【独立開業】不動産屋の推移と廃業率、失敗しないためのポイントとは
不動産屋の独立開業を検討している方にとって、どれくらいの会社が廃業しているのかは、気がかりな要素の一つではないでしょうか。
一般的に不動産仲介を行う不動産屋は、在庫として土地や物件を仕入れる必要がなく、初期費用が抑えられるため、独立開業のハードルがそこまで高くない業種といわれています。
しかし、不動産屋が廃業するケースも一定数見られることも事実です。
独立開業を失敗に終わらせないためには、開業後の不動産屋の現状を知り、成功に向けてのポイントを押さえておくことが重要です。
本記事では、不動産屋の数の推移や廃業率などの現状と、独立開業に失敗しないためのポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.不動産屋の現状と推移
- 2.不動産屋の廃業率
- 3.不動産屋の独立開業に失敗しないためのポイント
- 3.1.①集客に力を入れる
- 3.2.②業界内外の人脈を形成する
- 3.3.③資金繰り計画書を作成する
- 4.まとめ
不動産屋の現状と推移
国土交通省が発表した『令和2年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果について』によると、宅地建物取引業(以下、宅建業)(※)を営む不動産屋の数は、7年連続で増加傾向にあります。
2020(令和2)年の年度末時点における不動産屋の数は、12万7,215件です。そのうち大臣免許が2,675件、知事免許が12万4,540件となっており、2014(平成26)年から毎年増加しています。
▼宅建業を営む不動産屋数の推移
画像引用元:国土交通省『令和2年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果について』
なお、宅建業免許の有効期限は5年間となっており、宅建業を継続するには、免許更新の申請が必要です。
国土交通省の『宅地建物取引業者数の推移(免許種類別・組織別/過去20年間)』において、宅建業に関する免許処理件数は、2020年度の新規免許が6,357件、免許更新が1万3,050件となっています。新しく宅地建物取引業を開業した不動産屋の割合は、全体の約5%になります。
※宅地建物取引業とは、土地・建物の売買や賃貸に関する代理・仲介業のこと。
(出典:国土交通省『令和2年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果について』『宅地建物取引業者数の推移(免許種類別・組織別/過去20年間)』)
不動産屋の廃業率
不動産屋の数が7年連続で増加傾向にある一方で、毎年約3,600〜5,000件は廃業に至っています。
▼廃業処理件数と新規免許件数
廃業処理 |
新規免許 |
|
---|---|---|
2011年 |
5,079 |
5,232 |
2012年 |
4,462 |
5,125 |
2013年 |
4,036 |
5,309 |
2014年 |
3,824 |
5,421 |
2015年 |
3,956 |
5,580 |
2016年 |
4,009 |
5,917 |
2017年 |
3,899 |
6,003 |
2018年 |
3,681 |
6,037 |
2019年 |
3,750 |
6,029 |
2020年 |
3,655 |
6,357 |
国土交通省『宅地建物取引業者数の推移 (免許種類別・組織別/過去20年間)』を基に作成
国土交通省『宅地建物取引業者数の推移(免許種類別・組織別/過去20年間)』によると、2020年度における宅建業免許の廃業処理の件数は3,655件でした。
2020年度の宅建業免許数が12万7,215件だったことを踏まえると、約3%(※)の不動産屋が廃業していることになります。
2020年においては、不動産屋100件に対しておよそ5件が新規開業する一方で、3件が廃業していく状況であったと考えられます。
これらの数字は必ずしも新規開業した不動産屋の廃業数ではありませんが、不動産屋の独立開業にあたっては、毎年一定数の廃業があることを念頭に置いたうえで、開業後の経営安定化に向けた対策を行うことが重要です。
※計算式:3,655(廃業処理件数)÷127,215(宅建業免許数)×100=2.8730…(小数点第一四捨五入)
(出典:国土交通省『宅地建物取引業者数の推移(免許種類別・組織別/過去20年間)』)
不動産屋の独立開業に失敗しないためのポイント
開業後に安定した経営を行うためには、集客や仕事の獲得経路を確保するとともに、計画的な資金繰りなどが必要です。
ここでは、独立開業に失敗しないための3つのポイントを紹介します。
①集客に力を入れる
不動産屋の事業を継続していくには、安定した集客を確保しながら、経営を軌道に乗せる必要があります。
独立開業すると、知名度や実績のないところからのスタートとなるため、まずは集客を促す取組みが欠かせません。
従来の集客手法では、チラシや雑誌といった紙媒体の広告が用いられていましたが、近年では効率的な集客を図れるインターネットの活用が主流となっています。
インターネットを活用した集客手法には、以下が挙げられます。
▼インターネットを活用した集客手法
- 不動産ポータルサイトへの広告出稿
- レインズへの登録
- 自社ホームページの作成
- SNS運用
- Web広告の出稿
不動産屋の集客に有効なデジタルマーケティングについては、こちらの記事で解説しています。
②業界内外の人脈を形成する
自社の認知度向上や顧客の紹介を得るためには、競合他社・他分野の人脈を形成することも重要です。
開業直後は、これまで所属していた不動産屋のネームバリューを利用できません。そのため、順調に仕事を獲得できず、経営が思うように進まなくなる可能性があります。
その場合、不動産業界内外に幅広い人脈を形成しておくことで、紹介を通じて仕事を獲得しやすくなります。独立開業のための人脈形成については、こちらの記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。
③資金繰り計画書を作成する
独立開業後、経営に必要な資金や収支の流れを把握するために、資金繰り計画書を作成します。
独立開業で起こりやすい失敗例として、十分な資金計画を行わずに開業したことで、資金不足に陥ってしまうケースが挙げられます。
そのような事態を避けるためには、開業時の初期費用だけでなく、開業後のランニングコストを把握したうえで、十分な資金を確保しておくことが重要です。主なランニングコストとしては、融資返済や毎月の運転資金、広告費、従業員への給与などが挙げられます。
経営が軌道に乗るまで時間がかかる可能性があることを考慮して、余裕を持った資金計画を立てることも大切なポイントです。
まとめ
この記事では、不動産屋の独立開業について、以下の項目で解説しました。
- 不動産屋の現状と推移
- 不動産屋の廃業率
- 独立開業に失敗しないためのポイント
近年、不動産屋の数は増加傾向にありますが、そのうち新たに免許登録を受けた不動産屋の割合は、2020年度では全体の約5%でした。
一方、必ずしも新規開業した不動産屋の廃業数ではありませんが、毎年約3,600~5,000件の不動産屋が廃業しており、廃業率は2020年度で約3%となっています。
廃業に至るには、資金不足や仕事が得られないといった理由も考えられます。不動産屋の独立開業を目指している方は、廃業のリスクを念頭に置きながら、開業後に事業継続ができるように、経営や収支について十分な施策を講じましょう。
事前に集客方法を確立させるとともに、人脈形成を図ったり、経営が軌道に乗るまでの資金計画を立てたりすることが重要です。
不動産屋の独立開業で失敗しやすいケースと、成功するためのポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
≫ 不動産会社の独立開業で失敗するケースと成功するためのポイント