不動産DXの現状と課題は? 導入メリットや事例も紹介
企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用し、業務の改善やビジネスモデルの変革を進める取組みです。
不動産業界では、DXが十分に進んでいるとは言い難く、他の業界に比べて遅れが見られます。しかし、他社がまだ取り組んでいないからこそ、率先してDXを推進することで競合他社より優位にビジネスを展開できる可能性があります。
本記事では、不動産業界におけるDXの現状と、導入における課題や事例について解説します。
目次[非表示]
- 1.不動産業界のDX取組み状況
- 2.不動産DX推進における課題
- 2.1.メリットが理解されていない
- 2.2.DX人材が不足している
- 3.不動産業界のDX事例
- 3.1.顧客・物件情報の管理
- 3.2.電子契約システム導入
- 3.3.IT重説の実施
- 4.不動産DXのメリット
- 5.まとめ
不動産業界のDX取組み状況
2023年にLIFULL HOME'S Businessが行った調査※によると、「貴社はDXに取り組まれていますか?」という質問に対し「取り組んでいる」と回答した企業は22.0%でした。
また「取り組む予定」と回答した企業は29.3%で、2つの回答を合わせた51.3%の企業が、DXに積極的であることがわかりました。
一方で、DXに「取り組む予定はない」と回答した企業は46.5%であり、およそ半数がDXに消極的という状況です。
近年、多くの業界においてITやAIなどのデジタル技術の導入によるDXが推進されています。しかし、不動産業界はDXに前向きではない企業も多く、デジタル化が遅れている業界だといえそうです。
※参照:【調査結果】不動産業界のDX推進に対する実態調査の結果を公開」
不動産DX推進における課題
不動産業界においてDXを推進するには、どのような課題を解決する必要があるのでしょうか。ここでは、代表的な2つの課題について解説します。
メリットが理解されていない
不動産業界においてDXを進める際の課題の一つが、DXのメリットが十分に理解されていないことです。多くの不動産会社は、デジタル化による業務効率化や生産性向上などの具体的な利点を把握できていません。
そのため、DXを進める必要性を感じていないのです。なかには抵抗感を抱く不動産会社もあるかもしれません。こうした状況が、DXを遅らせている要因であると考えられます。
社内でDXを進めるためには、経営陣はもちろん従業員も含めた全員が、現場レベルでのDXのメリットを理解する必要があります。
DX人材が不足している
不動産業界でDXを進めるために解決すべきもう一つの課題が、専門的なDX人材の不足です。デジタル技術に精通し、実際の業務を改革できるスキルを持つ人材は限られています。
さらに、デジタル技術だけでなく、不動産業界特有の知識も求められるため、こうした人材の雇用や育成は非常に難しく、DXが進まない要因となっています。
DXを進めるためには、専門的な人材を継続的に募るとともに、デジタル技術を扱える従業員の育成強化が求められるでしょう。
DXを推進する大きなメリットは生産性の向上・業務効率化です。他社との差別化も期待できるでしょう
不動産業界のDX事例
DXによって不動産業界で実現できる3つの事例を紹介します。いずれも比較的導入しやすいデジタル技術であるため、DXの第一歩として採用を検討してみてはいかがでしょうか。
顧客・物件情報の管理
不動産会社のDXの代表的な事例として、顧客や物件の情報をクラウドサービスで管理するシステムの導入が挙げられます。
クラウドサービスとは、インターネット上でのデータ保存などを提供するサービスです。顧客や物件のデータをクラウドサービスに保存すれば、リアルタイムのデータ更新や、従業員間での情報共有が容易になります。
営業担当者は、外出先からでも物件情報を迅速に確認でき、顧客に対する提案や対応がスムーズになります。
また、顧客情報を共有することで、担当者が不在でも他の社員が問合せに対応しやすくなり、顧客サービスの向上に大きく貢献します。
電子契約システム導入
宅建業法の改正により、2022年5月から電子契約が可能になりました。電子契約では、電子データで契約書を交付し、デジタル署名などを使って契約を締結します。
このシステムを導入することで、紙の契約書を作成する手間やコスト、顧客と直接会って契約書に署名捺印してもらう時間などを削減できます。さらに、電子化された契約書は課税対象にならないため、印紙代も節約できます。
また、電子契約ではネット上でやり取りを行い、各自が都合のよい時間に署名などができるため、顧客側から電子契約を希望するケースも増えています。
≫ 【不動産会社向け】はじめての電子契約サービス導入におすすめのツール
IT重説の実施
従来は対面で行っていた不動産取引における重要事項説明も、ZoomなどのWeb会議システムを利用することで、IT重説として実施することが可能になりました。IT重説を実施できるようになれば、打ち合わせの日時を柔軟に設定できるようになり、時間を合わせにくい顧客や遠方の顧客に対しても、スムーズに説明を行えます。
また、非対面での説明になるため感染症の予防になり、従業員の感染リスクを軽減できるでしょう。
さらに、IT重説では双方が了承すれば、説明の様子を録画することが可能です。これにより、いわゆる「言った言わない」といった、説明内容の認識の違いによるトラブル発生を防ぎやすくなります。
≫ IT重説とは? デメリットやガイドラインに基づいた対応方法を紹介
移動にかかる時間や費用が必要ないことから、IT重説は、顧客側にもメリットがあります
参考:国土交通省 ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について
不動産DXのメリット
不動産会社がDXに取り組むメリットを、2つご紹介します。これらは収益向上と事業継続につながる可能性があるため、DX推進の重要な判断材料となるでしょう。
業務効率化
不動産会社がDXに取り組む大きなメリットの一つが、業務の効率化です。DXにより、これまで手間のかかっていた書類作成や、情報検索の業務が大幅に軽減されます。
また、電子契約やIT重説などのオンライン手続きを導入することで、移動やアポイント調整にかかる時間も削減できます。
業務の効率化が進めば、管理職は市場分析や営業戦略の立案に、営業担当者は商談などに、より多くの時間を割けるようになり、業績の向上が期待できるでしょう。
人材確保
不動産会社によるDXは、人材確保にもメリットをもたらします。不動産業界は残業や休日出勤が多く、長時間労働が常態化しています。そのため離職率が高く、慢性的な人手不足に悩む企業も少なくありません。
そこで、DXを推進し業務の効率化を実現すれば、従業員のワークライフバランスが改善され、離職者を減らせるはずです。
また良好な就業環境になれば、求職者にとって魅力的な職場となり、優秀な人材を新たに確保しやすくなるでしょう。
不動産業は対面で行われる業務が多く、制限もありますがDX推進は人手不足の対策のひとつとして有効となるでしょう
まとめ
不動産業界において、DXに積極的な企業は全体のおよそ半数にとどまり、DXに前向きに取り組んでいる業界とは言い難い状況です。
これは、DXのメリットが経営者や従業員に十分に理解されていないことや、DXを行える人材が不足していることが原因であると考えられます。
しかし、顧客や物件情報の管理、電子契約システムやIT重説などのDXを推進することで、業務効率化と働く人のワークライフバランスの改善が可能になります。
DXによって収益の向上や人材確保への貢献が期待できるため、まだ取り組んでいないようであれば、積極的に推進することをおすすめします。
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