試験2ヶ月前からでも間に合う―賃貸不動産経営管理士試験を「実務の流れ」で攻略する学習法―

2026年9月10日、LIFULL HOME'S Businessにて、賃貸不動産経営管理士試験の攻略セミナーを担当しました。本試験まで残り約2ヶ月という時期になると、「まだ間に合うのか」「どこから手をつければよいのか」「仕事をしながら合格できるのか」と不安になる方も多いと思います。
結論から言えば、まだ十分に間に合います。ただし、ここから先は、何となくテキストを読み直すだけでは得点につながりません。残り2ヶ月で必要なのは、試験に出る分野を整理し、過去問を使って、実務の場面と結びつけながら理解する学習です。
賃貸不動産経営管理士試験は、単なる暗記試験ではありません。賃貸住宅管理業法、管理受託契約、賃貸借契約、金銭管理、建物・設備、原状回復、入居者対応、サブリース規制など、賃貸管理の現場で実際に問題となる知識が出題されます。だからこそ、勉強を進めるほど、「これは実務で使える知識だ」と感じられる試験でもあります。
試験の全体像を先に見る
まず大切なのは、試験範囲の全体像をつかむことです。賃貸不動産経営管理士試験は、賃貸住宅の管理に関する知識・技能・倫理観を問う国家資格試験です。令和8年度試験は50問の四肢択一式で行われ、賃貸住宅管理業法、管理受託契約、維持保全、金銭管理、賃貸借契約、その他管理実務に関する事項から出題されます。
ここで不安になる必要はありません。試験範囲は広く見えますが、出題の中心はかなりはっきりしています。毎年大きな柱になるのは、賃貸住宅管理業法、賃貸借契約・金銭管理、建物・設備の維持保全、そして原状回復や募集、保険などの管理実務です。
つまり、すべてを同じ深さで勉強する必要はありません。出題数が多く、得点しやすい分野を先に固め、合否を分ける分野に時間をかけることが重要です。
管理業法は落とせない
最初に固めるべきなのは、賃貸住宅管理業法です。管理業者の登録、業務管理者、重要事項説明、契約締結時書面、財産の分別管理、定期報告、サブリース規制などは、毎年のように出題されます。
この分野は、条文の知識だけでなく、「なぜその制度があるのか」を理解すると覚えやすくなります。たとえば、管理受託契約の重要事項説明は、オーナーが管理委託の内容を理解しないまま契約することを防ぐ制度です。財産の分別管理は、管理会社が預かる家賃や敷金等を不透明に扱わないようにする制度です。定期報告は、オーナーが物件の管理状況を把握できるようにする制度です。
このように、「オーナー保護」「入居者の居住安定」「管理業務の適正化」という視点で整理すると、単なる丸暗記ではなく、制度の意味が見えてきます。
契約・金銭管理は合否を分ける
次に重要なのが、契約と金銭管理です。賃貸借契約、修繕義務、賃料不払い、契約解除、定期建物賃貸借、サブリース、敷金、原状回復、連帯保証、賃料増減額請求などは、表面的に覚えただけでは得点が安定しません。
この分野では、「誰が、誰に対して、何を請求できるのか」を意識することが大切です。たとえば、修繕であれば、賃貸人の修繕義務、賃借人の通知義務、賃借人が修繕できる場合、修繕中の賃料減額をセットで整理します。滞納賃料であれば、催告、解除、明渡し、連帯保証人への請求、時効管理を一連の流れとして理解します。
法律というと難しく感じるかもしれません。しかし、賃貸管理の法務は、実はかなり現場に近いものです。「雨漏りしたら誰が直すのか」「退去時にどこまで原状回復を求められるのか」「サブリース会社はなぜ賃料減額を求められるのか」。こうした実務の疑問に答えるのが、民法や借地借家法の知識です。
維持保全は図で覚える
建物・設備の分野は、苦手意識を持つ方が多いところです。給水設備、排水設備、漏水、消防設備、防火管理、耐震診断、建物構造、エレベーター、機械式駐車場など、法律とは違う用語が多く出てきます。
