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2025年度の税制改正概説。今年の住宅流通市場で問われる“ある対応”とは?

2025年度の税制改正概説。今年の住宅流通市場で問われる“ある対応”とは?

LIFULL HOME’S総研の中山です。
 
いわゆる103万円の壁問題で与野党間の協議が紛糾した2025年の税制改正大綱が2024年12月末に公表されました。注目の103万円の壁は、基礎控除が48万円から10万円引き上げられて58万円に、給与所得控除も55万円から同じく10万円引き上げられて65万円になりました。103万円の壁は123万円まで僅かに動いたことになりますが、法案として国会を通過するまでには紆余曲折があるものと予想されます。

目次[非表示]

  1. 1.子育て・若者世帯に対する住宅ローン減税とリフォーム減税の優遇措置は1年延長
  2. 2.新築住宅の価格上昇傾向が継続
  3. 3.2025年4月以降はすべての新築建築物で省エネ基準適合が義務化

子育て・若者世帯に対する住宅ローン減税とリフォーム減税の優遇措置は1年延長

住宅関連の税制においては、2024年末で終了予定だった住宅ローンの性能別借入限度額(住宅ローン元本の上限)の優遇措置が2025年末まで1年延長されました。すなわち、長期優良住宅および低炭素住宅を意味する認定住宅は500万円の優遇で上限が5,000万円まで、ZEH住宅は1,000万円の優遇で4,500万円まで、省エネ基準適合住宅も1,000万円の優遇で4,000万円まで認められます。昨年同様に、断熱等級4および一次エネルギー消費量等級4という省エネ基準を満たしていない新築住宅(一般住宅)は、住宅ローン控除の対象外です。優遇の対象となる家計は夫婦のいずれか一方が40歳未満である“若者世帯”か、19歳未満の扶養家族(子・孫など)を有する“子育て世帯”となります。それ以外の世帯はそれぞれ4,500万円、3,500万円、3,000万円が住宅ローン元本の上限です。
 
“若者世帯”および“子育て世帯”は、中古住宅のリフォームについても費用の上限250万円までで10%の控除が受けられます。なお、東日本大震災被災者などは省エネ基準適合住宅以上の住宅性能を有する住宅を購入する場合は、住宅ローン元本の上限が一律5,000万円までとなります。

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住宅ローン減税等に係る所要の措置(所得税・個人住民税)

 (出典:国土交通省 令和7年度国土交通省税制改正概要
 
また、マンションの管理組合が建て替えに関する活動を行う場合、法律の改正を前提として、建物を取り壊すマンション除却組合(仮称)、建替組合、再生組合などを“公益法人(および消費税法別表第三法人)”とみなして、収益事業以外の所得を非課税に、また消費税を優遇することも決まりましたから、マンションの建て替えを検討している管理組合には朗報と言えるでしょう。

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老朽化マンションの再生等の円滑化のための組合による事業施行に係る特例措置の創設・拡充

(出典:国土交通省 令和7年度国土交通省税制改正概要
 
税制改正に関連して、中古住宅の住宅借入金等特別控除も併記すると、国税庁の通達で、引き続き2025年末まで、長期優良住宅、低炭素住宅、特定エネルギー消費性能向上住宅またはエネルギー消費性能向上住宅は住宅ローン元本の上限が3,000万円まで、それ以外の一般住宅は2,000万円まで控除の対象となることにも変わりがありません。新築・中古住宅ともに控除率は0.7%で変更なし、控除期間は新築が13年、中古が10年です。
 
さらに、住宅購入目的の贈与税非課税枠(父母や祖父母など直系尊属からの贈与に限る)は、贈与を受けた人ごとに省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となります。ただし未入居を含む新築住宅は、省エネ等住宅の基準がZEH基準(断熱等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上)に引き上げられていますからその旨ご注意ください。中古住宅を購入する場合の1,000万円非課税枠対象物件は、断熱等級および一次エネルギー消費量等級が共に4以上で変わりはありません。それ以外の住宅については新築・中古ともに贈与額500万円が非課税の上限となります。

新築住宅の価格上昇傾向が継続

このように、新築・中古住宅ともに2025年の税制については、2024年から大きな変化はありませんでしたから、引き続き住宅購入および買い替え・住み替えの制度的なバックアップ体制は整っていると見ることができます。

ただし、税制以外の住宅市場を取り巻く環境は厳しさを増しており、円安の継続による資材価格の高騰、建設業・運輸業の人手不足による人件費上昇(2024年問題は依然解消されていません)、地価の安定的な上昇を受けて、新築住宅のコストプッシュ型の価格上昇が止まりません。また地域によって状況は異なるものの、中古住宅も新築住宅の価格上昇に連動して価格が上昇しているエリアが多く、全般的に住宅購入のハードルは高いままと言えます。

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新築住宅の価格高騰を受け、多くのエリアで中古住宅の価格上昇が見受けられます

2025年4月以降はすべての新築建築物で省エネ基準適合が義務化

また、2025年4月以降はすべての新築建築物に“省エネ基準への適合義務”が課されることもあり、住宅市場においても省エネ・断熱性能についての関心がさらに高まることが想定されます。このような大きな制度的な変更は、住宅流通市場にも比較的大きな影響があるものと考えられますので、資産性を一定程度維持するためにも、また流通価格を上げるためにも、窓や玄関など開口部の断熱改修や太陽光パネル、給湯器など省エネ設備の設置などの対応が必要になる可能性が高まります。

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国土交通省 省エネ基準適合義務化パンフレット

(出典:国土交通省 省エネ基準適合義務化

 ≫ 2025年の賃貸住宅市場は”住宅性能元年”に。今後気にすべきことは?
 
住宅に関する税制は、着実に省エネ&断熱性能の高い住宅への優遇措置を強めており、2025年以降には、住宅ローンの金利においても住宅性能の違いによって優遇の有無が決まる可能性も取り沙汰されていますから、住宅性能を高めること、および住宅性能を高めると補助金や住宅ローン減税などの制度面で優位になるため比較的高額で売却できること、などを認識したうえで流通市場での物件対応に当たる必要があります。

その意味でも、2025年の住宅流通市場は、新築市場同様に“住宅性能元年”であることを強く意識していただきたいと思います。

 ≫ 令和7年度税制改正。住宅ローン減税の子育て世帯優遇延長


 
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中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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