賃貸物件の宅配ボックス設置支援策。補助金を活用して空室対策を
賃貸物件のオーナーに提案する空室対策について悩む担当者は多いと思います。そのような場合に検討をおすすめしたいのが、宅配ボックスの設置です。宅配ボックスがあれば不在時でも荷物を受け取れるため、入居者の需要が急速に高まっています。加えて現在、国による宅配ボックス設置に関する支援策が実施されていることから、補助金を活用して工事ができます。
この記事では、宅配ボックス設置の際に受けられる補助金や、オーナーへの提案時に使える宅配ボックスの普及率、設置することで家賃がどれくらい変わるのかといった情報を紹介します。
目次[非表示]
- 1.需要の高まる宅配ボックスとは?
- 1.1.不在でも荷物が配達される
- 1.2.安全性が高い
- 2.賃貸物件に使える補助金の額と条件
- 2.1.子育てエコホーム支援事業(2024年12月31日までに着工)
- 2.2.子育て支援型共同住宅推進事業(令和5年度事業分は、2024年2月29日まで)
- 2.2.1.●対象になる共同住宅
- 2.2.2.●補助額
- 2.2.3.●対象期間
- 3.宅配ボックス設置に関する支援策等一覧
- 4.宅配ボックスの普及状況とニーズ
- 5.物流2024年問題により需要急増
- 6.宅配ボックス設置の支援策についてのまとめ
需要の高まる宅配ボックスとは?
宅配ボックスとは、宅配便の荷物を入れるロッカー型設備です。基本的な造りの宅配ボックスだと、1台の宅配ボックスに複数のボックスが配置され、各戸に専用のボックスが割り当てられます。宅配事業者は宛先のボックスに荷物を入れ、扉を閉めてロックをかけます。このロックは該当の入居者しか解除できない仕組みです。入居者は帰宅した際などに、ボックスを開けて荷物を受け取ります。
不在でも荷物が配達される
宅配ボックスがあれば不在時でも荷物が配達され、面倒な再配達の手配をせずに済みます。また在宅していても、入浴中や子どもの面倒を見ている最中などで、宅配業者に対応できなくても荷物を受け取れます。
安全性が高い
宅配ボックスは安全性の面でもメリットがある設備です。ボックスを介して荷物を受け取れるため、宅配業者との対面でのやり取りが不要になり、感染対策になるためです。また、宅配業者を装った強盗被害などに遭うリスクも回避しやすくなるでしょう。
また近頃増えている、宅配便の荷物を玄関先などに置いておく「置き配」を利用した場合も、宅配ボックスに入れてもらえれば盗難防止につながります。
賃貸物件に使える補助金の額と条件
ここでは、賃貸物件への宅配ボックス設置に利用できる国の補助金を紹介します。宅配ボックスの設置をオーナーに提案する際に伝えられるよう、把握しておくことをおすすめします。
子育てエコホーム支援事業(2024年12月31日までに着工)
子育てエコホーム支援事業では、建物の省エネ性能を高めたり、生活の利便性を向上させたりする工事に対し補助金を支給しています。省エネ性能に関する必須工事と同時に行うという条件を満たせば、宅配ボックス設置などの各種工事も補助金の対象となります。
●必須工事
①開口部の断熱改修
②外壁、屋根・天井又は床の断熱改修
③エコ住宅設備の設置
※①〜③のいずれかを実施
●補助額
1ボックス当たり1万1,000円、原則1戸当たり20万円※が上限です。
1つの宅配ボックスに4つのボックスがあれば4万4,000円が補助されます。
※その他の補助金対象リフォーム工事も含む合計額になります。
●対象期間
工事請負契約日の定めはありませんが、着工までに工事請負契約を結ぶ必要があります。
着工日は2023年11月2日から交付申請まで(遅くとも2024年12月31日)です。ただし予算の上限に達すると終了になります。
そのほかの詳細については運営機関HPをご確認ください。
子育て支援型共同住宅推進事業(令和5年度事業分は、2024年2月29日まで)
子育て支援型共同住宅推進事業では、共同住宅への宅配ボックス設置に対する支援を行っています。物件における子育て世帯の入居率によって補助額が増減します。
●対象になる共同住宅
子育て世帯(小学生以下の子どもを養育している世帯)の入居率が3割以上の共同住宅
●補助額
