宅建士の登録に必要な実務経験とは? 該当する業務・しない業務を確認
宅建士(宅地建物取引士)は、不動産会社で勤務する方に役立つ資格です。しかし、実際に宅建士としての業務を行うには、試験に合格するだけでなく、都道府県に登録したうえで宅地建物取引士証の交付を受けなければなりません。
都道府県に登録するためには、2年以上の実務経験が求められます。実務経験がない場合でも、登録実務講習を受けることで登録が可能です。
今回は、宅建士の登録に必要な「実務経験」について解説します。該当する業務・しない業務をそれぞれ具体的に紹介しますので、参考にしてみてください。
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宅建士(宅地建物取引士)に登録する方法
宅建士に登録する方法は、実務経験が2年以上あるかどうかによって異なります。まずは、それぞれのケースにおける登録の流れを見ていきましょう。
2年以上の実務経験があればスムーズに登録できる
不動産会社に勤務し、物件を顧客に説明する業務や物件を調査する業務などの実務経験が2年以上ある場合、試験に合格した都道府県においてすぐに宅建士としての登録を受けられます。
登録実務講習を受講する必要がないため、比較的スムーズに登録の手続きを進められるでしょう。
合格後すぐに都道府県に登録する必要はありませんが、試験に合格してから1年を超えている方が資格登録を行って宅地建物取引士証(宅建士証)の交付を受ける場合、法定講習を受けなければなりません。試験に合格してから1年以内の場合は、法定講習を受けずに宅地建物取引士証の交付を受けられます。
実務経験なしの場合は登録実務講習を修了し試験に合格する
宅建士試験に合格したものの、2年以上の実務経験がない場合は、登録実務講習を受講し、修了試験にも合格する必要があります。修了試験に合格することにより「実務経験と同等の能力を有すると認めたもの」として、宅建士としての登録を受けられるのです。
登録実務講習は、国土交通大臣の登録を受けた機関が行っており、全国各地で受講できます。講習は「テキストや動画などの通信講座→スクーリング→修了試験」という流れで、修了試験に合格すれば登録へ進めます。
登録実務講習実施機関一覧は、国土交通省ホームページを参照してください。
なお、受講費用の相場は2万円前後です。登録実務講習の日程や金額などは、国土交通省の登録実務講習実施機関一覧から確認してください。
宅地建物取引士として業務に従事する人のみ、宅地建物取引士資格登録申請が必要です
(出典:東京都 宅地建物取引士資格登録申請)
「実務経験」に該当する業務
「実務経験に該当する業務」には、不動産に関する具体的な取引が該当します。以下で、具体的に見ていきましょう。
・店舗を訪れた顧客に対し、物件の間取りや周辺環境などの説明を行う業務
・不動産の売買を希望する人のために、法務局で登記簿を確認し、物件の抵当権や賃借権の有無、建物の建て替えに関する制限などを調査する業務
・不動産取引の契約を結ぶために、契約書を作成する業務
・物件の賃貸や購入を決めた顧客から、代金や手数料を受け取る業務
・賃料収入などを記載した不動産所得帳簿を作成する業務
実務経験として認められるためには、実際にこれらの業務を行っていることに加えて、自身の氏名が実務経験先の従業者名簿に記載されている必要があります。
登録時に提出する「実務経験証明書」に、従業者名簿上で割り振られる「従業者証明書番号」の記載が求められるため、あらかじめ確認しておきましょう。
また、実務経験に該当する業務を行っている間の雇用形態に、特段定めはありません。正社員だけでなく、パートやアルバイトなどの雇用形態で勤務していた場合でも、実務経験として認められます。
「実務経験」に該当しない業務
単に不動産会社に勤務しているだけでは、実務経験があるとは見なされません。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、登録に係る実務の経験について以下のように示されています。
「受付、秘書、いわゆる総務、人事、経理、財務等の一般管理部門等の顧客と直接の接触がない部門に所属した期間及び単に補助的な事務に従事した期間については算入しないことが適当と解される。」 |
顧客と直接的な接触がなく、実際に不動産を取り扱わない業務分野の場合、実務経験とはみなされません。また、単に補助的な事務に従事した期間も、実務経験には算入されない点に注意しましょう。
