不動産業界の人手不足問題の現状とは? 企業が行うべき解決策をご紹介
人材確保は、さまざまな業種で難しい問題です。不動産業界も例外ではありません。ここでは不動産業界の人手不足問題の現状と原因、対策と解決策をご紹介します。
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目次[非表示]
- 1.不動産業界の現状
- 1.1.人手不足が深刻化している
- 1.2.そもそも国内の働き手が少ない
- 2.不動産業界が人手不足に陥る主な原因
- 2.1.入社率が下がっている
- 2.2.業界に悪いイメージが根付いている
- 2.3.残業が多い
- 2.4.IT化の遅れ
- 3.不動産・建設業界が直面する2024年問題について
- 4.不動産業界の人手不足を解決するための方法
- 4.1.業務支援システムの導入
- 4.2.労働環境・給与条件の改善、見直し
- 4.3.アウトソーシングの活用を見直す
- 4.4.不動産業界の情報発信を行う
- 5.まとめ
不動産業界の現状
不動産業界の雇用動向は、2021年と比較すると、2022年は人材の流動がやや落ち着いています。
2021年 入職者 87.2万人 離職者 90.7万人
2022年 入職者 146.4万人 離職者 109.7万人
一方、不動産業界は「60代以上の社長が50%以上」「後継者不在の企業が68.9%」というデータもあります。高齢化と後継者不足が大きな課題です。
参考:国土交通省『不動産ビジョン2030』
人手不足が深刻化している
不動産業界の離職率に目を向けると、2021年の11.4%に対し2022年度は13.8%と上がっています。不動産業界の人手不足は深刻化していると言えるでしょう。
参照:厚生労働省『令和3年雇用同行調査結果の概況』・『令和4年雇用動向調査結果の概況』
離職者が多いと、社員の負担が増え、さらに離職者数を増やす悪循環を生みます。人手不足解消には、離職率が高くなる原因の解決が求められます。
そもそも国内の働き手が少ない
不動産業界に限らず、国内のさまざまな業種が人手不足に陥っています。原因として、少子高齢化による働き手の減少があげられます。
厚生労働省の統計によると、国内の15~64歳の人口比率は1990年には70%でしたが、2022年は59.4%でした。大幅に減少しています。2040年には55%にまで下がるとされ、国内における新たな働き手は減り続けるでしょう。
参考:厚生労働省『人口の推移、人口構造の変化』・総務省『人口推計(2022年10月1日現在)結果の要約』
不動産業界が人手不足に陥る主な原因
日本国内のさまざま業界が人手不足です。不動産業界に人が集まらない原因には、不動産ならではの状況が関係しています。
入社率が下がっている
不動産業界が人手不足である原因の一つとして、入社率の低下があげられます。「不動産業界=激務」のイメージが影響しています。社内の業務量が変わらないまま社員数が減ると、一人当たりの負担は増え、より激務になるでしょう。
不動産業界の法人数の増加も、入社率低下の原因のです。「2023 不動産業統計数」によると、平成26年度から令和3年度までで、不動産業界の法人数は1.3~4.3%ずつ増えています。多くの法人が働き手を求めているため、従業員の確保が難しい状況です。
参考:公益財団法人 不動産流通推進センター『2023 不動産業統計数』
業界に悪いイメージが根付いている
「不動産の営業職は激務」というイメージは根強くあります。そのようなイメージも人材不足の原因です。
不動産業界で扱う商品は高額であり、成約簡単ではありません。営業職は成約に向け、顧客に合わせたスケジュールを立て、何度もアプローチをします。その結果、勤務が不規則になることもあるでしょう。
インセンティブを導入する会社では、結果を求めて業務量がさらに増えます。「きつい」「多忙」などのイメージがより強くなり、人材の集まりにくさにつながります。
残業が多い
不動産業界は、引越し需要の高まる繁忙期に合わせて長時間労働をします。残業代は稼げますが、仕事とプライベートを両立させたい人にとってはマイナス要因です。残業の多い不動産業界を敬遠する人も多いでしょう。
IT化の遅れ