1棟当たり最大50万円
設置費用の1/3まで
子育て世帯の入居率によって増減
例:150万円の宅配ボックスを子育て世帯の入居率5割の共同住宅に設置した場合
150万円 × 子育て世帯の入居率である5割 × 補助率1/3 = 25万円
●対象期間
令和5年度事業分は令和6年1月19日から令和6年2月29日までです。ただし予算の上限に達すると終了になります。
その他の詳細については運営機関に直接ご確認ください。
宅配ボックス設置に関する支援策等一覧
国土交通省では、宅配ボックス設置に利用できるその他の支援策を一覧で紹介しています。それぞれの条件を満たせば、補助金などを受けて工事を行うことができます。一度目を通し、対象となりそうな支援策があれば問合せをしてみてはいかがでしょうか。
宅配ボックスの普及状況とニーズ
宅配ボックスの普及状況や、実際にどれくらいのニーズがあるのか、LIFULL HOME'Sでは2023年に市況調査を行いました。ここでは、その調査結果の中で特に注目したい3つのトピックを紹介します。
首都圏の賃貸では4割まで普及
首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の賃貸マンション・アパートにおける宅配ボックスの普及率は41.1%に達しています(2023年9月時点)。これは直近1年間で最も高い割合です。
普及が進んだ要因としては、宅配ボックスのメリットが広く認知されたこと、コロナ禍でネットショッピングの利用が活発になったことなどが考えられます。コロナ禍に伴うさまざまな規制はすでに緩和されましたが、その利便性の高さから、宅配ボックスの普及は今後も進むと思われます。
6割の入居者が宅配ボックスありの物件を探している
LIFULL HOME'Sにおける物件探しの検索で、「宅配ボックスあり」を必須条件とした利用者の割合は58.9%と、およそ6割にのぼっています。
つまり宅配ボックスを備えていない物件は、6割もの利用者の検索結果に表示されないということになります。これは入居者を獲得する機会を、大きく失っている状態だと言ってよいでしょう。
宅配ボックスありは1万3,000円も家賃が高額
首都圏における“宅配ボックスなし”物件の家賃相場は7万円です。これに対し“宅配ボックスあり”物件の家賃相場は8万3,000円と、月額1万3,000円も高額に設定されています。
年間にすると15万6,000円、4部屋ある物件なら6万24,000円、10部屋あれば1,5万60,000円もの家賃収入が増える計算です。宅配ボックスを設置すれば、家賃収入を大きく増やせる可能性があることになります。
(出典:「物流2024年問題」対策の“置き配ポイント”で注目集まる『宅配ボックスあり』物件の市況をLIFULL HOME'Sが調査)
物流2024年問題により需要急増
宅配ボックスの需要は、物流2024年問題によってさらに増えるとする声もあります。物流2024年問題とは、2024年4月以降、トラックドライバーに対して時間外労働の上限規制が適用されることに伴い、輸送力の大幅な不足が懸念されている問題です。
このままでは、2024年に14%、2030年には34%もの輸送力が不足すると国は予測しています。宅配便においては、今までのような細かな配達時間指定ができなくなる、再配達に時間がかかる、といった不便が生じる可能性があるでしょう。
宅配ボックスがあれば、こうした不便を解消することが可能です。物流の変化の面からも、入居者の宅配ボックスに対する需要はさらに高まると考えられます。
宅配ボックス設置の支援策についてのまとめ
宅配ボックスは、不在時でも宅配便の荷物を配達してもらえる便利さから、近年急速に普及している設備です。共同住宅における入居者の需要は高く、さらに物流2024年問題が加わることで、宅配ボックスを備えた物件に一層の人気が集まる可能性があります。
宅配ボックスに対する国の補助金の対象期間内であれば、条件を満たすことで出費を抑えて設置することが可能です。効果的な空室対策として、物件のオーナーに提案してみてはいかがでしょうか。
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