また、実務経験に該当する業務を行っていても、従業者名簿に氏名が記載されていない期間は実務経験の期間に算入されません。
国土交通省は、実務経験について「実務経験として算入できる業務の内容は、免許を受けた宅地建物取引業者としての 経験又は宅地建物取引業者の下で勤務していた経験をいい、顧客への説明、物件の調 査等具体の取引に関するものと解される」としています。
宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 第18条関係 宅地建物取引主任者の登録に係る実務の経験についてより
実務経験証明書に記載する内容
実際に宅建士としての登録申請をする際には、「実務経験証明書」を実務経験先に作成してもらう必要があります。実務経験証明書には、以下の項目を正確に記載しなければなりません。
・証明を受ける方の氏名
・免許証番号
・商号又は名称
・職務内容
・従業者証明書番号
・在職期間
実務経験を積んだ不動産会社が複数ある場合は、すべてから証明をもらう必要があります。そのため、すべての証明が揃うまでに時間がかかる可能性がある点に注意しましょう。
実務経験には有効期限がある点に注意
実務経験として認められる期間は、登録申請時から「過去10年以内」です。実務経験に該当する業務経験があっても、10年以上のブランクがあると実務経験としてカウントされません。
この場合、登録を受けるためには改めて2年以上の実務経験を積むか、登録実務講習の修了と修了試験の合格が求められます。
なお、実務経験は宅建士試験の合格の前後を問いません。あくまでも「登録申請時」を起点として、過去10年以内に実務経験があるかどうかで判断します。
宅建士の登録をするときの必要書類
宅建士の登録を受ける際の必要書類は、以下のとおりです。
必要書類 |
留意点 |
---|---|
登録申請書 |
- |
誓約書 |
- |
本籍地の市区町村で発行される身分証明書 |
- |
登記されていないことの証明書 |
・成年被後見人および被保佐人に該当しない旨の登記事項証明 |
住民票 |
本籍・続柄の記載は不要 |
合格証書 |
原本(提示用)とコピー(提出用)の両方 |
顔写真 |
縦3cm×横2.4cm(顔の大きさ2cm程度) |
登録資格を証する書面 |
・実務経験が2年以上ある方:実務経験証明書・「従業者名簿」のコピー・業務内容証明書 |
従業者証明書(現在、宅地建物取引業者に勤務し、宅地建物取引業に従事している方) |
原本(提示用)とコピー(提出用)の両方 |
登録手数料 |
3万7千円(現金) |
本人確認書類 |
運転免許証、パスポート、健康保険証、マイナンバーカードなど |
(出典:東京都住宅政策本部「宅地建物取引士資格登録申請提出書類と持参するもの」)
未成年の方は、さらに「営業に関する法定代理人の許可書」「戸籍謄本」「法定代理人の身分証明書の写し」が必要です。
なお、都道府県によって異なるものの、申請してから登録が完了するまでに1ヶ月〜2ヶ月程度の時間がかかります。また、登録後に宅建士証の交付申請を行い、宅建士証の交付を受けなければ宅建士としての業務を行えません。
できるだけ早く宅建士としての実務に携わりたい場合は、計画的に登録を行い、登録が済んだら速やかに宅建士証の交付を申請しましょう。
各都道府県の登録手続きは、一般財団法人不動産適正取引推進機構ホームページより、各都道府県のホームページに遷移してご確認ください。
参考:一般財団法人不動産適正取引推進機構 宅地建物取引士資格登録等の手続について
宅地建物取引士資格の合格発表以降は、問い合わせ窓口が混みあう傾向にある自治体もあります。余裕を持って申請できるように準備をしておくとよいでしょう
まとめ
宅建士として登録を受けるためには、登録申請時から遡って過去10年以内に2年以上の実務経験が必要です。実務経験がない場合は、実際に2年以上の実務経験を積むか、登録実務講習を修了し、修了試験に合格しなければなりません。
実務経験として認められるのは、不動産にまつわる専門的な業務です。具体的には、顧客に対する物件の間取りや周辺環境などの説明、不動産取引の契約書作成などが挙げられます。
宅建士試験に合格し、これから不動産会社で資格を活かそうと考えている方は、登録にあたって必要な実務経験があるかを確認しておきましょう。
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