教育訓練給付制度を活用して宅建は取れる? 制度概要やその他の不動産資格を紹介
不動産会社で勤務している方の中には、昇進やスキルアップといった目的で宅建士資格の取得を目指している方も多いのではないでしょうか。
しかし、独学で勉強する場合は、テキストを自身で揃える必要があることに加え、わからない箇所を教えてくれる人もおらず、学習を進めるうえで不安を感じる方も少なくありません。かといって通信教育や通学講座を利用するとなると、数万円~数十万円もの費用が発生します。
そこで検討したいのが、教育訓練給付制度です。本制度を利用することで、学習に要した費用の一部が国から支給され、自己負担を軽減することが可能です。
この記事では、教育訓練給付制度の概要と、宅建士資格への適用について解説します。宅建士資格の取得を目指そうとしている方の参考になるため、ぜひ最後までご覧ください。
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教育訓練給付制度とは
教育訓練給付制度とは、一定の条件を満たした人が厚生労働大臣が指定する講座を受講し修了した場合に、要した費用の一部がハローワークを通じて支給される仕組みです。
この制度は、スキルアップやキャリアチェンジを目指す方を自己負担の軽減という側面から支援することを目的としています。これからスキルを高めて勤務先で活躍しキャリアアップを図りたい方や、新しい仕事に挑戦したい方におすすめの制度です。
この教育訓練給付制度は、以下の3つの訓練で構成されています。
・専門実践教育訓練
・特定一般教育訓練
・一般教育訓練
それぞれについて、以下で解説していきます。
厚生労働省教育訓練給付制度リーフレット
(出典:厚生労働省 教育訓練給付制度)
専門実践教育訓練
専門実践教育訓練は、中長期的なキャリア形成に役立つ教育訓練が対象です。専門性が高く、受講期間が原則1年~3年程度のものになります。
この制度では、支払った受講費用のうち50%が給付され、年間上限額は40万円、最長3年間で合計120万円まで支給されます。さらに、講座を修了し資格を取得した翌日から1年以内に就職した場合、追加で20%が支給され、合計で受講費用の70%まで給付される仕組みです。
さらに、2024年10月1日以降に受講を開始した方については、資格取得や就職に加え、訓練修了後の賃金が受講開始前と比較して5%以上増加した場合、受講費用の10%(年間上限8万円)が追加で支給されます。
専門実践教育訓練の主な対象講座は以下のとおりです。
対象となる主な講座 |
・専門学校の課程 ・調理師 |
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特定一般教育訓練
特定一般教育訓練は、早期の再就職やキャリア形成に役立つ教育訓練が対象です。対象の講座はおおむね1年以内に資格やスキルが身につく講座となっています。
給付額は、受講費用の40%(最大20万円)で、自己負担を大幅に軽減することが可能です。さらに、2024年10月1日以降に受講を開始した方については、講座終了後に資格取得および就職を果たした場合、教育訓練経費の10%(年間上限5万円)が追加で支給されます。
一般教育訓練の主な対象講座は以下のとおりです。
対象となる主な講座 |
・ 介護職員初任者研修 |
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一般教育訓練
一般教育訓練は、雇用の安定や再就職の促進を図ることを目的とした訓練が該当します。就職やスキルアップに役立つ幅広い教育訓練プログラムが対象となっており、多くの方に活用されています。
支給額は、対象となる教育訓練の学費のうち20%で、上限は10万円です。ただし、学費が4,000円を超えない場合は支給の対象外となります。
一般教育訓練の主な対象講座は以下のとおりです。
対象となる主な講座 |
・Microsoft Office Specialist |
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厚生労働省教育訓練給付制度リーフレットより教育訓練給付の種類
(出典:厚生労働省 教育訓練給付制度)
宅建資格は一般教育訓練が対象
ここまで、教育訓練給付制度の概要と3つの訓練区分について解説してきました。この中で、宅建士(宅地建物取引士)資格の取得に利用できるのが一般教育訓練です。この制度を活用することで、宅建士資格取得にかかった費用の20%が支給され、経済的負担を軽減することができます。
たとえば、宅建士資格の通学講座を利用し、受講費が20万円かかった場合は、20%にあたる4万円が給付されます。この給付制度を活用することで資格取得への経済的ハードルが下がり、より多くの方が挑戦しやすくなるといえるでしょう。
項目 |
一般教育訓練 |
---|---|
受講費 |
20万円 |
支給率 |
20% |
支給額 |
4万円 |
自己負担額 |
16万円 |
宅建士資格を取得できれば、不動産取引における重要事項説明といった独占業務を行うことが可能となります。不動産業界への転職にも大いに役立つため、キャリアアップを目指す方にとって魅力的な資格といえるでしょう。