この分野の学習では、文章だけで覚えようとしないことが大切です。設備は、図や系統表で理解すると一気に分かりやすくなります。たとえば、漏水であれば、「水が出ている場所」から考えます。雨水なのか、給水管なのか、排水管なのか、結露なのか。給水管であればメーター確認、排水管であれば使用時だけ漏れるかを確認する、というように、実務の初動対応と結びつけると記憶に残ります。
防火管理も同じです。防火管理者、消防計画、避難経路、消防設備点検を、単語だけで覚えるのではなく、「入居者の安全を守るために誰が何を管理するのか」と考えると理解しやすくなります。

過去問は「正解探し」で終わらせない
残り2ヶ月の学習で最も重要なのは、過去問の使い方です。過去問を解く目的は、正解番号を覚えることではありません。なぜ正しいのか、なぜ誤っているのかを説明できるようにすることです。
おすすめは、1問を解いたあと、4つの選択肢をすべて確認することです。正解肢だけを見て終わるのではなく、誤りの選択肢について、「どの言葉が誤りなのか」「正しく直すとどうなるのか」を確認します。
たとえば、「必ず」「一切」「常に」「のみ」といった表現は、試験で誤りになりやすい言葉です。ただし、言葉尻だけで判断するのではなく、制度の趣旨と照らして考える必要があります。賃貸管理の試験では、現場での判断力が問われます。過去問は、その判断力を鍛える教材です。
2ヶ月の学習計画
ここからの2ヶ月は、前半1ヶ月で知識を整理し、後半1ヶ月で得点力を高めるのが理想です。
前半は、管理業法、賃貸借契約、金銭管理、維持保全の主要分野を一通り確認します。完璧を目指す必要はありません。まずは、よく出る制度を理解し、過去問で問われた形を押さえます。
後半は、過去問演習と模試を中心にします。間違えた問題は、解説を読むだけでなく、テキストに戻って該当箇所を確認します。特に、同じ分野で何度も間違える場合は、知識が点でしか入っていない可能性があります。修繕、原状回復、保証、サブリース、業務管理者、定期報告などは、関連する制度をまとめて復習しましょう。
仕事で忙しい方は、1日長時間勉強できなくても構いません。通勤時間に一問一答を解く、昼休みに過去問を1問だけ確認する、夜に間違えた問題の解説を読む。それを積み重ねるだけでも、2ヶ月あれば大きく変わります。
「賃管士になれる」と思える学習へ
賃貸不動産経営管理士の勉強は、単に資格を取るためだけのものではありません。オーナーに説明する力、入居者対応の判断力、管理会社としての信頼を高める力につながります。
宅建士が不動産取引の専門家であるとすれば、賃貸不動産経営管理士は、賃貸管理の現場を支える専門家です。入居者から漏水の連絡があったとき、オーナーから原状回復費用について相談されたとき、サブリース契約の説明を求められたとき、業務管理者として社内の管理体制を確認するとき。試験で学ぶ知識は、そのまま現場で使われます。
だからこそ、この試験は面白いのです。条文や制度の先に、実際の建物、入居者、オーナー、管理会社の仕事が見えてきます。「法律は難しいもの」ではなく、「現場の困りごとを整理する道具」だと考えると、学習はずっと楽になります。
まだ間に合う
本試験まで約2ヶ月。焦る時期ではありますが、諦める時期ではありません。ここから伸びる人はたくさんいます。
大切なのは、全部を完璧にしようとしないことです。管理業法で取りこぼさない。契約・金銭管理で理解を深める。維持保全は実務の流れで覚える。実務・総論は頻出テーマに絞る。そして、過去問を使って「なぜそうなるのか」を説明できるようにする。
賃貸不動産経営管理士は、賃貸管理の現場をより良くするための資格です。合格はもちろん大切ですが、その学習過程で身につく知識は、明日からの仕事にも役立ちます。
まだ間に合います。今日からやるべきことを絞り、1問ずつ理解を積み上げていけば、自分でも賃貸不動産経営管理士になれる。その実感を持って、残りの期間を走り切ってください。