業務のIT化を進める企業が増えています。しかし、不動産業界にはITの導入が難しい面があります。手書きの書面でやりとりする場面が多い、個人情報を扱う際のセキュリティ対策が難しいなどが原因です。
今後IT化が進めば、テレワークでできる業務も増えます。セキュリティシステムを確立し、業務のIT化が進むことで、「不動産業界=激務」「残業が多い」といったイメージが変わる可能性が期待できます。
不動産・建設業界が直面する2024年問題について
建設業界は2024年問題に直面しています。これは建設業界にとどまらず、不動産業界をはじめとする関連産業にも大きな影響をおよぼす問題です。人手不足問題にもつながります。
≫ 関連記事『住宅産業に大きな影響がある“建設業の2024年問題”とは?~問題提起編~』
2024年問題とは
2024年問題とは、働き方改革関連法の施行により建設業界に生じる課題です。
残業や休日に関するルールを定めた「働き方改革関連法」は、2019年以降順次施行されてきました。時間外労働は原則として月45時間以内、月60時間を超える時間外労働は割増賃金率が25%から50%へ引き上げられました。完全週休2日制の推進も求められます。
長時間労働が常態化している建設業界は、短期間での働き方改革は難しいとされたため、「働き方改革関連法」の施行までに5年の猶予が設けられました。猶予期間は2024年で終わります。建設業界は2024年までに、長時間労働や休日取得数の是正を求められています。
不動産業界との関係
建設業界は、2024年問題により深刻な人手不足が生じると懸念されています。建設業界と関係の深いハウスメーカーや不動産業界なども、少なからず影響を受けます。
労働時間が限られ、業務がこれまでどおり行えなくなるかもしれません。早期の人手不足解消が求められます。
不動産業界の人手不足を解決するための方法
不動産業界の人手不足解消に向けた解決策はあるのでしょうか。ここからは、不動産業界の状況や原因を踏まえたうえで、4つの解決策を紹介します。
≫ 関連コラム『住宅産業に大きな影響がある“建設業の2024年問題”とは?~課題解決編~』
業務支援システムの導入
業務支援システムの導入は、人手不足解消につながります。効率化が可能な業務を洗い出し、業務の支援に役立つシステムを導入しましょう。社員の行動記録・活動報告書・顧客管理などをサポートするツールがおすすめです。
業務支援システムにより、手作業でしていた工程を削減すれば、業務の効率化が図れます。人為的なミスの防止にもつながります。
入居希望者向けに、オンラインで物件の内見ができるツールの活用もおすすめです。現地へ出向くことなく物件の内部を見てもらえ、内見の日程調整や移動の時間を削減できます。
≫ 不動産会社様の業務にお役立ていただける業務支援サービスをご紹介
労働環境・給与条件の改善、見直し
人手不足を補うには新たな働き手が重要です。ただし、今いる社員のモチベーションの維持も欠かせません。労働環境の改善も大切です。
賃金面・業務内容・業務負担の見直しや、福利厚生の整備をしましょう。労働環境を改善し、過酷なイメージを払拭できれば、離職率を低く抑えられます。
アウトソーシングの活用を見直す
人手不足問題を抱える企業は、業務の一部をアウトソーシングしましょう。定型業務や事務処理の負担を軽減させ、営業や商談などのコア業務に自社のリソースを割けます。
ただし、アウトソーシングに頼りすぎると、人材育成の弊害になる、業務に関するノウハウが蓄積されにくいとの懸念などが生じます。アウトソーシングの活用は、バランスを考慮して進めてください。
不動産業界の情報発信を行う
不動産業界において、業界全体としての情報共有が重要です。不動産取引に関する情報を発信・共有できるシステムを構築すると、業務の効率化が進み、人手不足解消につながります。
イベントやセミナーなども実施しましょう。自社の集客・業界内の交流をうながし、情報発信の活発化が図れます。
まとめ
不動産業界は少子高齢化や働き方改革の影響を受け、若手の人材不足、後継者不在などの問題を抱えています。こうした悩みを解消するには、業務内容の見直しや労働環境の改善が重要です。
業務支援システムの導入やアウトソーシングの活用がおすすめです。不動産業界を活性化させ、人手不足解消につながります。
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