訪問査定時のチェックポイント・ヒアリング項目について詳しく解説
顧客が不動産の売却を検討するときには、専門的な知識や経験を持った不動産会社に査定を依頼するのが一般的です。ほとんどの場合、査定は顧客と不動産会社が最初にコンタクトをとる機会であるため、このときの印象によって仕事の成功が大きく左右されるといっても過言ではありません。
今回は「訪問査定」における具体的なチェックポイントやヒアリング項目について解説します。顧客の信頼を獲得するためにも、査定における基本的な項目を確認しておきましょう。
目次[非表示]
- 1.訪問査定を行う目的
- 2.訪問査定時のチェックポイント
- 2.1.▼ 立地に関するポイント
- 2.2.▼建物に関するポイント
- 3.売主へのヒアリング項目
- 4.訪問査定時における注意点
- 4.1.事前リサーチを丁寧に行う
- 4.2.査定額の伝え方を工夫する
- 4.3.基本的なコミュニケーションを大事にする
≫ 不動産仲介・管理業務で役立つ営業ノウハウなどをお届け『セミナー・イベント』
訪問査定を行う目的
不動産の査定には、「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。机上査定とは、顧客が入力したデータや情報に基づき、非対面で簡易的に行う査定方法のことです。
それに対して、訪問査定とは現地に直接足を運び、より詳細な条件を反映させた査定を行うことを指します。ここでは、訪問査定を行う基本的な目的について見ていきましょう。
机上査定と訪問査定の違いについて、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
≫ 机上査定と訪問査定の違いとは?メリット・デメリットは?
訪問査定を売却検討者が依頼する背景
ほとんどの場合、一般の依頼者は特定の不動産会社とのつながりを持っているわけではなく、一括査定サービスなどを利用することになります。このとき、売却についてある程度の意思が固まっているようであれば、いきなり訪問査定を依頼することもあるでしょう。
しかし、「高く売れるようであれば売りたい」「まずはいくらくらいになるのか目安を知りたい」という場合は、基本的に机上査定を依頼します。そのうえで、売却に対する関心が高まった場合は、改めて訪問査定を依頼するといったケースも多いです。
この場合、訪問査定の依頼者は「よりリアルな価格を知りたい」「売却を依頼できる不動産会社を見極めたい」といった考えを持っています。そのため、まずはこうした依頼者の背景を踏まえて、何が求められているのかを正しく理解しておくことが重要です。
物件固有の特殊な条件を査定に反映させる
訪問査定の目的の一つは、物件に固有の特殊性を考慮し、より正確な査定を行うことにあります。机上査定の場合は、物件の大まかなデータを基に一般化し、平均的な相場から当たりをつけていきます。
それに対して、訪問査定では営業担当者が現地を訪問し、個別の事情を丁寧にチェックしたうえで査定を行うのが特徴です。そのため、依頼者にとってもリアルな価格を把握しやすくなり、現実的な売却戦略を立てられるようになります。
対面でのコミュニケーションによって納得を得る
訪問査定では、担当者と依頼者が直接会ってコミュニケーションを図ることとなります。メールや電話では確認が難しい事柄でも、訪問査定時には直接質問を受けられるため、より納得感のある査定が行えます。
担当者からすれば、ダイレクトに売却戦略や自社で売り出す強みなどを訴求できる絶好の機会といえるでしょう。
訪問査定時のチェックポイント
訪問査定は、机上査定では分からない細かなポイントを確認することが目的です。見落としがないように、あらかじめチェックリストを作成しておくといいでしょう。
訪問査定におけるおもなチェックポイントは次のとおりです。
▼ 立地に関するポイント
・周辺環境
・周辺道路の環境(人通り、街灯の数)
・土地の高低差や傾斜
・前面道路の幅員や間口の広さ
・前面道路の障害物(ミラーや標識など)
・側溝の有無
・敷地の形状
・敷地内の障害物(井戸や電柱など)
・騒音の有無、度合い
▼建物に関するポイント
・建物の状態(劣化、不具合)
・損傷の有無、程度
・日当たり、風通し
・眺望
・振動の有無、度合い
・共用部分や植え込みの管理状況(マンションの場合)
数多くのチェックポイントがあるため、スムーズに査定を行うためにも、日ごろからロープレをしておくのも一つの方法です。
売主へのヒアリング項目
訪問査定から媒介契約の締結へとステップを進めてもらうには、売主の希望を丁寧にヒアリングし、それに沿った売却戦略を提案することが大切です。ここでは、主なヒアリング項目をご紹介します。
