全日と全宅の違いを解説! 不動産団体に加盟するメリット
各業界にはさまざまな業界団体があり、それぞれ業界全体に共通する課題の解決や社会的ルールの策定といった役割を果たしています。不動産流通業界には、大きく分けて4つの団体があり、代表的なものは「全日」「全宅」といった略称で呼ばれています。
今回はこれらの違いや特徴を踏まえながら、不動産の業界団体に加盟するメリットを見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.全宅と全日の違いを比較
- 2.全宅と全日はどちらに加盟するのがおすすめ?
- 3.不動産団体に加盟するメリット
- 3.1.営業保証金の供託義務が免除される
- 3.2.支店を出店しやすくなる
- 3.3.レインズが利用できる
- 3.4.起業後のサポートを受けられる
- 4.全日・全宅に入会するまでの流れ
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全宅と全日の違いを比較
不動産の業界団体には、「全宅」(公益財団法人 全国宅地建物取引業協会連合会)、「全日」(公益社団法人 全日本不動産協会)、「FRK」(一般社団法人 不動産流通経営協会)、「全住協」(一般社団法人 全国住宅産業協会)の4つがあります。このうち、FRKは会員数こそ少ないものの、大手不動産会社(東急リバブル・三井のリハウス・住友不動産販売など)が加盟しており、どちらかといえば大手の不動産グループと分類できます。
また、全住協は建設会社の中堅企業が会員になるケースが多く、FRKと重複して加盟する企業も多数です。それに対して全宅や全日は、さまざまな規模の企業が加盟しており、会員数が多いのが特徴です。
ここではまず、全宅と全日の違いを見ていきましょう。
全宅(公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会)
全宅は各都道府県に存在する宅地建物取引業協会の全国組織として設立されました。不動産関連団体のなかでは特に規模が大きく、会員数は10万社近くにのぼります。
「宅建協会」と呼ばれることもあり、「ハト」のシンボルマークで広く知られています。
全日(公益社団法人 全日本不動産協会)
全日は不動産関連業界団体のなかでもっとも歴史が古く、会員数は3万社以上と大きな規模を誇ります。中小の不動産会社では、前述の全宅か全日に加盟するのが一般的です。
シンボルマークは「うさぎ」であり、こちらも不動産会社の店頭などでよく見かけます。
【一覧表】全宅と全日の違い
ここでは、全宅と全日の違いを一覧表で確認しましょう。
全宅 |
全日 |
|
---|---|---|
基本的な特徴 | ||
設立年 |
昭和42年(1967) |
昭和27年(1952) |
シンボルマーク |
ハト |
うさぎ |
加盟社数 |
約10万社 |
約3万社 |
シェア |
約80% |
約20% |
費用 | ||
入会金 |
500,000円 |
390,000円 |
保証協会入会金 |
200,000円 |
130,000円 |
弁済業務保証分担金 |
600,000円 |
600,000円 |
年会費 |
48,000円 |
45,000円 |
保証協会年会費 |
6,000円 |
15,000円 |
その他必要経費 |
106,640円 |
62,800円 |
総額 |
1,460,640円 |
1,242,800円 |
※東京都の場合
具体的な費用項目や金額は都道府県によっても異なりますが、費用だけを見れば、全日のほうが安く抑えられることが多いです。ただし、各団体では加盟社の募集にあたり、費用減額などのキャンペーンをしているため、一概にどちらがお得であるとは言い切れません。
加盟するタイミングで情報収集をして、比較検討するといいでしょう。
全宅と全日はどちらに加盟するのがおすすめ?
