求められます。
構造種別は管理実務の共通言語
国土交通省の建築着工統計調査では、建物の構造について、主要構造部が何で造られているかを基準に分類しています。たとえば、鉄筋コンクリート造は、主要構造部が型枠の中に鉄筋を組み、コンクリートを打ち込んで一体化した構造とされています。鉄骨造は、主要構造部が鋼材又は鋳鉄で造られたものです。また、鉄骨鉄筋コンクリート造は、主要構造部が鉄骨と鉄筋コンクリートを一体化した構造です。
賃貸管理で構造種別を確認する意味は、単に物件情報を正しく表示するためだけではありません。構造によって、劣化の現れ方、修繕の優先順位、耐火性、遮音性、施工方法、維持管理上の注意点が異なります。
たとえば、RC造ではコンクリートのひび割れ、中性化、鉄筋腐食、防水劣化などが問題となります。鉄骨造では、鋼材の腐食、耐火被覆、接合部、外壁や屋根のメンテナンスが重要になります。SRC造では、RC造と鉄骨造の双方の性質を踏まえて建物を見ていく必要があります。
プレハブ工法は「構造」ではなく「工法」
本問で最も注意すべき選択肢は、プレハブ工法に関するものです。
プレハブ工法とは、住宅の主要構造部である壁、柱、床、梁、屋根、階段等の部材を工場で大量生産し、現場でそれらの部材を組み立てる工法です。工場生産による品質の安定、工期短縮、省力化といったメリットがあります。
一方で、あらかじめ規格化された部材を組み合わせるため、一般には在来工法に比べて設計の自由度は制約を受けやすくなります。したがって、「規格化された部材を組み合わせるため、設計の自由度が高い」という記述は不適切です。
ここで大切なのは、「構造」と「工法」を分けて理解することです。木造、RC造、S造、SRC造は、主に建物の構造種別を示す言葉です。これに対し、プレハブ工法は、部材の生産方法や施工方法に着目した言葉です。物件資料を見るときも、「構造」と「工法」が混同されていないかを確認する必要があります。
RC造・SRC造・S造の基本
鉄筋コンクリート造、いわゆるRC造は、鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造です。コンクリートは圧縮に強く、鉄筋は引張に強いという性質があるため、両者を一体化することで建物の構造体を構成します。中低層の共同住宅に多く用いられてきましたが、現在では高層建物にも採用されています。
鉄骨鉄筋コンクリート造、いわゆるSRC造は、鉄骨を内包した鉄筋コンクリート造です。鉄骨の強度とRC造の耐火性・剛性を組み合わせる構造であり、一般にRC造よりも耐震性に優れると整理されます。大規模建築物や高層建築物で採用されてきた構造です。
鉄骨造、いわゆるS造は、柱や梁などの主要部分に鋼材を用いる構造です。鋼材は加工性が高く、部材を工場で製作し、現場で組み立てる施工がしやすいため、工期短縮や省力化が可能です。ただし、鋼材は錆びや耐火の問題があるため、防錆、防火、外壁・屋根の維持管理が重要になります。
投資家・管理会社にとっての意味
建物構造は、賃貸管理だけでなく投資判断にも影響します。国税庁の耐用年数表では、住宅用建物について、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造は47年、木造・合成樹脂造は22年、金属造は骨格材の肉厚に応じて34年、27年、19年とされています。これは税務上の法定耐用年数であり、建物の実際の寿命そのものではありませんが、減価償却や収支計画を考えるうえで重要な指標になります。
また、構造種別は金融機関の融資判断や、修繕費の見通しにも関係します。築古RC造マンションは法定耐用年数が長い一方で、防水、給排水管、外壁、エレベーターなどの更新費用が大きくなることがあります。鉄骨造のアパートでは、屋根・外壁・鉄部塗装・錆びの管理が重要です。木造アパートでは、シロアリ、雨漏り、床下・小屋裏の劣化確認が重要になります。
したがって、投資家や管理会社は、物件広告の「RC造」「鉄骨造」という表示だけで判断すべきではありません。建築確認済証、検査済証、竣工図、修繕履歴、建物調査報告書などを確認し、必要に応じて建築士等の専門家に調査を依頼することが大切です。
管理会社に求められる役割
賃貸不動産経営管理士や管理会社が、自ら構造計算を行うわけではありません。しかし、構造種別の基本を理解していないと、オーナーへの報告や修繕提案の前提を誤るおそれがあります。
たとえば、RC造の外壁にひび割れがある場合、それが表面的な仕上げ材の劣化なのか、構造躯体に関係する問題なのかによって、対応の重さは変わります。鉄骨造で錆びが見られる場合も、単なる塗装劣化なのか、構造部材の腐食なのかを見極める必要があります。
管理会社としては、構造上の判断を専門家に任せるべき場面を早期に見極めることが重要です。「よくある劣化です」と安易に処理するのではなく、建物の構造、築年数、過去の修繕履歴、劣化の範囲を確認し、必要に応じて調査や診断につなげることが、結果としてオーナーの資産価値と入居者の安全を守ることになります。
試験対策としては、プレハブ工法、RC造、SRC造、S造の特徴を暗記するだけでなく、それぞれが賃貸管理実務でどのような意味を持つのかを意識して学習するとよいでしょう。
過去問にチャレンジ(2025年度問35)
【問題】
建物の構造に関する次の記述のうち、不適切なものはどれか。
1 プレハブ工法は、規格化された部材を組み合わせるため、設計の自由度が高い。
2 鉄筋コンクリート造は、中低層の建物に多く利用されているが、現在は、高層の建物でも採用されている。
3 鉄骨鉄筋コンクリート造は、鉄筋コンクリート造に鉄骨部材を内包した構造で、鉄筋コンクリート造よりも耐震性に優れている。
4 鉄骨造は、鋼材の加工性が良く、施工工期が短く、省力化が可能である。
正解:1
1× プレハブ工法は、規格化された部材を工場で生産し、現場で組み立てる工法です。工期短縮や品質安定の利点はありますが、設計の自由度は制約を受けやすいため、不適切です。
2〇 RC造は中低層建物に多く用いられますが、高層建物でも採用されています。
3〇 SRC造は、RC造の中に鉄骨部材を組み込んだ構造で、一般にRC造より耐震性に優れるとされます。
4〇 S造は鋼材を用いるため加工性が高く、工期短縮や省力化が可能です。
【参考文献・参考資料】
・賃貸不動産経営管理士協議会「過去の試験問題一覧」
2025年度賃貸不動産経営管理士試験問題及び正解番号。
・国土交通省「建築動態統計調査 建築着工統計調査 用語の定義」
構造種別及びプレハブ工法の定義について参照。
・国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
建物の構造・用途別の法定耐用年数について参照。