ヒアリング項目 |
主な内容目標 |
---|---|
売却理由 |
・転勤による住み替え、相続、離婚など |
目標売却期間 |
・売却スケジュールにどのくらいのゆとりが持てるか |
希望売却価格 |
・最低いくらなら売却に踏み切れるか |
売却方法 |
・買取か仲介か |
権利関係 |
・売主の名義人本人か |
物件の状況 |
・修繕履歴、故障履歴はあるか |
欠陥がある場合の対応 |
・調査で欠陥が見つかった場合どこまで対応できるか |
対応可能時間帯 |
・都合のよい曜日や日程はいつか |
アピールポイント |
・伝えておきたい強みはあるか |
その他 |
・販売方法について注意点はあるか |
このようにヒアリングシートを作成しておくと、査定時の聞き漏れを防ぐことができます。ここからは、特に注意したい項目について詳しく解説します。
売却理由
相続した物件を売却する場合は、比較的スケジュールにゆとりがあるので、売却戦略もさまざまな可能性を探れます。一方、「海外転勤のためすぐに売りたい」「離婚のためにすぐ現金化しなければならない」といった差し迫った事情がある場合は、価格よりもスケジュール優先で戦略を立てなければなりません。
権利関係
権利関係の確認は、トラブルを防ぐうえで重要なプロセスです。遺産分割協議は済んでいるのか、共有名義の場合は所有者全員と連絡がとれるのかなど、あらかじめ考えられる懸念点は解消しておきましょう。
欠陥対応
相続した空き家を売却する場合などでは、依頼者もその物件の内情を知らないケースが多いです。売却前に調査をした結果、欠陥が見つかるという可能性もあるので、あらかじめその場合の対応を尋ねておくことが重要です。
選択肢としては、「修繕して売却する」「建物を解体して土地を売却する」「欠陥も周知したうえで値引きをして売却する」「買取会社にまとめて売却する」といったものが挙げられます。修繕や解体を希望する場合は、いくらまでなら費用を負担できるのかも確認しておくといいでしょう。
訪問査定時における注意点
最後に、訪問査定において担当者が気をつけておきたいポイントを確認しておきましょう。
事前リサーチを丁寧に行う
スムーズに査定を行うためには、査定前に調べられる物件情報はきちんとリサーチしておくことが大切です。当日は現地でしか確認できないポイントのみに絞り込み、そのほかの項目は事前にチェックしておきましょう。
事前リサーチについては、こちらの記事で詳しく説明しています。
≫ 訪問査定時に営業担当者が取り組んでおきたい準備・持ち物を解説
査定額の伝え方を工夫する
査定額を伝えるときには、「〇〇万円~〇〇万円」と幅を持たせることも可能です。しかし、あまりにも上下の差が大きければ依頼者も判断が難しくなるため、できるだけ小さく収めることが信頼性を高めるポイントとなります。
そのうえで、依頼者の信頼を得るコツとして、「いくつかの条件別に具体的な金額を提示する」というのも有効です。たとえば「査定価格は3,270万円です」と提示したうえで、「売却期間を長めにとれるのであれば、売り出し価格は少し強気の3,370万円にしましょう」と提案してみると、依頼者にも前向きに考える余地が生まれます。
また、特に価格を気にされる依頼者に対しては、「チャレンジ価格」として現実味のある範囲で高めの目標設定を伝えてみるのもいいでしょう。
基本的なコミュニケーションを大事にする
訪問査定は依頼者と直接的に関われる大切な機会であり、このときの対応によって契約を獲得できるかどうかも決まってきます。そのため、「積極的に質問してもらえる雰囲気づくりをする」「専門用語などをできるだけ使わずに説明する」など、コミュニケーションの基本的なポイントを実践することが大切です。
特に、査定結果を説明する際にはどうしても内容が難しくなりやすいので、適宜「ここまででご不明な点はございますか」など、質問ができる機会を与えるのがポイントです。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:不動産営業における訪問査定の目的は?
A:目的の一つは、依頼者に対して、よりリアルな売却価格を提示することにあります。そしてもう一つは、依頼者とダイレクトな接点を築き、信頼を獲得することです。契約につなげるためにも、訪問査定で自社の魅力を知ってもらい、信頼を得ることが大切です。
Q:訪問査定時のチェックポイントは?
A:現地に行かなければ分からない「建物の状況」「周辺環境」「土地の状況」などが主なチェックポイントです。マンションの場合は共用部分の管理状況などもチェックしておきましょう。