≫ 宅建を取得するメリットとは? 試験の合格率や難易度も解説
一般教育訓練の受給条件
一般教育訓練給付金の支給を受けるためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
(1)現在雇用保険に加入している方
教育訓練を始める時点で、雇用保険に3年以上加入していること。
(2)過去に雇用保険に加入していた方
雇用保険の資格を失った日(離職した翌日)から教育訓練を始めるまでが1年以内で、かつ、雇用保険に3年以上加入していたこと。
なお、過去に一度も教育訓練給付金の給付を受けたことがない方であれば、雇用保険への加入期間が1年以上であれば支給対象になります。
また、教育訓練を始める前日までの3年以内に教育訓練給付金の給付を受けた履歴がある方は支給対象外となります。
さらに、受講する教育訓練が厚生労働大臣の指定する一般教育訓練の対象である必要があります。そのため、受講を検討している講座が給付金の対象となっているかどうかを、事前にハローワークや教育訓練給付制度の検索システムにて確認しておきましょう。
教育訓練給付金受給までの流れ。厚生労働省教育訓練給付制度リーフレット
(出典:厚生労働省 教育訓練給付制度)
一般教育訓練で取得できる不動産関係の資格
一般教育訓練では、宅建士のほかに、以下のような不動産関係の資格取得も対象となります。
・マンション管理士
・管理業務主任者
これらの資格も不動産業界において重要な役割を担えることの証であり、取得することで今後のスキルアップやキャリアアップにつながるでしょう。以下でそれぞれの資格の特徴を解説していきます。
マンション管理士
マンション管理士は、マンション管理における専門家であり、主にコンサルティング業務を行います。業務内容には、マンションの維持や管理に関する提案・指導、大規模改修工事の計画立案などが含まれます。
この資格は国家資格として位置づけられており、マンション管理士試験に合格し、登録を完了した者でなければ「マンション管理士」と名乗ることはできません。
マンション管理士の主な仕事内容 |
・マンション管理費 ・修繕積立金の管理 ・進行管理 |
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≫ マンション管理士の主な業務内容と独立する3つの強み
≫ マンション管理士の資格を取得するメリットとは? 勉強時間・試験スケジュールを解説
管理業務主任者
管理業務主任者とは、マンション管理業者が管理組合などに対して、管理委託契約に関する重要事項の説明や管理事務報告などを行う際に必要となる国家資格です。
この資格を取得することで、管理事務についてや建物・設備の維持・修繕についてなど、マンション管理を適切に行うための知識を持っていることを証明可能です。
また、管理業務主任者になると、以下の4つの独占業務を行えます。
・管理委託契約に関する重要事項説明
・重要事項説明書への記名・押印
・管理受託契約書への記名・押印
・管理組合に対しての管理事務報告
一般教育訓練は、宅建士のほかにもマンション管理士や管理業務主任者が対象となります
≫ 管理業務主任者とは? 資格の概要と4つの独占業務について解説
≫ 【マンション管理の資格】管理業務主任者の需要と現状について
通信教育と通学講座どちらがいい?
宅建士資格の取得を目指すために、通信教育と通学講座のどちらがよいかは、自身の学習スタイルなどによって異なります。それぞれの特徴を理解して、最適な方法を選びましょう。
・通信教育がおすすめの方
通信教育は、自分のペースで学習を進めたい方に適しています。特に、スキマ時間を活用して効率的に学びたい方には最適でしょう。また、通学講座に比べて費用が抑えられる場合が多く、経済的な負担が軽減されるのも魅力です。
たとえば、仕事や家事で忙しい方、まとまった時間を確保しにくい方には、通信教育が向いています。
・通学講座がおすすめの方
一方、経済的な余裕があり、学習のためのまとまった時間を確保できる方には通学講座がおすすめです。
通学講座では、講師による記述式問題の添削指導を受けられるほか、疑問点があればその場で講師に質問することが可能です。直接的な指導を受けることで理解が深まり、学習効率が高まることが期待できるでしょう。
ただし、通学講座は通信教育よりも費用が高くなる傾向にあります。
給付金は、教育訓練を受講・修了した場合に、修了後に支給されます。支給要件についても事前に確認しておくとよいでしょう
給付金制度を活用して賢く資格を取ろう!
教育訓練給付制度とは、一定の条件を満たした方が厚生労働大臣が指定する講座を受講し修了することで、要した費用の一部がハローワークを通じて支給される仕組みで、以下の3つの訓練で構成されています。
・専門実践教育訓練
・特定一般教育訓練
・一般教育訓練
このうち、宅建士資格の取得を目指す場合は一般教育訓練に該当します。
一般教育訓練を活用することで、資格取得に要した費用の20%が国から支給されます。これから宅建士を目指す方は、この制度を賢く活用して資格取得に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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