結論から言えば、全宅、全日のどちらに加入してもあまり大きな違いはありません。費用や取り扱うサービスに若干の違いはありますが、後述するメリットのような重要なポイントは共通しているため、費用感やキャンペーンなどで判断するのもひとつの方法です。
ただし、前述のように全宅のほうがシェアは高く、豊富なネットワークを持っています。会員数が多いということは、「横のつながりが生まれやすい」「交流会や勉強会が充実しやすい」といった点がメリットになります。
そのため、開業したてで横のネットワークを広げたいという方にとっては、全宅のほうが希望を満たしやすいといえるでしょう。
不動産団体に加盟するメリット
不動産会社を開業するのであれば、特別な事情がない限りは、不動産団体には加盟しておくほうがいいでしょう。ここでは、その理由として加盟のメリットをご紹介します。
営業保証金の供託義務が免除される
不動産団体に加盟するもっとも大きなメリットは、「営業保証金の供託」が必要なくなる点にあります。宅建業法では、不動産会社を開業する際には万が一のトラブルなどに備え、営業保証金として「1,000万円」を供託することが義務付けられています。
しかし、開業間もない個人の不動産会社では、そもそもスタート時点で1,000万円を用意するのは簡単ではありません。そこで、全宅や全日などの不動産団体では、加盟とともに弁済業務保証分担金60万円を支払えば開業できる仕組みが設けてあります。
≫ 宅建業の開業に必要な“営業保証金”の仕組みをわかりやすく解説
支店を出店しやすくなる
営業保証金の供託は、支店を出すときにも必要となります。本来であれば1支店につき500万円の供託金を預ける必要がありますが、不動産団体に加盟していれば、1支店当たり30万円の弁済業務保証分担金のみで賄えます。
レインズが利用できる
「レインズ」とは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営している不動産情報ネットワークのことです。不動産業界においては、情報収集ツールにおける事実上のスタンダードで、安全かつスムーズな取引には欠かせないサービスとなっています。
過去の成約情報からエリアや物件ごとの相場を把握し、全国の物件情報を手早く入手できるため、不動産経営を支える土台といっても過言ではありません。レインズの一般公開はされていませんが、不動産団体に加盟することで閲覧できるようになります。
起業後のサポートを受けられる
起業後のさまざまなサポートを受けられるのも、不動産団体に加盟する大きなメリットです。全宅と全日で大きな違いはなく、具体的には次のようなサービスを受けることができます。
取扱いサービス |
全宅 |
全日 |
|
---|---|---|---|
開業支援
|
営業保証金供託の免除 |
〇 |
〇 |
開業講習 |
〇 |
〇 |
|
育成支援
|
キャリアサポート研修 |
〇 |
〇 |
実務セミナー |
〇 |
〇 |
|
Web研修 |
〇 |
〇 |
|
法定研修 |
〇 |
〇 |
|
実務支援
|
Web書式作成システム |
〇 |
〇 |
必要書式のダウンロード |
〇 |
〇 |
|
不動産無料相談 |
〇 |
〇 |
|
税務・法務無料相談 |
〇 |
〇 |
|
レインズの利用 |
〇 |
〇 |
|
各種部会の開催 |
〇 |
〇 |
|
情報誌などの配布 |
〇 |
〇 |
|
コールセンター |
〇 |
〇 |
|
会員支援 |
提携企業の各種業務支援など |
〇 |
〇 |
このように、不動産事業の経営に必要なサポートを多角的に行ってもらえるため、これから起業する方にとって頼れる存在となることでしょう。
全日・全宅に入会するまでの流れ
全日と全宅に入会するまでの流れには、特に大きな違いはありません。入会までの主な手続きは次のとおりです。
①都道府県庁へ免許申請・受理 |
全日のみ入会説明会が行われますが、全体としてのスケジューリングに大きな差はなく、いずれも申し込みから営業開始まで1~2ヶ月程度かかります。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:全宅と全日はどんなところが違う?
A: どちらも受けられるサービスやメリットにはほとんど違いがありません。ただし、加盟社数は全宅のほうが多いため、横のネットワークを構築しやすいなどの利点はあります。費用にも若干の違いがあり、キャンペーンの有無によっても変わるため、加盟するタイミングで両者の情報を収集することが大切です。
Q:不動産業界団体に加盟するメリットは?
A: もっとも大きなメリットは、1,000万円の営業保証金の供託がなくなり、代わりに60万円の弁済業務保証分担金のみで開業できる点にあります。また、起業後のサポートを受けられるのも利点のひとつです。
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