国交省&環境省が実施する「みらいエコ住宅2026事業」は賃貸住宅でも利用可能

LIFULL HOME’S総研の中山です。
首都圏など各市街地では円安の影響で消費者物価の上昇が続き、物件管理の人件費の高騰も手伝って賃料を改定し値上げするケースが増えています。この“貸し手市場”に変化したのはコロナ明けの2023年以降ですが、仮に賃料がこのまま上昇し続けると、賃貸ユーザーはより安価な物件・エリアに転居することが確実ですから(実際に郊外化傾向は強まっています)、賃料の高額化によって借り手不在といった事態に陥らないようにするためにも、賃貸物件としての“品質”を維持・向上させることが、長期的な賃貸経営にとって必要です。
具体的に“品質”とは、賃貸住宅の断熱性や省エネ性など住宅性能の向上、耐震性や防音など賃貸住宅としての安心や快適の追求といった、住宅としての基本性能を引き上げることを意味します。しかし、確かに賃貸住宅の“品質”を引き上げることは大きなコスト負担を伴いますから、将来を見越して必要だとは認識していてもなかなか踏み切れないものです。
国はご存知の通り2050年のカーボンニュートラル達成のために、新築住宅については2025年4月から省エネ性能の適合義務化を実施し、今後段階的に引き上げていく予定ですが、賃貸住宅を含む既存の多くの住宅については、建物の部位単位で改修する際に省エネ適合を求めるレベルで、特に強く住宅性能の向上を構想する姿勢を示しているとは言えません。ただし、2023年の土地統計調査で約6,500万戸に達する日本の住宅(2026年末までの新設着工戸数予測と合わせると約6,720万戸)のうち99%は既存住宅で、しかもその多くが現在の省エネ基準すら満たしていませんから、これら既存住宅の省エネ・断熱性の向上が急務であり、それがカーボンニュートラル達成に大きく貢献するであろうことは疑問の余地がありません。国もそのことは心得ており、既存住宅の省エネ性能向上に関する補助金制度「みらいエコ住宅2026事業」を国交省と環境省が合同で実施しているのですが、この補助金事業は、賃貸住宅の所有者も利用できるというのが今回のテーマです。
「みらいエコ住宅2026事業」の概要 補助金はどの程度活用できるのか
この補助金の総額は2,050億円と規模が大きいのですが、2025年は2,500億円規模でしたから450億円、18%減額されています。国の補助金制度はご多聞に漏れず徐々に縮小されるケースが多いので、補助金活用は早めに申請することをお勧めします。
この補助金は、賃貸住宅の新築とリフォーム工事も対象で、金額は住宅の性能に応じて異なります。賃貸住宅を新しく建てると(新築の賃貸住宅を購入しただけでは対象にならないことに注意)、GX志向型住宅では1戸につき110万円、長期優良住宅は75万円、ZEH水準住宅だと35万円(長期優良住宅とZEH水準住宅は要件を満たす戸数の50%が補助対象)がそれぞれ支給され、賃貸住宅のリフォーム(2016年12月31日以前に新築した物件が対象)を行う場合は、1物件について最大100万円が支給されます。省エネ性能を高めることで(省エネ部位ラベルも活用して)、賃貸ユーザーに選んでもらいやすくしたい&優良差別化したいと考える所有者にフィットした補助金です。
足元では、新築注文住宅の省エネ基準適合率は大手ハウスメーカーベースで既に90%超に達していますが、賃貸住宅では現行の断熱等級4&一次エネルギー消費量等級4という省エネ基準を満たしている物件は国交省と経産省の合同調査でも全体で20%程度と低い水準に留まっており、ZEH水準はさらに低い14%程度ですから、補助金の活用によって住宅性能を引き上げて欲しいというのが、国の方針です。
また、2025年4月から開始された省エネ性能の適合義務化基準も、上記の現行基準から2030年にはZEH水準に引き上げられることが既に決定しており、さらに、2027年以降はZEH水準が新たにGX ZEH水準へと改定されるため、賃貸住宅に求められる断熱性・省エネ性は直近4~5年で大きくハードルが上がっていきます。賃貸ユーザーもこの方針を受けて、住宅性能が高く夏の熱中症、冬のヒートショックや結露を防いで快適に過ごせる賃貸住宅を希望する人が増えており、こういった居住ニーズに応えることが、将来の安定的な賃貸住宅運営・運用に繋がっていくことを認識しておく必要があります。
ある試算では、新たに総戸数12戸のRC造GX ZEH水準の賃貸住宅を建設し、住宅金融支援機構の賃貸住宅建設融資「機構すまい・る賃貸ローン」を利用すると、約3,000万円のコスト(建設コストの10%程度)が削減できるとされていますから、運用利回りを押し上げる効果も期待できます。
なお、この「みらいエコ住宅2026事業」は、例年補正予算を主な財源として支給される制度ですから、その年の支給上限に達した時点で終了となる“早い者勝ち”の補助金です。毎年補正予算を組んで支給は継続していますが、徐々に予算規模が縮小される可能性を考慮すれば、早めに賃貸住宅の性能向上と賃料水準の維持・向上のためにも、補助金を積極活用することを検討していただきたいと思います。
補助金を活用して賃貸住宅の性能を引き上げることは、将来の生活環境および社会環境をより快適なものにすることに繋がります。地球温暖化防止という大命題のためにも、また熱中症で命を失うことがないようにするためにも、賃貸住宅の性能向上は必要不可欠です。
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